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 突然のミノタウロスの紹介は人々を不安にさせてしまう。

 あろうことか、最悪の場面もあり得るのは、怒ってしまい、罵声がではじめたからである。

 せっかくギガースの話を上手く乗り切れ、歓声が起きていたから、ユズハは不安になる。


「冷さん、不味いです。皆さんが怖がりました。やはり上級魔人は刺激が強すぎたのでしょう」


「ミノタウロスをこのまま放置するわけにはいかないです。彼女もメンバー入りさせたいので」


「しかし…………」


 ユズハは困ってしまい返事をつまらせる。

 それだけ上級魔人という名に怯えてきた証拠で、騒ぎは大きくなっていた。

 ミノタウロスは慌てることはなかった。


「我は、牛頭魔族の頭であり、上級魔人ミノタウロスだ。何をうろたえておる。町の半分以上、いや7割がたは破壊されて倒壊したのは知ってる。それでギガースを攻める気持ちもわかる。だがそんな気持ちでは上級魔人及び魔王には勝てないと言っておく。逆だ、逆になれ、町は失ったのであれば、逆にチャンスであろう。小さな町のピルトからもっと大きな町ピルトになれるチャンス。1から作り直していけばいい。これまでのピルトよりも格段に大きな設計を作り、大きな城も作ればいいだろ!」


「……………………何を言ってるのだ……」


 ミノタウロスはピルトを作り直すチャンスだと問いかけた。

 しかし人々はイマイチわかりかねた。

 それはピルトは小さな田舎町。

 昔も今も変わらない小さな規模。

 それを大きくしようなど誰も考えつかないし、あまり意味もなく感じる。

 これくらいの規模の町がいいと。

 だからミノタウロスの考えについていけなかった。


「ふふ、驚くのは無理もない。田舎町に住んでいれば、変化するのを恐れるのはわかる。しかし考えを変えてみろ、ピルトはもう無いのだから、過去に囚われる必要もない。むしろ未来に向かっていけばいいだろ。初めから世界一番の大きな町にする設計を描いていき、作り出せるだろう。つまは、この国、スタンダード国の王都を超える町に作り直す。その気持ちがあるなら我はミノタウロスは、力を貸すぞ。多少なりとも力はあるし、石を砕いたり、鉄を曲げたり、は十分にしてあげられる。どうだ、この際だから、世界最強の町を作るというのは!!!!!」


 ミノタウロスの発見は空虚な心に響いたのだった。

 希望がなくぼう然としていたからで、夢がなかった。

 そこに世界最強の町にピルトをすると発見されて、テンションが高まった者は少なくなかった。


「…………本当に出来るのか、俺達に……」


「俺達のピルトが世界有数の町になるなんて……考えたこともないが……」


 口々にささやき出すと、しだいに話声は大きくなっていき、町の発展に期待する声えと変わっていく。

 希望を持てないでいた人は、ミノタウロスのひと声で気持ちは変化した者も少なくなかった。

 やがてミノタウロスへの恐怖心は消えていき、代わりに町の発展に貢献するなら町に残って欲しいとなっていった。

 この反応の変化に驚いたのはルクエであった。


「こ、こ、これは意外な反応……。しかしこんな何の取り柄もない小さな町を巨大な町に発展させることが可能なので、ございますか?」


「させるのが我の、魔族がここに住める条件としたら、人々も納得してくれるだろうと思った。しかし我の勝手な発想だ。誰も相談なしに言ってしまっただけに、良かったのかはわからないが……」


 ルクエの質問に答えるミノタウロス。

 彼女なりの考えで言ったのであるが、冷も誰もそんな構想は聞いてない。

 聞かされた冷は、怒るのかと思いきや逆であった。

 逆に面白いとなる。


(世界最強の町にか……面白そうだな!)


「とても面白いよミノタウロス。ピルトの町を田舎町から世界一の大きな町に発展させる考えは。俺もそこまでは考えてなかった。でも破壊されて大半が廃墟となった今は、町の設計段階から作り直せるチャンスでもある。そうなると、元に戻すのではなく、いちから全て全く新しい町にも出来るてことだ。それなら世界でも有数の町に発展も可能だ。凄い発想だよミノタウロス、キミはとても良い事を言ったさ。ぜひキミはピルトの残りその考えを実行させよう。いや、させるべきだな!」


「我が残るべきか……残れる資格があるのか我は……」


 ミノタウロスがまだ半信半疑であった時に、広場から歓声が上がる。

 それは意外にもミノタウロスを支援する声であった。


「残るべきだミノタウロス!」


「残って町に貢献しろ!」


「このまま追放なんてさせない、苦労させてやれ!」


 ミノタウロスに残り労働させて、町に寄与しろと言う物。

 普通ならムカつく言い方であろう。

 誰かに労働させろと無理に言うのだから。

 でもミノタウロスには違った。

 町に残ってもいい、その代わり苦労すらならなと聞こえたから。

 町の人も同じ考えであった。

 住む条件を献身的な労働としたのだった。

 その反応をみてミノタウロスは不思議な気持ちになる。

 今まで経験したことない気持ちに。

 嬉しいのかわからない。

 受け入れてもらえたからか。

 人族にも魔族と通じれる何かがあるのかと。

 

「わかった、我は約束する。この町がいつか世界に轟く町になる為に、労働する!」


 最初の厳しい反応とは違い、期待する声が返った。

 ユズハも真逆の反応に驚いた。


「まさか広場の人々がミノタウロスさんを受け入れてしまうなんて、衝撃です」


「我もだ」


「しかしこう決まったら、もう住むしかありませんね。そして人々の目にとまるような貢献をするしかないですね」


「そのようだ。しかし問題がある…………」


「なんですか問題とは?」


「我は労働をしたことがない!」


 上級魔人であるミノタウロスは働いた経験などなかった。

 生まれた時から類まれな戦闘能力に、エリート街道を走ってきたからである。

 この発言にユズハはがっくりとした。


「はぁ………、それは仕方ないでしょう、なにしろ上級魔人さんですから、働いた経験がないのは仕方ないです」


「あははははは!」


 その場にいた冷、アリエル、リリス達、全員が爆笑する。

 ガーゴイルも笑いながらたたえる。


「働いた経験ないのは当然だミノタウロス、未経験者は歓迎だよ町は!」


「なんだか我はバカにされてる気がするが……リョウシンよ、お前は働いた経験あるのか?」


「ありませんっす。だからミノタウロス様と一緒に未経験からのスタートっす!」


「あははははは!」


 またも笑いが起きた。

 冷は未経験でもいいと思う。

 なぜなら冷もこの世界に来て初めてづくしなのだから。

 会話すらろくに出来なかったし、外に出歩くこともほとんどなかった。

 それがいつからか、普通よりは下手でも話せるようになり、人と接するのも出来るようになった。

 だからミノタウロスの気持ちはわかる気がした。


(俺も何もかも未経験だよな)


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