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 ルテリの言い分は、ギガースのメンバー入りは難しいというもの。

 冷にとっては障壁となった。


(いいアイデアはあるかな)


 考え込む冷にルクエがある条件を提案してみる。


「私に考えがある。今回の騒ぎは大変に迷惑をかけたと謝る。しかしギガースだけで謝るのは人々の怒りに油を注ぐだけである。そこで私達の出番。私達は貴族シャーロイ家の娘として人々もわかってます。だから避難の誘導もスムーズにいったの。信頼性があるのよ。シャーロイ家はここら辺一帯の南部地に強い権力を持っていたからで、人々にはシャーロイ家の名前を出せば、信用してくれるはずです。私が言いたいのは何なのかというと、ギガースに私達シャーロイ家が謝罪の場を作ってあげる。そこでギガースが謝罪をすればいい。その方が人々は落ち着いて謝罪を受け入れると思いますで、ございます」


「シャーロイ家の信用を利用するやり方ですね。面白い考えではないかな。良いと思うよれ冷氏!」


 ミーコは次女ルクエの考えに賛同した。


「なるほど、シャーロイ家なら人々が信用すると……どうかなギガース?」


 冷はギガース本人にシャーロイ家の力を借りるのを嫌がるか確かめる。


(貴族の力を魔族が素直に受けてくれるかな)


「……中級魔人である私が、シャーロイ家の貴族と一緒にいて、謝罪の場を作ると。ありがたいが、果たして人々がどう受け入れてくれるかわからない」


 そこでルテリが補足する。


「ギガースが自信がないのなら、こうしよう……。ギガースを許して欲しい、許してくれるならシャーロイ家の財産を使って復興することを約束すると発表する。それなら人々も納得するだろう。資材のない人も多いからだ」


 長女ルテリは財産を使うことを約束した。

 それはルテリの持つ財産を使うことを意味していて、冷は思ってもみなかった話に驚いた。


(まさかシャーロイ家の財産を使うとは)


「か、か、か、金!!!」


 財産と言う言葉にミーコが反応した。

 ミーコは金が大好きだった。


「おいミーコ、お前にやる金じゃない!」


 リリスに直ぐにツッコまれると、アリエルは笑っていた。

 

「……知りもしない魔人の私に自分の財産を使うなんて、なぜそこまでしてくれる?」


「新しい仲間なのだから、普通のことだろ。私もメンバーになってまだ日が浅いのだ。今回の件はエルフと付き合っていた我々に無関係ではない。むしろエルフとの関係をいつまでも続けてきたことにケジメをつける意味もある。エルフとはいったん関係を断つだろう。そのキッカケになったギガースに財産を使うのは、ある意味必然でもある」


「素晴らしい! 町の人々はシャーロイ家の名前を出せば皆さん喜びます。なにしろ町の土地もシャーロイ家の財産だと聞いてます。しかもこの町はシャーロイ家の貴族の力が関わっていたと伝えられてます。その歴史からとてもシャーロイ家の人は人気があります。ルテリさん達、三姉妹が一緒にいて、お願いするなら、人々の重い気持ちも変わると思います!!!」


 ユズハはルクエ、ルテリの考えに評価した。

 町の復興をだいいちに考えるユズハにはとても嬉しかった。

 中級魔人が町に住むことには抵抗はあるが、ガーゴイルとゴーレムの例をみても、決して魔族とぶつかり、トラブルになっていないのがいい前例であった。

 ギガースも上手く暮らせる可能性はある。

 

「ルテリが身を削ってまでギガース達を仲間にしてくれる行為に俺は感激する。頼むよルテリ!」


「感激するのは早い。人々の心はそう簡単に動かせるものではないのは知っている。ギガースは敵ではあった、内心はまだ微妙であるが、メンバー入りが決まってるなら、力を貸すのは当たり前だろう」


 三女のルビカも応援に、


「ギガースは敵だけど、メンバーに入れば強力だもん〜」


「ルビカも賛成してくれたようだし、ルテリ達にこの件の話はお願いする!」


「ギルドも応援に参加させていただきます。戦いではギルドに登録している冒険者の多数は不参加となりました。強制的に参加は無理ですから、相手が魔人となれば、特に中級魔人のギガースとなると、逃げますね。申し訳ないと思います。そこで協力させてもらいたい。後で町にある広場を貸し切りますから、そこをお使いください。ギルドが町民を全員集めてきます」


「ありがとうユズハさん。ギルドには感謝してます。あっ……、ひとついい忘れていました……」


 ユズハに感謝してそこで話は終わるかと思われた時に冷は重大な話をするのを忘れていて思い出した。


(ギガースよりも重大な話があったんだよな)


「なんでしょうか。重大な話て……」


 冷はギガースの後ろに控えるミノタウロスを前に出した。


「こちらはミノタウロスです。王都から連れてきた。俺が倒したんだけどね、忘れてましたけど、彼女も俺のパーティーメンバー入りです」


「はぁ………えっと……ミノタウロス!!!!!!!!」


 ユズハは頭に角が生えた彼女を見て失神寸前になっていた。

 周りにいたアリエルらもこうなると思っていたが。

 中級魔人のギガースですら怖く会話するのも避けたいくらいなのに、上級魔人ミノタウロスとなれば、もうギルドに手におえる者ではない。

 

「やはり、驚くよね」


「驚くとかの次元でなくて、上級魔人ですからね冷さん。ミノタウロスを見たのも初めてですし、まさか本物の上級魔人を見ると思ってなかったです……」


「我は本物だ。ここが冒険者ギルドか。ギガースに逃げる冒険者ばかりではダメだろう。もう少し増しな冒険者を育成しろ」


「は、は、は、はい、育成します!!」


 ミノタウロスに激励されてユズハは返事をした。

 上級魔人に言われるとはユズハも思ってもみなかった。

 店内にいた冒険者達は、ミノタウロスの名に絶句。

 静かに大人しくした。

 目が合えば命に関わるからであった。


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