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ヤリッチの発想に、卵をピルトの町で販売してみるとの考えに、冷は感動する。
(素晴らしい考えだな)
ゴーレムが同じ魔人のガーゴイルにも仕事が出来ると思い、
「ヤリッチ、その考えは良いかも。ガーゴイルがカナリヤを卵の生産に協力してもらうように言ってもらえばの話だが」
「卵の話、ちょっとカナリヤに通じてみてどう思うか試してみる。カナリヤが嫌なら販売の話はなしね、承諾するかはわからないが、やってみる……」
「うん、頼むよ」
ガーゴイルは魔物であるカナリヤ達に近寄る。
カナリヤだけでも十匹はいるわけで、魔物の言語で話してみた。
主であるガーゴイルの頼みともとれる言い方にカナリヤは忠実に従った。
本来なら人族に食われるのは心外だろう。
ガーゴイルが困っていてお願いされたのならば、返事は決まっていた。
主を喜ばせてあげたい。
主に褒めてもらいたい。
少ししてガーゴイルが返事を持って帰ってきて、
「カナリヤに訊いたところ、卵の販売をしてもいいとのことでした。頑張って産むと言ってくれました!」
「おお!!」
歓声が上がる。
カナリヤの決意に思わず声が出たのであって、魔物にもある決意をみたのだった。
「ありがとうガーゴイル、今後はカナリヤに頑張ってもらおう。そしてピルトの町に持ち帰り、販売してみよう」
「販売するなら商業ギルドに伝えます。商店業務には商業ギルドの許可が要りますから」
「許可も取ろう、パトリシアさんなら、きっと許可してもらえるはずだ」
町での商業の販売は許可制であった。
パトリシアから許可を得なくては何も始まらない。
パトリシアに許可すべく冷はもう1つ卵を熱しておく。
こうしておけば、パトリシアに食べてもらえるからで、食べてもらうのが一番早い。
(卵をもう1つ作っておこう、パトリシアさんに食べてもらう分の)
熱してある卵を持ち、ピルトの町に帰ることに。
ゴーレムが帰り際に、
「次回は私の魔物にエサをあげたい。カナリヤを見てわかる、たぶん同じ空腹だろう」
「そうですよ冷氏、暴れたら大変です」
「わかった、必ず次回はゴーレムの魔物にあげにこよう、それも緊急にな」
ゴーレムと約束してからピルトの町に到着。
真っ直ぐに商業ギルドに向かって、パトリシアに報告。
(また来ました!)
またも冷が現れたのでパトリシアは驚き、
「どうなされましたか?」
「あの〜〜頼みたいことがあるんだけど、いいかな」
いきなり卵を食べてというのも変な感じがしてしまった。
(卵を食べてと言いにくいな)
「頼みならどうぞ、特に冷さんなら歓迎です!」
パトリシアは全く怖がらなずに言った。
「えっと……この卵を食べてみて欲しい……のです」
「はっ?」
当然のように返事はできない。
聞き間違いではないかと。
「この卵を食べて欲しいのです」
今度は卵をパトリシアの前に出して言った。
パトリシアは大きな卵にびっくりしてしまう。
大きさもあるが、常識的にいってギルドの受付けに卵を差し出す男性などいない。
意味がわからないが食べれないことはなく、食べてもいいと伝える。
「これを食べればいいのですよね、かなりの大きさです、町でも売ってない程に大きい…………」
大きさに圧倒されるも食べてみた結果は、
「うん! 味は凄く凝縮されていて濃厚な味わい。嫌いではないです」
「そうですか! 良かった、喜んでもらえて、実はこの卵は魔物が産んだ卵なんです!」
パトリシアが歓迎しているからつい本当のことを言った。
冷からしたら喜んでくれてると思ったが、パトリシアからしたらショックであって口から吹き出してしまい、
「ぶ!!!!! ちょっと、魔物の卵なんですか! それを先に言ってください!」
「す、すみません! でも美味しいと……」
「確かに美味しい……です、しかしまさか魔物の卵だとは思いませんから。びっくりしてノドに詰まるところでした! ただこの卵を私に食べさせたからには何かしらの理由があるのでしょう、違いますか?」
パトリシアはあまりにも酷いと感じたが、ここまでするには理由があるとも感じた。
「はい、そうなんです、魔物とはガーゴイルと関係している魔物なんです。ガーゴイルに忠誠心のある魔物で卵を産んだのを発見した、そして熱して食べてみたら、とても美味しいとわかった。パトリシアさんからの話でゴーレム達に仕事の依頼が来るということでした、そこでこの卵を使って商売が出来ればガーゴイルの仕事になりうると思ったんだ」
ことの詳細を全て話した。
仕事の件はギルド側から話したのだから、関係なくない。
むしろ卵が商売になれるようにアドバイスなり協力をするのがギルドの役目。
味わいは問題なかった。
むしろ美味しく感じた。
問題は売る時に魔物の卵として売れるかだった。
パトリシアは重要な決断を迫られて少しの間悩んだ。




