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長期戦となった激戦はギガースの勝ちはみえてきていた。
すでに冷が押されて体は傷だらけになり、体力は激減していた。
烈火拳の連続的な長時間の使用も堪える。
通常の人族ならば体力は尽きているが、冷は特別な量の体力を持っていた。
(まだ俺の体力はある……)
それは冷も気づいていないが、毎晩しているお楽しみによる彼女達との消耗戦が大きかった。
知らないうちに体力の限界値は上がっていたからで、最大値は冷の考えてる以上に達していた。
(そろそろだな……ギガースはわかっているのかな?)
冷には秘策があった。
単に打ち続けてるわけではなかった。
バカのひとつ覚えに打っても意味はない。
秘策とはギガースが受けたハイパーアップステータスにあった。
強力にステータスを上げてくれるが、ある欠点も見抜いていた。
(アップするのはいいが、その後がな……)
冷の予想は当たっていた。
余裕で押していたギガースのトルネードスネークが互角に変わったからである。
「……なぜだ、トルネードスネークが弱くなったぞ!」
慌てる様子のギガース。
実際に弱くなっていた。
「弱くなっているぜギガースさん、どうしたよ、戦いはこれからだせ!」
烈火拳は再び逆転してトルネードスネークを圧倒しだす。
トルネードは巨大暴風雨からしだいに弱まり強さと大きさが小さくなる。
「こんなはずでは……まさかあなたはこの時を狙っていたのか!」
「当たりです〜、ハイパーアップステータスは確かに凄い、それも破格のアップ。しかしいい面だけではなかった、悪い面も持ち合わせていた。それは長時間たつと効果は消えてくる、そして最悪なことに元のステータスよりも格段に下がってしまう点。つまりは短期決戦には向いているが、長期戦には不向きであるんだよ」
冷は弱点と言える短期型であると見抜いていて戦っていた、だからひたすらに打ち続けていたのだった。
(俺の感は当たっていたな)
なぜわかったのか、それは冷が自分のスキルとしてハイパーアップステータスをストレージで習得し自分に試したから。
サンマル、チルフとの戦いにおいて、実際に使用してその弱点に気づいていたのである。
僅かの間に気づいてしまう点は冷が戦いの天才だといえた。
直感で判断してしまい実行した。
(俺ってやはり天才かな)
「ググ、どんどん弱まっている! まずい、まずい、このままだと烈火拳が!!!!」
「終わったのはギガースさん、あなたの方でしたね、はい、これで終わり!!!!」
「あわぁ〜〜〜〜!!!!」
ギガースのトルネードスネークは完全に消えかけてしまい、暴風雨どころか小雨程度にまで弱まる。
もはや烈火拳の炎と戦える力はなかった。
ギガースは全身を燃やされて吹き飛んでいき、神殿の地下に撃沈した。
地下に沈んだギガースをみてチルフは信じられない。
「いや〜〜〜ギガース様〜〜〜」
「ギガース様〜〜〜」
サンマルも走って近寄る。
ギガースの敗因は冷が戦いの天才であったのを知らなかったから。
相手が悪かったといえば、それまでであろう。
冷の体力はまだまだ尽きていない。
(俺の体力はまだ大丈夫ですけど)
ギガースが地下から這い上がってくる。
サンマルとチルフに抱きかかえられていた。
冷と視線が合うと、
「あなたの体力は化け物ですか……あれだけ打ち続けてまだ戦えるなんて、人族では考えられない。常識破りもいいとこ。まぁ限界に達していたでしょうけど、ほんの少し私の体力が負けたのよ」
ギガースは息を切られながら話して、すでに冷が限界に達していたが、僅かの差で負けたと思っていたが、それは大いなる勘違いである。
「あははは、少しの差? 笑わせるなギガースさん、俺の体力、魔力は限界じゃないぜ」
「嘘をつくな!」
「そうだ!」
サンマル、チルフも疑い文句をつけると冷は笑いつつ、
「嘘だと思うなら証拠をみせてやろう……雷電斬り!!!!」
ナギナタを持ち出して雷魔法スキルの雷電斬りを放ってみせる。
ナギナタから強烈な放電した電気が半径数十メートルにわたって飛来した。
その電気を受けたギガース達は飛び上がって失神寸前までなる。
「バカな……まだこんな強大な魔法が打てる魔力を持っているなんて?」
ギガースがしびれながら言うと冷はまたと笑う。
(もっと驚かせてやろう)
「もっと驚かせてやろうかい……グランドオメガ!!!!」
工場を破壊下ときに使用した土属性スキルを放って、巨大な岩をギガースの目の前で莫大な数を落とした。
そこに巨大な揺れと地割れを起こしてみせると、
「やめろ、やめろ、わかった、もうやめろ!!!」
「ギガース様〜〜〜地震怖いです!」
「岩が当たる〜〜!」
完全に勝負はついてギガースは負けを認めた。
しかも想像以上に冷の体力、魔力があるのを思い知らされるオマケつきで。
戦いの行方を途中から拝見、目が覚めて、していたヤリッチは、中級魔人のギガースの負けに言葉をなくした。
あり得ない光景を目の当たりにして、とんでもない相手にケンカを売ったと。
「……………………こんな奴とケンカしたら大損だわ」
ヤリッチは失敗を認め、後悔した。
トルネードスネークを覚えました。




