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 宿屋での夜、その日は訓練を終えて風呂にも入っていた。

 冷は部屋にいてギガースのことを考えていた。

 その際中に扉が開いてルクエが入ってきた。


「まだ起きてるでございますか」


「ん〜ルクエかい、どうした」


 ルクエはメガネをかけていて薄着であった。

 風呂上りのため髪はしっとりと濡れていた。


「特別な要件はありません、ですが言いたいことは山ほどある、まず我々の古代から伝わる歴史書にあたる、アリエルは本当に女神なのですか、それとミーコは勇者の血統があるとも。それに対してリリスは淫魔族となると、魔族ガーゴイル、ゴーレムを集めている現状。魔族と反する女神、勇者。なぜこのような反する者を集めているのかを説明しなさいでございます」


「う〜ん、俺は最初に言っておくが、魔族が女神と勇者と反すると思ってないんだな。大昔に魔族と勇者がケンカしてそれから戦いになった、そして現在も戦いが続いているとアリエルから教わった。ただそれだけのことだろ、仲良くできないとは歴史書に書かれていないだろ、だったらいいじゃん!」


 ルクエの疑問に対してまるで適当な答えにしか聞こえなかったのでルクエはイラ立って、


「あのね〜、歴史書は人族がボロボロにされて殺された歴史を書かれた物。あの魔族達は……、人族と因縁の関係なわけ、それを同じメンバーにいれてる時点でわからないでございます」


 ルクエには魔族のガーゴイルとゴーレム達の存在がまだ信用できないでいた。


「つまりはルクエはガーゴイル、ゴーレムなどを魔族で敵だと認識しているとなるんだな。わかるよ、その気持ちは、誰だってそう思うだろうよ、でも俺は違う考えがあって、アリエルと魔族も一緒に暮らしていけるんだと思う。ケンカしていただけだろ、それを仲直りさせてやればいいだけでしょ、違うかい?」


 冷はあっけなくルクエの疑問に答えるが、ルクエは余計に混乱した。


「ああああ〜〜、なにその考え、意味がわかりませんし、適当過ぎますでございます!」


 ルクエは冷に急接近してものを言った。

 顔と顔とがくっつくくらいに。

 そうなると冷はドキッとしてしまった。

 

「ルクエは魔族が信用できないのではなく、俺がまだ信用できないのだとわかった。そこは直していかないとな!」


 冷はルクエの服をスルッと脱がしてしまうとルクエは、


「なっ、なっ!! 話をしにきただけで、服を脱ぎに来たわけではないで……ござ」


「もう脱いでますけど!」


「ええっと……もう帰りますでござい……」


 ルクエが帰ろうとした時にはすでに冷のベッドの中にいた。

 ルクエは、しまった!となったが遅かった。

 体力は道場でおおかたわかっていたが、まだまだ鍛える余地は十分にあると冷は思っていた。


(ルクエには特別な授業である、夜の道場をしてあげます)


 ベッドにぐたっと寝そべる体勢になったルクエ。

 夜の道場は、もう5回は尽きていた。


「魔族と我ら貴族を仲良くさせる。果たしてできるでございますか!!!!」


「まだこんな体力があったのかい、これは凄いぞ!」


「う〜〜〜〜ん」


 ルクエは冷との激戦の上、もうベッドが破壊されるくらいに寝かされた。

 冷には嬉しいのは疑われたことに対しては反省するとして、ルクエが単独で乗り込んできて、ここまで食い下がる姿勢に感激したのだった。


(ルクエの行動はとても好感が持てるよな)


 その晩はルクエが居ないのは誰も気付かなかった。

 道場での訓練の疲れから早くに寝てしまったのが理由である。

 ルクエが魔族と人族の間にあった溝、今もある因縁に気にかけていたのは冷も感じる。


(魔族と人族のケンカ、仲直りしたらいいよね)


 ルクエの考えてる以上に冷は何も考えてはいなかったのだった。

 単純と言えば単純。

 何も考えてないと言えば考えてはいない。

 その場の発想で行動してしまう。

 その場しのぎとも思われるが、魔人にも恐れずに人族も神族もごっちゃまぜに仲良くさせてしまう。

 それが冷にしかない才能といえた。

 今まで誰もが思いつかなかった発想である。

 考えた人族はいるかもしれない。

 しかし実際に実行した者はいない。

 冷が初めて行う異世界の冒険記となる。

 女神のアリエルが目をつけた冷。

 たぐいまれな武術の才能。

 そこにひかれて異世界に送り込んだ。

 アリエルには冷がそこそこやる、下級魔人をひとりくらい倒せればいいと考えていた。

 むろん、中級、上級魔人など敵う相手ではないと初めから決め付けていた。

 それが今では勇者のミーコ、淫魔族リリス、中級魔人ガーゴイル、中級魔人ゴーレムと魔族3人、そこに貴族3人と魔商人も付け加えた。

 アリエルにも予想は不可能な結果となる。

 わずかの時間で世界最強の冒険者パーティーを作ってしまった。

 そしてただ強いだけではない。

 メンバーの才能を活かして仕事までさせてしまう荒わざ。

 国の中では小さな町でしかないピルトの町は、冷の拠点として発展していく準備に入っていた。

 冷ですら町がどう発展していくか見当もつかない。

 単に面白いから町の発展をする。


(この町を自分で発展させるのは面白いな)


 冒険者ギルドは最強のパーティーを抱えてしまい、もはや制御不能の状態に。

 商業ギルドは弱小の商業都市から猛烈な変化の兆しに。

 冷は周りの人がついてこれない速度で世界を変えているのだった。


(もっと俺の面白いように異世界を変えてやろう)

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