表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
230/351

228

228



 ヤリッチの部屋からの出発となり、冷が扉を開けて出ると兵士らは、緊張感に包まれる。

 冷を監視するのが役目だからで、


「あれ、冷さん、こちらは魔商人ヤリッチさんの部屋のはず……」


「大丈夫です、これから王都に出発します」


 そしてヤリッチとアリエルが出ると、兵士らは役目を果たしていなかったと感じる。

 そして極めつけはルテリ、ルクエ、ルビカが出ると、


「ルテリ様、なぜ、こちらはの部屋から……」


「あなた達は、監視してたの?」


「…………申し訳ありませんルテリ様……」


「まぁよい、王都に出発するとお父様に報告をしなさい」


「はい」


 兵士は慌てて報告に行くが、ヤリッチの部屋に集まる理由はわからないでいた。

 まさかあの様な夜を過ごしたとは、想像もつかない。

 普段は落ち着きのあるルテリも、この時だけは平常心でなかった。

 もしかしたら、兵士は夜を過ごしたのを気づいていると思ったからで、顔を少し赤くしていた。


 出発する前に伯爵が三姉妹を見送る。

 城の庭には伯爵と兵士が集まり、ルテリは別れの挨拶をした。


「いつでも城には戻って来れます、いい知らせを持ってきます」


「気をつけてな。冷さんの言った通り結界魔法はなくなっていた。もう秘密の入り口はない」


「エルフ族とは縁を切れるとしても、新しい関係を作ればいいでしょう、私が作ります」


 ルクエとルビカは頷いて別れを告げた。

 この日からシャーロイ家は新しい日を迎える。

 今までの古い体質は終わる日に。

 エルフ族との裏取り引きは終わる日でもあった。

 スタンダード国南部を持つ名家であった貴族のシャーロイ家は新しい日となる。

 三姉妹がその重役を担う。

 三姉妹の活躍しだいでシャーロイ家の隆盛が決まるのは、伯爵は知ってて別れとなった。


 周りの兵士は馬を用意してきて、当然であるが王都までの距離は歩ける距離ではない、当然の親切心であって、全員の分の馬を冷は頼んでいないが連れてくる。


(馬は要りませんけど)


「冷さん、馬を用意したから使ってください。もちろん馬は差し上げます」


「いいえ、結構ですよ伯爵、馬は要りません、飛行していきます」


「はぁ?飛行してですか?」


「はい」


 冷の言葉に沈黙が起る。

 誰も飛行して行くのを予想していなかったからで、冷はガーゴイルの翼を使い鳥に変形してみせた。


(これで説明不要でしょ)


「………鳥になれるのですね、あはははは」


 伯爵と兵士は冷や汗が出る。

 冷のような冒険者など見たこともないから。


「さぁみんな出発だ、俺に抱っこされろ、落ちないようにな」


「絶対に落としたらダメよ!」


「わかったよアリエル、心配するな」


「なんだか不安……」


「ヤリッチも抱っこされろ」


 5人の女の子は冷に抱っこされる形で、冷も翼のある手で抱っこする。

 ちょっとした飛行機のレベルとなった。


(これじゃ飛行機だな)


 5人を抱っこして上空に飛ぶ。

 速度は強烈に速く、伯爵達はあ然とした。

 あれだけの人数を乗せて、この速度はないだろうと。

 そして王都のある方向に向けて推進した。

 一瞬のことであった。

 もう冷の姿は見えなくなっていて、信じられない物を見たと誰もが思ったが、誰も口にはしなかった。

 ヤリッチとギガースを退治した理由がわかった気がした。

 これなら戦いな勝てるなと、納得させられる。

 もはや人族のレベルを通り越していると確信する。

 


 スタンダード国の南部に位置するシャーロイ城から離れて行く。

 森や田畑も通り越して飛行。

 必死に冷に捕まる。

 離したら落下が待っているから、頑張ってしがみつく。

 猛速度で飛行するルビカが、


「きゃあ〜〜〜〜〜怖いもん〜」


「ルビカ、騒ぐと落ちるぞ!」


「落ちたら死ぬもん〜」


 ルビカは飛行が苦手であった。

 大騒ぎしだして危ない場面もあった。

 途中どこにも寄らず、ピルトをも過ぎて王都に到着し、馬とは比較にならない速度であった。

 王都の城を一直線に定めて降り立つ。

 あまりの速さに足が震えているのはルクエで、


「あ、あ、足が震えてしまいましたでございます」


「ルクエ、震え過ぎだ、帰りも飛行するのだぞ」


「うう、帰りもですか、怖いでございます」


「ルテリは大丈夫かい?」


「大丈夫に決まってる……」


 かなり強気でいい切ったが、実際には怖がっていて、声は震えているのか周りには伝わり、冷もわかる。


(ルテリも怖がっているようだな)


 城の中庭に不時着したため、兵士が落下したのを目撃する。

 突然の落下に異常な雰囲気が漂った。

 

「何者だ!」


「ごめんなさい兵士さん、冷です」


 兵士が怒鳴ると冷は名前を名乗り敵意がないと伝えるが、冷ですと伝えると魔物以上に警戒されて、


「れ、れ、れ、冷さんでしたか、 どの様なご用でしょうか」


「ハンマド国王に話がある、伝えて欲しいです、内容は言ってはあるよだけど、エルフ族の国に行って、魔商人ヤリッチを倒して連れてきた、中級魔人ギガースには勝ったが逃げられたとね」


「…………はい」


 冷の伝えてと言った内容はとてつもない内容であったが、冷は鈍感なためか、気にはしないし、それよりもビジャ姫に会えると考えていた。


(また姫に会えるな)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ