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 冷の活躍でこの話は終わったかに思えた。

 冷に対して賞賛の目で包まれる。

 冷も微笑ましくなりアリエルに、


「なぁアリエル、俺って凄いよな」


「自分で自慢するな」


 アリエルだけは賞賛ではなかった。

 そこでヤリッチが冷への賛美を消し去る話をしだす、


「あの〜、冷が凄いのは良いとしましょう、しかしこれで解決とはいきませんが……」


「魔商人ヤリッチ……他に言いたいことがあるなら言ってみなさい」


 国王はヤリッチの意見を認めると、ヤリッチは真剣な顔で始める。


「エルフを苦しめた罪は認めます、反省してます、さらに人族まで救った冷は賞賛されて当然でしょう。しかしまだ問題は終わってません、なぜなら魔人ギガースは生きていますから、彼女と長く付き合ってきてわかるのは、このまま終わる魔族ではないということ。彼女は絶対に冷に復讐しに来る、彼女の性格は負けず嫌い、必ず来ると断言する、それも巨人魔族を引き連れて」


「…………なんだって、巨人魔族が我が国に攻めてくると! 来たらどうなる?」


「多大な犠牲者が出るでしょ、いや壊滅もあるな。騎士団に対抗できる戦力がありますか」


「……どうだコロナ……」


 ハンマド国王は軍師コロナに騎士団の戦力との比較を求めると、


「残念ながら恐ろしい結果になりかねないです。もしギガースが巨人魔族を引き連れて来たら……国家に多大なる犠牲者が出ます。早急に騎士団を王都に集めましょう、他の地域から引き上げて、失っても王都を優先が重要かと!!!」


 軍師コロナは半分以上諦めた言い方であったため、部屋にいた兵士が同様しだした。

 ハンマド国王もコロナの判断に信頼をおいており、危険な状況に王都が置かれた可能性を感じた。


「それもギガースの巨人魔族だけでは済まない、あくまでも可能性の話だが、繋がりのある魔人も呼ぶことだってある、すでに冷と戦い実力はわかっているし、単純に乗り込んでも冷に阻まれると考えて中級や上級魔人を呼ぶのもありえる」


「中級……上級!!! ヤリッチよ、誰だか名前はわかっているか、特に上級ならば非常事態宣言となる、わかる範囲で教えて欲しい」


 軍師コロナが身を乗りだして訊き出そうとするのは、上級魔人と聞いてからで、上級魔人の場合は王都が最も危険と指定している魔人であった。

 そのため、常に情報を探っているが、現在は静かであるので、助かっていた。


「中級だとグリフォン、上級だとミノタウロスと繋がりがあるのは知っていた、ギガースとはかなり長くエルフの件で関係していたから、恐らくは上級魔人ミノタウロスを呼ぶと考えていい。これは脅しではなく本当のこと、警戒して損はない。早めに行動したほうがいい」


「グググ、グリフォン! そしてミミミミミミミミ、ミノタウロスと言ったか! 上級魔人ミノタウロスは消息不明、現在は偵察中であり、国家が総力を上げて捜索している魔人である。騎士団が最も警戒している六大魔人のいっかくをしめる。まさかギガースと深い仲との情報はなかった、ヤリッチの言うことが正しいのなら冷は牢獄行き確定ですぞ国王」


「グリフォンかミノタウロスが現れたら大惨事になるだろう、我が国でも上級魔人は中級と違う格付けであり、人族を絶滅させる危険性がある、過去に絶滅寸前まで追いやった経験からだ、だからミノタウロスが来るなら冷は英雄どころか災いの者とする、来ないことを祈る」


 軍師コロナとハンマド国王は、ミノタウロスの名を聞いた瞬間に一転して冷を犯罪者扱いしだした。

 しかしこれは当然といえて、過去の歴史では魔族の最上級クラスによって何度も絶滅しかかっている人族の苦い歴史があった。

 

「待ってくれ俺がいきなり犯罪者扱いですが」


「当然なのだよ冷、キミは最上級の重罪犯となった、早急に騎士団のナニを呼べ」


「はい」


 軍師コロナは即座に騎士団ナニを呼ぶ司令を出す。

 冷が急に悪評となったところで黙っていたビジャ姫が話を出すと、


「冷を酷評するのは間違いです軍師コロナ、なぜなら冷が偽回復薬の工場を破壊しなければ、現在も我が国の戦力ダウンが続いていたのですから、何もしなくても騎士団と冒険者は終わっていたのです、魔人以前に内部から崩壊していた、冷を責めるのは間違いです」


 軍師コロナはビジャ姫に言われて反論を、


「ミノタウロスが来たら終わりですが」


「冷がいます、彼は実績がありますし、よほどあなたの騎士団よりも期待が持てます」 


 ビジャ姫にバカにされて軍師コロナは頭にくるがそこは国王に止められて、


「冷は今まで何度も窮地を脱してきたのは事実、どうなんだ冷、今回は秘策があるのだろう、秘策を聞かせてくれ」


 ハンマド国王は騎士団よりも期待できるとなり冷に最善策を求めたら、


「秘策ですか…………ありませんね、あはははは」


「…………」


 国王ならびに軍師コロナ、周りの兵士達に沈黙が襲った。

 期待していた言葉にはほど遠い言葉がかえってきた。

 アリエルだけは特別驚きはせずに、


「秘策はない……いつものことよね」


「だって俺はギガースもミノタウロスも恐れていないのだから、秘策なんて必要ないだろう」


「それでも国王の前では何かしらの秘策らしい策を言っておけばよかったのよ、空気が読めないのは成長がない」


「……俺って、このままでいいだろうか」


 全く恐れることを知らない、ミノタウロスに対しても、それが良いのか悪いのかと悩む冷であった。


(俺は成長してないのかな……)


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