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冷の質問な質問に王女の周りにいる護衛兵が緊張する。
冷に対して危険な人物と判断されたからで、
「おい、お前、王女に対して失礼な質問はやめろ、続けるならこの場から追い出すぞ!」
「はい、すみませんでした。怒ったなら謝ります。しかし帰るわけにはいきません、どうしてもね」
「…………あなた、本当に商人なのかしら…………、商人が魔族の魔力を感じ取るか言わないはずですし、それと異常な程に強大な魔力を……怪しいです、それとお隣のアリエルさんも、商人と言いましたがなぜか聖なる魔力を感じます、商人が聖なる魔力を発するなんて聞いたことはありませんけど…………」
タリヌ王女は冷とアリエルにも疑いの目を向けると冷は、
「あははは、やはりバレてしまいますか、商人で突き通せるわけないなと思ってた」
(バレてしまったなら、笑うしかないよ)
「では、シャーロイ家の商人ではなかったと、正体を言いなさい……」
冷に厳しい口調で言い放った。
冷はアリエルとルテリ達と顔を見合わせて頷いた。
「あの〜バレたなら俺の正体を明かします。俺はシャーロイ家の者ではなく関係ない、ただの冒険者です、王女に会わなければならない約束をしてここまで来ました」
「約束とは?」
「人族の国のある町で俺はエルフ族の少女に出会いました、その子の名はメドメール、町の中で売店を出して薬品を販売してました。回復薬でした、俺が言いたいことはわかりますよね?」
「…………何を言いたいのか全くわかりませんけど」
「その子、メドメールは俺にこう言いました、エルフの国は大変に危機に面してる、魔商人ヤリッチに支配されてる、そしてヤリッチには逆らえないのは魔人ギガースが控えてるからだと教えてくれた。俺は彼女の話が嘘には思えなかったんだ」
冷はメドメールにあった事実を語ると王女は疑い深く、
「変な話ね、もし本当にメドメールの話が事実だとしましょう、なぜメドメールはあなたに話したのですか、変ですね、話す意味がないですし、理由もない」
「ああ、それなら簡単な理由ですよ、俺が冷、中級魔人サイクロプス、ガーゴイル、ゴーレムを倒したと知ったからで、俺ならば自分の国、エルフの国を助けてくれると思った。メドメールとは約束したんだ、必ずエルフの国からヤリッチ、魔人ギガースを追い払ってやるとね!」
「な、な、な、なんですって! あ、あなたがあの冷……、エルフの国にも伝わっています、信じられない新人の冒険者が現れたと、魔人と人族が戦う新時代が始まったと……。まさかあなたが」
王女は信じられない様子で語ると、周りにいた兵士達はもっと慌ててしまい、逃げたくなる兵士もいて、周囲の雰囲気はガラリと変わってしまう。
するとアリエルが、
「こうなると思ったが、思った以上に有名なようね」
「良いことだよ、あははは」
「自慢するな」
「ちなみに彼女、アリエルは商人ではなく女神だから」
「はぁ……め、め、女神さま、アリエル……………………まさかあの伝説のアリエル様……………………もう、意味がわからないです、何がなんだか、どうして女神さまが、それでメドメールがあなたに我が国の現状を話したのなら納得しました、確かにあなたの言った通り、大変に危機にあって、ヤリッチ、ギガースとの関係も真実。ヤリッチからは人族の国に回復系薬を売れ売れとさいそくされます。売れ残れば罰を与えるとも言われ、深刻な現状に。しかし我がエルフ族には戦闘タイプの魔術士もいますが、相手が中級魔人となると敵いませんでした。あえなく殺されました。こうなると従うしかなく……本来ならエルフの国には結界魔法があるので入って来れませんけど、ヤリッチは商人のフリをして、たくみに近寄ってきたので、気づいた時には騙されていて、ヤリッチの支配下になり果てました。きっとメドメールは、残念に思い冷に望みを託したのでは」
「願いをされたなら無視するのは出来ない性格なもので俺は。ヤリッチとギガースに会わせてください、俺が言ってやりますよ、出てけエルフの国からってね!」
「いやいや、いくらあたながあの冷さんでも……無理でしょう。なぜならギガースの強さは異常なレベル、死にに行くようなものです。助けてくれるのは嬉しいですが、帰った方がよろしいかと、わざわざ死なすのはもったいない。早く、ヤリッチに見つかる前に、帰ってください……」
「俺が負けると……そんな簡単に決められたら困るなぁ〜、俺は絶対に勝つし、勝つために来たんだ。ヤリッチとギガースを追い出したら、嬉しいでしょう?」
「嬉しいと言われれば嬉しいですが、そんな大役を任せられません、あなたの命と比較するなんて……。まだ知らないのだろうけど、ヤリッチに命令されてエルフ族が作っている回復薬にはある秘密が隠されてます」
「秘密とは?」
「一般的に体力を回復させるのは一緒ですが、特殊な調合を、もちろんヤリッチの仕業で回復薬には、使った人の体力の最大値を低下させる効果を付与してます。それはヤリッチが研究させて完成させた物です」
王女がした回復薬の秘密にアリエルは、
「体力の最大値を低下……それは使えば使う程に弱くなっていくことよね?」
「はい、弱くなります。それが魔族であるヤリッチの目的。ギガースと協力して開発したらしい」
アリエルだけでなくルテリ達も、そこまで回復薬に秘密があったとは考えもしなかった。
「許せんな。直ぐに国に入るのを停止させたい、魔族の好きにはさせません、俺の命を賭けましょう、賭けるのはエルフの国にある結界魔法、もし俺がヤリッチにギガースに殺されたら負け、逆にヤリッチにギガースを追い出したら俺の勝ちで、結界魔法を解く、勝負しませんか?」
冷は命とエルフの国の結界魔法を賭けとした。
「い、い、いや、そんな賭けはあなたにとってリスクが高いでしょう、余りにも」
「リスクが高いのは大歓迎、その方が面白いでしょう。回復薬の製造工場を壊滅させて作れないように破壊する!」
「お、面白い……そういう問題ですかね」
王女は冷のふざけてるとも取れる態度に困惑すると、アリエルがバカにした感じで、
「王女、毎回こうなんです……この男は」
「毎回……ですか、ヤリッチに会うとして、どうやって会うかです。非常に警戒心の強く簡単に近づけないでしょう、しかし金の話になるとがぜん興味を持ちます」
「金の話を持ち出せば良いのだな、う〜んとそうだな、アリエル何かいい案はあるかな」
「う〜んとエルフ族の作る回復薬が主力商品なのでしょ、私もいちおう、女神なので治癒系の魔法が使えるわね……」
アリエルの魔法スキルに冷は何か使えないかと考えてみる。
(アリエルの魔法と金か……)




