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冷とアリエルのふたりで入り口に行くと決まり伯爵の後をついて行く冷は長女ルテリに、
「あのルテリさ、キミは入り口からエルフの国には行ったことはあるの?」
「入り口は知ってる、私達は実際には行ってませんが、うちの貴族に使える商人がエルフ族の商人と話し合い交易してます。城の秘密の場所にあって、詳しい場所は城いる兵士やメイドでもわからないのよ。お父様から三姉妹は教わっています。エルフ族と特別な取り引きや密売したりする時にだけ、使用してエルフ族と交易してきました。これは国王には内緒ですが、今回の件でエルフの国との繋がりはバレたでしょう」
「冷が国王達の前でけっこう喋ってましたから、バレてます」
アリエルが申し訳ありませんという感じで言った。
「なんだ、キミたちも行ったことないのかい、う〜んそれならこの際、俺と一緒に来たらいい。シャーロイ三姉妹がいた方が都合がいいのもあるし」
(俺とアリエルだけだと、いかにも不自然だからな)
冷が一緒に来いと言うと、長女ルテリは、
「私に来いと……行く理由がないから行かない、それについでにみたいなのは嫌だ」
あっさりと断ると続いて次女ルクエは、
「エルフの国には行ったことはありませんので、多少の興味あるのでございます〜」
次女は割りとこうてであったが三女ルビカは、
「エルフ族の国、前から行って見たかったもん〜、お姉が行かないなら私だけでも行くもん〜」
「バカだね、ルクエ、ルビカ、魔人ギガースがいるんだよ、とんでもなく面倒なのが目に見えてる。もう魔人はゴーレムの一件で懲り懲りだ」
「待て待て、娘をエルフの国には行かせたくない父として、まして魔人ギガースなど危険性は半端ないだろう。冷とアリエルさんだけで行っておくれ!」
伯爵は三姉妹の娘の安否を気づかい、反対したがルビカは、
「いつかは行ってもいいと言ってたでしょお父様、行きますもん〜」
「むむむ……」
「伯爵、娘の安全は俺がみますから一緒にお願いします」
冷がお願いしますとするとアリエルも、
「一緒に来てくれないと、私と冷では怪しいです。やはりシャーロイ家の人がいないと、誰ですかってなってしまい、行った途端に騒ぎになり、先がおもいやられます」
アリエルはシャーロイ家の人がいないと変だと言ったのは正解であり、エルフ族側もシャーロイ家の者であるかを確認するのを怠らなかった。
身元不明なのは不審者として即刻通報し、捕える決まりであった。
「わかった、ルビカとルクエの妹だけに行かせるわけにはいかない。私も行くことにする」
「むむむ……ルテリよ、大丈夫か、今回はいつもと違い、交易ではないのだ、冷はエルフの国の内部から暴れるかもだ。帰ってこれる保証はないぞ」
「わかってますお父様。危険なのは十分に、でも私も冷には仮がある身、牢獄から出させてくれたのだから、案内くらいはしてもいいでしょう。もちろん魔人が出たら冷に戦わせますけど」
「オッケー、俺に任せてくれよ。魔人は俺が対応する。エルフの国での対応は任せるよ、色々と面倒なのかもだし。来た理由もいるだろうな」
「それなら交易だということにしましょう。こちらからは、鉱石を差し出します、エルフ族側からは調合薬を交換します。その際に冷とアリエルを商人だとすれば怪しまれないはずです」
長女ルテリが提案すると伯爵は、
「なるほど商人にか、商人に成りすますのはいいが、冷にその様な器用な真似が出来るのかが重要だが、直ぐに鉱石を幾つか用意しよう」
素直にルテリの話に合わせた。
伯爵の話を聞いて不安になったのはアリエルで、
「商人て言えば相手と難しい価格の交渉などするのよ、例えばエルフ族側が価格を値切ってきたりとか……冷には難しいのでは」
「問題ないだろうな、交渉は適当に済ませて、エルフ国内に入れればオッケーだろ。そしてエルフ族の国王に会う。俺の話を聞いてもらい、あなた達エルフ族を助けに来たと伝える、そして魔商人ヤリッチを帯びきよせて、ヤリッチの支配する政治を討伐する。そこで魔人ギガースが来たら、ギガースも倒す、これが俺の今回のシナリオなんだけど、どうかな?」
冷はアリエルの心配など全く無視して、適当なシナリオを語りだして沈黙させた。
(ざっとこんな感じに進めればいいよね)
「…………あのね冷、そんな簡単に事が進むと思いですか、適当過ぎるでしょ!」
「そうかなぁ〜俺的にはけっこういいかなと、まぁ考えても答えはわからない、三姉妹が来てくれると決まって、商人に成りすます作戦で進めよう」
「…………大丈夫かしら……」
アリエルが心配の声を出すと次女ルクエが、
「エルフ族とは長い年月、ずっと交易をしてきたのですから、信頼関係がある、そこまで心配しなくていいと思う、それより入ってからエルフ族の王に会うのは至難です、商人が気軽に会える方ではない、でございます」
「難しいだろうけど、他に手があるかい、まずは俺が直接、王に会ってズバリと言うべきでしょ」
「冷がそう言うなら、その策を実行しましょう。エルフの国に行ける結界魔法の入り口へ」
「気をつけるのだぞ!」
「はい、お父様、必ず戻ってきます」
「戻ってきますでございます〜」
「戻って来るもん〜」
伯爵は三姉妹に気を使うけど三姉妹は怖さは感じてはいなくて、まだ今の段階では魔人ギガースの魔力すら感じられないのだから、無理もなく伯爵に一時的に別れをした。
兵士には交易する際に必要な鉱石を運ばせ、冷に預ける。
後は、行ってからどうなるかの問題であり、怪しまれたら冷の作戦は失敗となるし、演技力が問われることになる。




