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 王都を守る長く鉄壁の壁。

 ナニは壁を背に騎士団を集合させる。

 すでにミノタウロスには突破された後であるが、牛頭魔族軍団が控えており、食い止めるのが任務となった。

 騎士団員からの報告では、


「ナニさん、敵の情報はミノタウロスに属する牛頭魔族だとのこと。確認しただけでも牛頭魔族は軍勢、約1000匹を超えるものと思われます。騎士団は一万人はいますから、対抗できるはずです」


「油断は禁物だ。数でははかりきれない相手。しかも上級魔人に属する魔物、どんな強さなのか不明です。わかってることは、牛頭魔族を絶望に王都に入れない、わかったか!!」


「はい!!!」


 騎士団はナニの指令に返事で返した。

 そして剣を高くかかげて士気を高めた。

 一万もの軍団である騎士団が牛頭魔族に向かって行く。

 剣を振る者、槍を突き刺す者、馬にのり騎馬戦を得意とする者。

 攻める牛頭魔族は頭に角を生やし、体も体格が良い。

 人族の体格とは骨格が違い、ふたまわりは大きい。

 両者が一歩も引かずぶつかり合う。

 城にも届く程の大きな競り合いの音だった。

 王都の人々は聞いたことのないごう音で、不気味な音に聞こえた。

 団長であるナニが指令をする。


「歩兵の部隊、前に行け!」


 騎士団の選りすぐりの兵士が剣術で切り裂く。

 数百の剣が振られた音の金属音が響く。


「弓矢の部隊、矢を放て!」


 遠目からは弓矢の部隊が魔族の前線に矢を放った。

 それも数百本にも及ぶ数の矢である。

 まるで矢の雨が降るようであった。

 ナニは出だしは順調にいってると思えた。

 数で圧倒している分、余裕もあった。

 そこでナニは攻撃を緩めない。


「騎馬の部隊、突入せよ!!!」


 さらに騎馬の部隊も続いて突入していき、槍で牛頭魔族を刺していった。

 移動速度のある騎馬隊は牛頭魔族を速度で上回る。

 広大で1000匹を超える魔族には騎馬隊の機動力は騎士団にプラスとなる。

 

「魔術士団、魔族全体に攻撃魔法を放て!!!」


 騎士団の中には魔法スキル持ちも揃えてあった。

 敵全体を対象としたスキルで牛頭魔族に致命傷を負わせる狙いだ。

 一度にダメージを与えられるだけに効果は大きい。

 戦いの戦場は草原であった。

 草原が飛び散り、戦いが激しいのがナニにはわかった。

 ナニのこれまでの流れから、騎士団が押していると分析した。

 経験から言ってミノタウロスがいない魔族、数で上回る騎士団が有利であると。

 ナニが思った直後に目に映る光景に目を疑った。

 

「…………嘘でしょ…………」


「ナニ団長……敵の牛頭魔族の数を減らすどころか変わっていません!」


 ナニに報告する兵士は声が震えていた。


「減ってないとは……」


「まるでこちらの攻撃が効いてない。それどころか前線に攻撃に出た剣術部隊、騎馬隊、弓矢部隊、魔術部隊とも……信じられないですが……全滅したそうです……」


「バカなっ……」


 ナニは起こったことの意味が理解できないでいた。

 頭が真っ白になる。

 その後の報告では一万いた騎士団は半数の5000人が犠牲となったと。

 わずかの時間でこれだけの大量の犠牲者が出るとは考えもつかなかった。

 そこでナニがわかったのが、上級魔人のレベルの違いであった。

 上級魔人につかえる魔族もまた途方もなく強かった。

 騎士団が簡単に犠牲になる結果は受け入れられない。

 

「どうしますか、このまま騎士団を攻撃させますかナニさん?」


「……撤退だ、直ぐに撤退を伝えて!!!」


 兵士に伝えたのは撤退であった。

 苦渋の選択となるが、全滅は避けたかった。

 判断を間違えると全滅する。

 しかし撤退は牛頭魔族を王都に向かわせることに繋がる。

 王都の壁に激突しうち壊したら、王都は壊滅的なダメージを負ってしまう。

 どうしたら王都を守れるか。

 少ない犠牲で済む方法はないか。

 ナニの指令通りに騎士団に伝わると、いっせいに撤退していった。

 そこでナニは魔術部隊に指令を出す。


「魔術部隊、スロー魔法を敵全体に放て!!!」


 スロー魔法スキルは敵に対して敵の行動速度を遅くさせる効果を持つ。

 少しでも行動が遅れれば、王都に届く時間が稼げる。

 稼げるとはいえ、根本的な解決にはならないが、それしかこの状況を救う方法がなかった。

 牛頭魔族にスロー魔法が通じるかが問題である。

 

「牛頭魔族の行動速度が鈍りました。どうやら効果はあったようです!」


「よくやった!」


 ナニは少しだけホッとした。

 王都まで到着するにはまだ距離はある。

 その間に解決策を編み出すしかない。

 ナニの顔色は徐々に青ざめていった。

 自分の予想が甘かったせいで、犠牲者を出した。

 撤退した兵士も恐怖で青ざめていた。

 見たこともない程に強い軍団だと実感する。

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