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冷がいなくなり宿屋に戻るメンバー。
本当に良かったのかは議論が尽きない。
メンバー間の議論も起こった。
ガーゴイルもそのひとり。
ミノタウロスと聞き、不安は隠せなかった。
上級魔人が動いたとなると今までとは違う。
長い間静かにしていた上級魔人。
沈黙を破って動いたのなら、歴史が動く。
人族との間で魔族と決着をつける戦いになり得る。
どちらかが負ける戦いに。
お互いに見合ったまま、こう着状態が続いていたが、もう止められないと感じた。
もうひとりいるギガース。
ガーゴイルにはギガースの動きがわからない為に歩くのもままならない。
アリエルは冷が遂に上級魔人と出会うと実感した。
思えばこの世界に連れてきた時に、連れて来られたともいえるが、冷に言ってあったのは、上級魔人と中級魔人がいる。
特に上級魔人には会えば即死するレベルだと言ってあった。
中級魔人にま勝てると思ってなかったが、予想を覆して冷は異常に成長した。
中級魔人をも倒せるレベルまで。
しかし上級となるとアリエルは泣きたくなった。
悲しいほどに。
上級魔人のレベルは絶句する程に強い。
なるべく冷にも接触させたくないのが本音。
出来る限り遅くしたいと。
それがもうその日が来たから早すぎると感じた。
まだ冷とこの世界に来てわずかの時間しかたっていないのに。
あまりにも早い上級魔人の動きであった。
◇
ミノタウロスの動きに慌てる人々はさまよう者も多かった。
上級魔人の名を聞いたら終わりだと思い込んでいるからで、遂にこの日が来たかとなっていた。
ボーガが先頭を歩いてると前から顔を隠した背の高い2人組がやって来るのを発見した。
しかと微量ながら魔力を感じたので注意すると、
「皆さん、前方にいる2人組、魔力を感じた」
「男か……背がたかいが気のせいではないのボーガ?」
「う〜ん、そうならいいけど……」
ボーガが注意したが特に敵だと思われなく、無視して歩くと2人組が、
「こんにちは、アリエルさん」
「誰ですか、私のファンですか、握手ならしてあげますよ!」
アリエルは男のファンと思った。
「握手してください!」
「はいどうぞ!」
アリエルは握手をして微笑むとルビカから、
「私も握手してあげますもん〜」
「ルビカさんですね」
「ルビカ、こんな時に調子にのるでない」
「お姉、すまん〜」
ルビカとも握手した2人組から話しかけてきて、
「こんな時にとは……我らのことですかね?」
「我らの……とは……あなた達はファンじゃないの」
「さぁ〜ファンではないのは言っておく!!!!!」
「……誰だ!!!」
そこでギガースは変装していた服の一部を取る。
顔があらわになり現れたのは女性であった。
その顔を見てガーゴイルの目が広がる。
「ギガース!!! みんな下がって、これはギガースとサンマルです!!!」
「なんだって!」
ガーゴイルの注意に反応してメンバーは即座に後方に距離を取った。
ギガースが突然の出現に一気に緊張感がピークに達する。
ギガースは冷がいなくなりここがチャンスと判断して姿をみせたのであって、サンマルが隣にいた。
チルフは居なくて森にいるリョウシンと巨人魔族へ伝令しにいっていた。
リョウシンに会い突撃しろと。
ギガースはガーゴイルに挨拶する。
「ガーゴイルさん、久しぶりですこと。あなたを救いに来ました。冷に奴隷とされているのでしょう。あなたとゴーレムを冷から救い、残りは始末します」
「奴隷ですって……勘違いですわねギガース。私は冷の奴隷ではなくてよ」
ゴーレムも続けて、
「私も奴隷ではない。バカな扱いはやめろ。それにギガース、何を企んでいる……、ミノタウロスを呼んだのはあなたですか?」
「正解! ギガース様です!」
「うるさいサンマル黙ってろ、ギガースに訊いてるのだよ」
ゴーレムはサンマルを睨みつける。
「奴隷じゃないのに、なぜ冷といる。理由がわからない。なぜ人族とともに行動する。我ら魔族の天敵ではないか。そしてミノタウロスを呼んだとして悪い? どんな手を使っても冷を倒したいからよ!」
「上級魔人を動かしたらどうなるか……、いったい何が起こるか!」
ゴーレムは上級魔人には触れてはいけないとの考えであった。
「わかってるわ、中級魔人との間で話し合ったこともあるわね、上級魔人を動かしてはならない。決して刺激してはいけないと。しかしだ、状況は変わった。魔族にとって危機が訪れた。冷という厄災。あれは魔族を滅ぼしかねない存在だ。今のうちに葬り去るのが1番だ。ミノタウロスもその考えにのったのだよ」
「違う。冷はあなたの考えてる人族ではないの、説明するのは難しいけど」
「違うとは……。どう見ても魔人を奴隷にして楽しんでいる風にしか思えない。あれは魔族をいじめて楽しむ憎き者だ」
ギガースは冷を完全に魔族の敵と断定していた。
サンマルも同じであり、
「ギガース様の言うとおりです、冷こそ悪魔。冷は魔族を奴隷にする変態です。死を与えるしかないのです!」




