表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
289/351

287

287


 ミノタウロスの話はメンバーには笑いになっていた。

 

「最後には王都の城は、こっぱみじんさ。我は生きているのが不思議なくらいだ」


「ええっ、城ごと破壊したの?」


「何もなかったな。崩れたいうよりも、無くなっていた。国王も呆れていた。本来なら我に勝って喜ぶところを、複雑な顔をしていた」


「お前らしいな」


 リリスは冷の戦いぶりを冷かした。

 過去にも同じ冷の活躍はあったが、誰も上級魔人に勝てるとは思いもしなかった。


「国王には謝ったから!」


「謝ったから済む問題じゃないだろ!」


「大事件と言えます。魔族、特に上級魔人を倒したとなると、国中に冷の噂は広まるでしょう。今でも有名なのに今以上に有名人となる」


「まいったな」


(可愛い女の子にもモテるよな)


「お前、可愛い女の子にモテるとか考えただろ」


「ええっ、考えてるわけないだろ。俺は上級魔人が他にもいるから、その心配をしているところさ。変な言いがかりはよせリリス」


(なぜ、わかったのだろうな……)


「本当かよ、怪しいな」


「それよりいま、冷が言ったのは重要でして、他の上級魔人に影響を与えることが懸念される」


「ミノタウロス、どうなの、上級魔人ならわかる?」


「影響するに決まってる。ただ他の上級魔人の現在地は知らない。どこにいるのか、何をしているのかもな」


「そうか、たとえ上級魔人同士でもお互いに現在地は知らないのね」


「仲が悪いとか?」


「悪いわけではないが、自己中なのだろう。干渉されるのが嫌いだし、行動を指示されることはあり得ないから。ケンカになる」


「町の復興に力を尽くしてる間は、大人しくはしていて欲しい」


「奴らの考えてるのはわからない。まぁわかっているのは、確実に人族を滅ぼしに来る。過去にも人族から異常な強さを持つ者が現れた。勇者と呼ばれている。だから上級魔人も下手に動けなかった。長い間、静かにしてきた1番の理由はそこだ。人族にはさらに魔王を封印するスキルを持つとも言われてる。事実、魔王は封印されてるのがその証だ。そこで冷が現れた。上級魔人どもは情報を収集している最中だろう。さらに厄介なのは、アリエル、ミーコ、リリスの3人。ギガースを倒せる力を持つまでに成長した。これも懸念しているはず。長い間静かにしていた次代は終わり、新しい次代に入ったのだ。もう上級魔人が静かにしている必要もない。むしろ冷を潰しにくる可能性もあり得る」


 ミノタウロスの話を聞いたメンバーは真実味を感じていた。

 部屋にいる者は新たな魔人との戦いになる日が来ると告られたと同じ。

 黙ってしまう者も少なくなかった。

 しかし冷は嬉しくなる。

 ミノタウロスレベルがまだいることに、逆に楽しみと感じた。


(ミノタウロス級が他にもいる……どんなのか楽しみもあるな)


 話は上級魔人的な怖い話から、明るい復興をどうしていくかとなり、そこで宿屋にネイルとるすばしていた魔商人ヤリッチが切り出してきて、


「ひとつ提案があります」


「ヤリッチ、言ってごらんよ」


「はい、復興にちなんで大切なのは金でしょう。家を作るのにも金、橋を作るのにも、道を作るのにも、作るたびに金はかかります。これはこの世界の常識。その金はどこから出るか決まってるのですかね?」


「金はある。俺が商業ギルドに預けてある金が」


 商業ギルドには魔人を倒した際に国王から支払われた多額の金は用意されてある。

 その資金を使う予定とした。


(いくらあるか、もうわからないけど)


「なるほど、冷くらいの人物なら国王から資金を得ていても不思議はないですね」


「全額使ってしまおうと思う」


「うちらも資金はあるもん〜」


 ルビカも話に入ってきて資金があると。


「そう言えばルテリ達も資金援助してくれるとか言ってたってけ」


「シャーロイ家の持つ資産の一部を使う準備をしておく。少なからず役に立てるはずだ」


「ありがたい、感謝する」


(さすがは貴族だな、俺には知り得ない世界)


「資金は集まるとして、次に復興の手段です。ぜひ提案したいのは一度話に聞いた件で、ゴーレム達に道場とやらを建設させたと聞きました。その技術をフル活用すれば、復興の手助けになれるのではと思いまして」


「うん、ゴーレム、ギャン、ボーガ、シールドは建設する技術を持っていたのだ。俺もびっくりした。あっという間に道場が完成しちゃったからな。あれだけの技術なら、使わない手はない!」


 ヤリッチに提案されて思わず納得する。


(よし、ゴーレム達には率先して復興に協力してもらおう)


 その話を聞き、本人のゴーレムは自信を持っていた。


「手助けどころか、町ごと作ってやってもいいが。そうだよなボーガ?」


「作りましょう。ただし建築に使う材料は必要です。材木は森から取るとします。壁や家屋などの材料は土で作るのなら、ゴーレム様が土属性スキルで作るでしょう」


「ボーガも頼むぞ!」


「お任せを」


「スピアで材木をザックザック切ってきてやろう!!!」


「頼むぞ、ギャン!」


 ギャンもヤル気を出したようである。


(こういう時にギャンは心強い)


「ゴーレムに建築の技術があったのは知らないが?」


 ミノタウロスはゴーレムのスキルについて悔しく知らなかった。


「私が土属性なのは知ってるだろ。それを使い応用すると、建築物を作れるのさ。ミノタウロスは知らないかもだが、私に忠誠する魔物も森にはいる。魔物にもぜひ手伝ってもらうことにする。話をしていても難しいだろうから、肉眼でみ見るのが早い。作業を開始したら見学すればいい。きっと驚くだろう」


「魔人が人族の町づくりか。面白い話だ」


 ミノタウロスは軽く笑ってみせた。

 まだメンバー入りしたばかりのミノタウロス。

 魔人にも人族を思う気持ちがあるとミノタウロスはまだ半分信じられないと感じていた。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ