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 チルフがピルトの町を歩いてると見慣れない様式をした建物を発見した。

 探している建物とは最近になって建てられた道場のこと。

 チルフが発見したのは間違いなく道場であった。

 和風な建築物であるために、何なのか、何に使われているのか、想像がつかないでいた。


「あれが聴き込みの話の建物では?」


「うん、まるで見たこともない、しかもかなり大きいし、中は広いかもな。誰か居るか……」


「いいえ、誰も周りには居ません。しかし声が聞こえます……冷達でしょうか……」


 サンマルが道場の周囲を警戒しながら人の気配を探した。

 人の気配は外にはなく、中から声を聞いた。

 

「恐らく冷の可能性が高い。中は見れるか……」


「窓らしき物があります、ここから中をのぞけます」


 道場には窓がいくつも設置されていたのは、熱気で熱くなるし、空気の換気の意味もあり、設計段階から組み込んでいたのをゴーレムが正確に作った。

 ゴーレムは何の意味かは知らずに作った。

 窓に近づきそっと気づかれないように気配、特に魔力を消してのぞいた。

 中は完全に空洞になっており、見るまでは部屋が複数あるとばかり考えていたので、だだっ広い空間に思わずチルフが声を上げてしまい、


「なんだこれっ!」


「しっ!! チルフ……声がデカいよ……静かに……」


「……」


 サンマルに叱られて黙るチルフ。

 一瞬、道場に居たルビカが窓に目をやるが、何もなくまた訓練に意識を集中させた。

 一瞬速くチルフは身を隠したのが幸いした。

 発見されていたら変装した作戦は失敗に終わる。


「ギガース様、奴らは中の広場で戦ってました。我らとの仮想の戦いをしていたのでしょうか」


「……恐らく巨人魔族との戦いに備えていたのだろう。その為に巨大な施設を作ったのだ。誰にも見えないように壁で覆い隠して」


「この建物ならば秘密に出来ますからね、だけどもう知っています私達は。どうしますか、いつ行動するのかを?」


 チルフがギガースに求めると、サンマルが思いついたように言う。


「ギガース様、私に考えがあるのですが……」


「考えとは……言ってみな」


 サンマルは自分の考えを話し出す。


「聞き込みした通り、奴らは全員一緒に行動してます。こうなると3人では分が悪いです。冷を引き離すのが1番の得策となります。冷を王都に送ってしまいましょう」


「簡単には出来ないだろう」


 ギガースにも難しく思えた。

 しかし冷がいなければ、有利な展開となるのは間違いない。


「冷に情報をもたらせるのです、突然に王都に魔族が襲ってきたと。ミノタウロスが襲ってきた、王都は制圧されたとね」


「……慌てて冷は王都に向かうと…………」


「はい、冷は行くでしょう。エルフを助ける為にわざわざエルフの国にまで戦いに来る程です。単純な考えしかない、単細胞です。ミノタウロスには悪いが、彼女が冷を始末してくれればいい。ここは我らとリョウシン、巨人族で制圧する」


 冷さえいなければ、勝てるとした内容であった。

 ギガースはサンマルの話に深く頷く。

 冷の強さをわかっているギガースは、冷がミノタウロスに負けるのを思い描くと笑いが起こった。


「あははははは、ミノタウロスに任せてしまおうか!」


「ギガース様、声が大きいです!!!」


「すまん……」


 サンマルに注意されるギガースにチルフは笑うしかない。


「あははははは!」


「チルフ……静かに……」


「わかっている……その話なら冷に噂を伝えればいいよね。王都にミノタウロスが来たと?」


「噂話か……。町の人に噂を吹き込むとしよう。バカな冷は直ぐに行ってしまうだろう」


 ギガース達は直ぐに実行した。

 実際にミノタウロスは王都を襲う計画なので嘘ではなかった。

 しかしまだこの時点ではミノタウロスは王都付近にはいなかった。

 ギガースの様子をみて、王都に近づく用意であった。

 王都は騎士団が広い範囲で常に警戒しており、警備していた。

 ミノタウロスが近づけば、騎士団の視界の中に入ってしまう。

 ピルトの町にいる人々にサンマルとチルフは王都にミノタウロスが来たと吹き込む。

 王都が危ない。

 王都は制圧された。

 国王は拉致されたと。

 噂はあっという間に広まる。

 この町も危ないとなっていた。

 ギガース達の思惑に近い形ですすんでいったので、遠目に冷達を監視することにした。


「建物から出てくるのを確認して、噂を聞いたらどうなるかが楽しみだ」


「どうやら出てきました。メンバーも一緒のようです」


「ギガース様、ミノタウロスが知ったら怒るのでは?」


 ミノタウロスには何も相談せずにギガースの判断でしたのでサンマルが心配する。

 ミノタウロスはいっても上級魔人であり、逆らったら危険が及ぶと考えてのこと。

 ギガースはサンマルとは逆に、心配はない。


「ミノタウロスは……あれは強い。サンマルとチルフは知らないだろうが、あの強さは異常だよ。冷など遠く及ばない。だから彼女に任せて、冷を殺してしまおうてわけだ」


「ギガース様が恐れるミノタウロス……あまり会いたくないです」


「上級魔人は本気で動き出す、ミノタウロスだけでなく、全上級魔人が動きだすよ。長い間、魔族は大人しくしてきた。それは上級魔人の言いつけもあった。中級魔人はその考えに従って静かにしてきた。しかしもう違う、ミノタウロスが動きだせば、他の上級魔人も影響する。歴史が変わろうとしている瞬間なのよ今は。魔族が復権する時は近い」


 ギガースはミノタウロスが動いたことで一気に世界が変わると予見した。


「魔王を復活させると聞いてますが……」


「上級魔人の中には魔王を復活させようとしている者がいるのは確かだ。しかしまだ復活したとの話はない。いや魔王が復活したら、もうめちゃくちゃになってるから、聞くまでもないが」


「しかし魔王は人族に封印されたと。人族が怖いのは封印する魔法使いが現れること。それがあるから魔族、魔人は人族に簡単には手を出せなかった。下手に手を出して封印されたらバカをみます」


「問題はそこだよ、人族から勇者が生まれるからだ。すでに生まれていたら、この時代は魔族が苦しむかもだ」


 ギガースは勇者の存在が気がかりであった。

 人族が危機になると勇者が生まれるとされてるからだった。


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