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 ヤリッチが悔しそうな顔が三姉妹にもくみとれる。

 本当は嫌なのだが、あきらめて冷に従ったと。

 そしてルテリも同じく、結界魔法のない今は、シャーロイ家の力は低落するのはわかる。

 悔しいが冷にも仮があり、ハンマド国王からは冷のしもべとして牢獄から許されたわけで、冷に従うしか選択肢がなくなっていた。


「……私達をピルトに連れていくのは認める。もともとは牢獄にいた身、わがままは許されないのはわかっている。しかしこれだけは言っておく、あなたの奴隷になるわけではない」


「奴隷? 奴隷にするつもりはない、俺はキミたちと仲良くしたいだけさ」


 冷は素直に気持ちを伝えたのだが、それが余計に反感をかう。

 ルクエが疑問に思い、


「奴隷商人の使う言葉ですわ、とても信じられないで、ございます」


「奴隷商人じゃないんだ……どう言ったら信じてもらえるのかな」


「どうするお姉、冷を信じてピルトに行きますの〜〜、私は行くもん〜〜」


 姉2人と違い三女のルビカはピルトに行くと。


「ルビカ、どうして行くのよっ、奴隷にされてもいいの?」


「ルテリお姉には悪いけど、ピルトに行って金儲けの話は面白いもん〜〜、隠れてしてた取り引きはなくなる、エルフとは取り引きはなくなるもん〜、それなら、もっと大きな取り引きをしたいもん〜〜」


 ルビカは隠れてしてた取り引きよりも、もっと大きな取り引きをしたいと思った。

 それが冷と行けばチャンスがあると踏んだのだった。

 

「ルビカ、お前……、ひとりでは危ないだろ」


「大丈夫だもん〜」


「ダメだひとりでは……、私も一緒になら許す」


 ルテリはルビカをひとりにさせたくなかった。

 長女である責任もあるし、何よりルビカに不安があるから。


「お姉、ありがとう、お姉が一緒になら安心だもん〜」


「お前のこと、世間知らずだから、とてもひとりでは無理だろう」


「それなら私も行かざるを得ませんで、ございます。ルビカの世話をしなくてはなりません」


「まぁルクエ姉まで、嬉しい。三姉妹のきずなは強いもん〜〜」


 ルビカは喜んで父親の伯爵に笑顔を作ると、


「ルビカは変わらないな、ルテリよルビカを頼む、そして冷さん、我が娘達をよろしく頼みます。シャーロイ家の将来はこの娘達が新しく切り開いてくれると信じてます。これまでの長い歴史、シャーロイ家は隠れて取り引きしてた黒歴史ともいえます。だがこの娘ならきっと明るい一族にしてくれると思います」


 伯爵は本来ならシャーロイ家の独占的な商売を邪魔する不届きものの冷にあえて頼むとした。

 先祖から長い年月続いたエルフとの裏取り引きに、少しなりにも後ろめたさがあったからで、しかし裏取り引きを止める勇気がなかった。

 保守的な行動になっていた。

 それが結界魔法がなくなったなら、過去にしがみつく必要ない。

 新しく歴史を作れると感じたのだった。

 ルテリは父親に託されて責任感がわいた。

 

「お父様、三姉妹がピルトに行っても心配せずにいて、たまには手紙を出します」


「お父様、お元気で、ございます」


「行ってきますもん〜〜」


 三姉妹は父親と別れの誓いをした。

 無事にピルトで商売し、財産を残すと。

 冷はというと、そこまで深い話になるとは思っていなかった。

 単純に三姉妹の体に興味があった。

 そう、いつもの冷の悪いクセが、三姉妹をピルトに連れて行くと言わせたのであり、伯爵の言う黒歴史とかよくわからない。

 シャーロイ家の歴史に興味なく、感動的な話になるとは思いもしなかった。

 

(まいったな〜、俺は苦手なんだよな、感動的な話って)


 しかし伯爵の話を知らないフリはできない、冷はなんとなく伯爵に話を合わせることに。


「任せてください伯爵、必ず娘さん三姉妹を有名な資産家に成長させるように協力しますことを約束します。それまで俺に三姉妹を預けてくださることをお許しを」


「わかった冷、よろしく頼む。それでは今日はこの城でゆっくり休んでいくがいい。部屋はたくさんある。どの部屋を使ってもいい」


 伯爵に部屋での宿泊をすすめられて、特に予定はないことから宿泊するとし、


「はい、今日は泊まることにします。ヤリッチも宿泊します。そしたら明日、ピルトに出発します」


「では、お休み」


「お父様、お休みなさい」


 伯爵とはその部屋で別れた。

 冷は部屋から出たところで扉の前に女性が立っていたので驚く。


「わぁっ! びっくりしたな…………なんだアリエルじゃないか」


「びっくりしたのはこっちよ、冷がこの部屋にいると聞いて来たのよ」


 アリエルも、ほこらから結界魔法を抜けて城に来ていた。

 別の部屋で待機していて、冷が来たら知らせるように言ってあった。

 

「そうか、この城にいたのか、忘れていたよすっかり!」


 実際に忘れていた。


「もうっ! ひどいじゃない!!!」


 怒るのは無理もない。

 本当は冷が帰ってくるか心配だったのだから。

 しかし無事に帰ってきたのでホッとしたのだった。

 結局アリエルも宿泊するとこに決まり、冷の目的であったエルフ族を救うのは成功といえた。

 目的を達成できて嬉しいと思うも、まだまだ楽しみはあった。

 いつものあれである。

 伯爵から宿泊していいと言われて、密かに楽しくなってきていた。

 彼女たちは、まだ冷の考えには気づいていない。

 


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