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 冷の戦いで退却したサンマルとチルフはヤリッチのいる神殿に向かった。

 ヤリッチから紹介された商人と魔術士が原因なのだから、文句を言える立場であった。

 サンマルは神殿に着くと兵士を怒鳴り散らして、


「これはサンマル様、どうなされ……」


「うるさい、退けっ! ヤリッチに会わせろ!」


「ちょっとお待ちを、ヤリッチ様は急がしいと……」


「こっちはもっと急がしいんだよ!」


 サンマルは兵士数人を蹴散らして神殿内部に入るとチルフは、


「ヤリッチをぶちのめしてやろうか」


「そのつもりさ!」


 ヤリッチのいる部屋に到着するや扉の前にも兵士がいたが退かして入り、


「なんだ! サンマル……いきなり入ってくるのは失礼ですが?」


 驚いてサンマルとチルフを見る。

 なぜか彼女達が怒っているようにヤリッチには感じた。


「失礼もねえよ、あなたに紹介されてきた紹介がいただろう、覚えてるだろうな!」


「紹介した商人はレイールでした魔術士アリババも一緒に。なにかありましたか、私にはとてもサンマルとチルフが怒っている風にみえます、回復薬の効果を数倍にもするとのことでしたね、結果はいかがでしたか」


 何も知らないヤリッチは完全に信じきっていて、サンマルを余計にいらつかせてしまうと、


「お前のよこしたレイールとアリババが偽物だったんだよ!」


「偽物ですって!」


「そうさ、レイールとアリババが私達の所に挨拶にきたさ、そこはヤリッチの紹介ということで信頼して工場に送った、その結果がどうなったと思うよヤリッチ!」


「工場……何かあったのか」


「工場はもうない、全部破壊されてしまい、その上、火をつけて半分以上燃やしてしまったんだよ」


 サンマルの言ったのを理解できないヤリッチは困惑する。


「……破壊して燃やした……バカな」


「恐らくはレイールがやったものた推定する。あれはレイールではなかったのだし……」


「レイールでない?」


「ヤリッチも知ってるだろうか、人族でガーゴイルやゴーレムを倒した冒険者を」


「ガーゴイル、ゴーレム……まさか、噂には聞いた……冷とかいったな」


 ヤリッチは商人だけにあらゆる情報に耳を傾けていたので、名前は知っていたが、レイールが冷だったとは思いもしなかった。

 するとチルフがバカにするようにして、


「その冷だよ、魔商人ヤリッチをもってしても、冷と身抜けなかったわけだ。魔商人も落ちたな」


「……悪かった……」


 チルフにバカにされて頭にくるも、グッと抑えた。


「悪かったでは済まない。その冷とは私達2人が戦ったのだから」


「……そう……2人なら勝てたわけだな冷に」


 ヤリッチは少しホッとすると、


「違うぞ……2人でいって負けたのだよ、勝てそうになくて逃げてきたのさ。ギガース様に報告だよ、ヤリッチがとんでもない化け物を呼んできたとな。そして工場は破壊されたと!」


「ま、ま、ま、まずいですね、ギガースに報告されたら、私の立場的に、彼女は怒るでしょう……」


「怒るなんてものじゃ済まないよ、半殺しか死ぬだろうな」


「ひ、ひ、ひぇっ……助けてくれ、金ならやる!」


「いるか金なんて……。しかも冷は偽回復薬だと知っていたようだ。だから工場を破壊したと考えられる。来た目的はヤリッチとギガース様も標的かもな。つまりエルフ族の味方らしいな」


「エルフ族か………タリヌか……タリヌ女王が冷を利用して私とギガースを倒しに来たとしたら、話は通じる。偽回復薬の話もタリヌ女王なら知ってるし、我らを憎んでいるに違いない、やりかねない!!!!」


 このままだと死ぬ可能性のあるヤリッチは必死に考えると、エルフ族側に冷がいるのならわかったことは、エルフ族の女王、タリヌ女王が冷と関係を結んだと考えた。


「タリヌ女王が関わっているなら、早く女王を連れてこい、そうすればわかる」


「兵士に命じて女王を連れてこさせる!」


 ヤリッチは冷よりもギガースが怖くて、いち早く問題を解決したかった。

 タリヌ女王に全ての問題の責任を取らせる姿勢である。

 そうすれば自分の責任はなくなり、命は助かると。

 しかしチルフが絶望的なひと言を、


「兵士が女王を連れてくるのが間に合えばいいが、すでにギガース様に報告してあるから、直ぐにここに来る。どちらが先かな。ギガース様が先ならヤリッチはこの場で殺される、女王が先なら女王が殺されるだろう。どうなるか?」


「……」


 ヤリッチは苦しい顔に。

 こうなると賭けでしかない。

 ギガースが遅れるのを祈った。

 


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