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サンマルは強靭な体を持つ冷に恐怖心を抱いて、このままだと危ないと感じチルフに、
「おい、こいつはヤバい奴だ。工場の燃えた件もある。いったん退却しよう」
「……悔しいが退却か、ギガース様に報告しよう。ギガース様がくれば安心だしな」
「あれ、退却するの?」
「……今はな!」
サンマルとチルフはお互いに顔を見合わせて納得すると、素早く冷から離れて行った。
「せっかく戦いが面白くなってきたのにな」
残された冷も悔しくなる。
目的の工場は破壊に成功し、全て燃えてしまい、偽回復薬を作るのは無理なので満足する。
(まぁ満足としようか)
サンマルとチルフを追うのも考えたが、それよりもアリエルが心配になる。
(アリエルは大丈夫かな、巨人族が10人はいたから……)
気持ちを切り替えてアリエルを追うことにしたが、そこでストレージに変化が起こる。
ハイパーアップステータスを覚えました。
(おっと、これはサンマルの能力が急激に上がっていた奴だな、ラッキー!)
新たなスキルを覚え喜ぶと、アリエルを探すのだった。
アリエルの行った方角に行くと無事に発見した。
「お〜いアリエル無事のようだな!」
「無事なのは、三姉妹のおかげ、私ひとりなら死んでましたけど!!!」
アリエルは冷に怒りをぶつけるも、冷はむしろ微笑みで返す。
「俺は大歓迎だな。なぜなら訓練の成果が出るだろ。生き残ったのは訓練のおかげだよ。アリエルは知らないうちに成長しているのさ」
「死んだら意味ない!」
「今が無事に生きてるのだからいいだろうに」
「話しても無駄ね!」
アリエルはあきれて話すのをやめたら、次女ルクエが申し訳なさそうに、
「あの〜私達が応援にきて残りを倒しましたでございます。褒めるなら私達三姉妹でしょう?」
「よく応援に間に合った、そして巨人族を倒したものだ。お礼をしておこう」
アリエルの隣にいる三姉妹は自慢家に立っていた。
(三姉妹なら勝てるとは思っていたから、驚きはない)
「けっこう強かったもん、巨人魔族は強いもん〜」
「そのようだな、俺の相手のサンマルとチルフも強力な巨人族であったからな。まぁ2人は俺が怖くて逃げていったが」
サンマルとチルフは三姉妹も耳にしていて、ギガース軍の幹部クラスだと。
長女ルテリはまさかという顔で、
「えぇ!!、あのサンマルとチルフをっ! 2人の名は有名、あのサンマルを撃退するとは、ゴーレムも勝てないわけだ」
「あははは、俺の実力がわかったようだね三姉妹くん」
「自慢しない!」
アリエルに指摘されても冷は変わらない。
長女ルテリが疑問点があり問いかけると、
「工場の破壊は成功したとして、サンマルとチルフは撃退し、この後どうする気、ヤリッチに知れるのは時間の問題」
「キミたちはもう十分に働いてくれた。ここまで俺を連れてきてくれただけでオッケーです。来た道である結界魔法の入り口から国に帰って欲しい」
「帰っていいの? あなたひとりになってしまう。ヤリッチが怒れば面倒になる、必ず魔人ギガースを呼ぶ。まぁサンマルが知らせるだろうが。そうなるとギガースとサンマル、チルフ、それに巨人族もいたら、全部を相手にするのだ、とうてい無理に……」
ルテリは冷の実力はわかっていて、それでも無理だと判断したら、
「無理なもんか、全部まとめて俺が戦ってやります、安心して帰っていいよ!」
と余裕を持って語った。
(ギガースは正直に能力は不明ですけどね)
「余裕過ぎるのは、いつものこと……」
「アリエルさん、いつものこと……なんですか」
「ええ、ゴーレムとあなた達、三姉妹の時も同じ。この通りの余裕っぷり」
アリエルにバカにされると冷は、
「それでも俺は毎回、敵を倒し続ける。今回も負けるなんて考えはこれっぽっちもないのさ。必ずエルフをギガースとヤリッチから開放してやる!」
「わかった、わかった、冷に任せます、帰りますから!」
「いいのですかアリエル、本当に任せて?」
「本人が良いって言ってるのだから、良いのよ。私こそギガースとか会いたくないし」
「ずいぶんと、割り切った仲間関係です、では姉さん、私達も帰りますでございます」
「そうしましょう、無理に残る理由はない、ルビカも帰るぞ」
「帰るもん〜」
三姉妹もアリエルと冷の関係に不安に思うも帰るのに決まり、残るのは冷となった。
(三姉妹と別れるのは寂しいが、後で会えればいいよな)
三姉妹に対して、別れるのを惜しみながら見送るのだった。




