表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
237/351

235

235



 会議室は異様な雰囲気に変わった。

 ボニータが現在まで冷と関わらずにきたのは、違うミッションを指名されていたからで、上級魔人を調査して報告をする、騎士団でもこなせない程の高レベルの魔物の退治、など大変に危険性がある任務をしていたから。

 しかし魔物をも恐れぬ性格とは逆に姿は美人冒険者としても有名であった。

 王都を歩けば、どの男も振り返る美顔の持ち主で、強さと美しさの両方を持つ。

 ボニータも行く先で冷の噂は聞いていた。

 中級魔人を倒した冒険者、しかも新人の冒険者が現れたと行く先でも有名な噂となり、自分よりも活躍する冷を嫌っていた。

 ボニータが冷及び冷の陣営に少なからず敵意を抱いたからで、


「冷の横にいるのが誰かな、全員を紹介しなさい」


 ボニータが指示すると冷が紹介していき、


「こちらが女神のアリエル、魔商人ヤリッチ、シャーロイ家のルテリ、ルクエ、ルビカだ。ヤリッチは不参加させるが、アリエルと三姉妹は参加予定だ」


「シャーロイ? あの南部の嫌われた貴族の者か……なぜ一緒にいるか知らないが、色々とバリエーションのある仲間だ、ガーゴイルとゴーレムも参加するのだろうな」


「もちろんだ」


「まぁそれでも足りないだろうが……ギガースの巨人魔族の軍隊に、ミノタウロスの牛頭軍が加わる最悪の展開になったら、この国は多大なる犠牲者が出るだろう、真っ先に冷達が犠牲者になれ、いいな、それが義務だ」


 ボニータはアリエルとルテリにも厳しい視線を送る。

 ルテリはボニータの名は知っていた、知らないほうがおかしいくらいに有名な人物だけに、言い返す言葉はなかった。

 むしろ緊張してしまったくらいである。

 緊張したのはルテリだけでなくラジッチもであり、冷どのケンカをさえぎられて、普通なら怒るところだが相手がボニータとわかると黙っていた。

 冷は強く言ってくるボニータに、


「引き受けた、決して逃げはしない。もういいだろう会議は」


「それでは会議は終わりにします、冷が協力的なのは決まり、ボニータ、ナーべマル、ラジッチも参加、騎士団は王都に集中的に配備しました。いつ敵が来るかを待つ感じです、調査班からは未だ何らかの情報はなし、いぜんとしてギガースの行方は不明であるとのこと」


 ナニが作戦会議を終えさせて、誰も異論は言わない。

 現状ではギガースとミノタウロスが現れるのを待つしかなく、ミノタウロスにしても本当に現れるのかさえ未確定であった。

 会議後は城から出てピルトの町に帰るのが冷の考えで、


「みんな、王都からピルトに帰る、ガーゴイルやリリス達も待っているだろう」


「そうしましょう、リリスは直ぐに訓練をサボるから」


「間違いなくサボるな」


「私達もピルトの町に行くのでいいのだな」


 ルテリが確認する。


「うん、三姉妹はピルトに来てもらう、俺がキミたちを訓練して今よりも強くしてあげよう、だがキミたちは貴族の家柄だろ、これからはピルトで貴族の名をあげるのが目的としよう、それとヤリッチはピルトで俺と過ごす、魔商人の腕前をピルトで発揮するのが課題だな」


「人族に貢献すると……」


「そうだよ」


「出来るのか、気持ちが悪いが……」


 ヤリッチは人族に貢献する自信はなかった。

 なにせ人族を奴隷としようとも考えていたから。

 出発する準備ができたところでビジャ姫と遭遇した。


「冷、頑張って守ってください」


「任せて!」


 来た時と同じガーゴイルの翼に変形。


「置いてかないでございます」


 ルクエは慌てて冷に抱きつく。 全員をしがみつかせると、上空にひとっ飛びした。

 冷は最後にビジャ姫と会えて喜ぶ。

 それも守るとかではなく、単に姫と楽しみたいからで。


(ビジャ姫と会いたいから、また王都に来よう)


 



 王都でギガースの今後を占っていた頃、ギガースはスタンダード国内の偏狭の地にいた。

 傷は深手を負っていて、サンマルとチルフと一緒に速度を落として移動した。

 向かった先は国の中でもほとんど人族がよりつかない地であり、そのため王都からの調査班は未調査の地のひとつであった。

 サンマルが移動しながら冷に恨みをもらす。


「冷のやろう、調子にのりやがって、次に会ったら許さない!」


「私が先に殴ってやるわ!」


 チルフも苛立っていた。

 人族に負けたのは生まれて初めての経験。

 どうしても受け入れられない。

 あってはならない魔族の掟。

 それがあっさりと負けたとなると、冷を恨みの対象とするしかない。

 冷に対して生まれた感情の大きさはかつてないレベルに達していた。

 

「私も同じだ、必ず冷に復讐してやろうぞ、エルフの国に侵入してきて、工場を破壊して、我らを倒しして殺すのが目的だろう、今頃はヤリッチは処刑されてるはず」


 ギガースは冷への深い思いを語ると、向かった先は古い友人と呼べる魔族のひとりである。

 その前に向こうの兵士がギガースに気づいて近寄る。

 

「誰だお前は、ミノタウロス様は誰にも会わないぞ、帰れ」


「私の名前はギガースだ、重大な話があると伝えてくれ」


 見張り役の兵士にギガースが言った。

 兵士の頭は牛頭であり体は普通の人であった。

 ギガースの名を聞いてショックを受けたのか、


「キキキキキキ、ギガース様、でしたか、大変に失礼しました、ミノタウロス様に報告します」 


「頼むよ」


 兵士が帰ってきてギガースとサンマル、チルフを敷地に案内した。

 ギガースが来るのは聞いておらず、兵士の間で話題となった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ