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冷にとってはある種の賭けであり、三姉妹をダシにして、条件をつけようとし、条件は時空間魔法の入り口であるのはまだ伏せていたため、伯爵がマユを歪ませる。
「条件付きなのが、わかっちゃいましたが、1つだけあるのです。俺が求めている条件が。伯爵さんなら必ず応えてくれる内容の条件でして、いや世界であなたにしか出来ない要件なんですよね」
「世界で私にしか、何でしょうかな……、教えたくないなら構いませんよ、娘を国王から戻してくれたらその要件をききましょう。約束します。私に叶えられる要件ならば」
伯爵は冷の言い分が掴めないまま、しかし娘が助かるのなら、たとえ莫大な資産を失ってでも助けたいと思って、冷の言い分にのった。
「伯爵様……その様な無礼な冒険者の言いなりになって危険では……、裏があるかもしれません…………」
伯爵の側近が冷を怪しんで、うのみにするのをよすようにと進言したら伯爵は、
「それも考えた、しかし娘が助かるのなら私の全てを捨てても構わん。その覚悟はできておる」
「伯爵様……」
「それでは話はついて、三姉妹を連れてくる、そしたら俺の言い分をきく、これでいいですか?」
「約束しよう冷。きみが本当に国王に言い寄れるならばね。難しかろう。それと仲間に女神がいるのも魔人に勝てる秘訣なのかな」
「いやこれは足手ま……とい……」
「ちょっと冷!」
「あっ、いえ、女神の恩恵は凄まじいです」
冷は言いかけてアリエルに横やりを入れられて、言い直したが伯爵は気づいていなく、女神の偉大なる力があるのだと思った。
「あはははは、私、女神がいれば国王もわかってくれます。国王は女神には逆らえませんことよ」
「おお、そこまでの力が。再びお会いするのを楽しみにしてます冷、女神アリエル様」
伯爵の護衛兵も女神を初めて見て、通り過ぎる時には緊張してガチガチに立っていた。
伯爵が話を終えて、冷とアリエルは城を出るとアリエルは、
「これで伯爵には約束して一歩進んだとして、問題は国王に三姉妹を開放するように、どうな納得させるかよね」
「簡単だよ。国王は納得してくれるさ」
「どうしてわかる」
「だってガーゴイルを開放してくれたのも国王だ。今回も同じく開放してくれると思ってる」
(凄く単純だけどね)
「どう考えても、違うよねガーゴイルの時とは。ダメだったらどうする気」
「無理やりにでも城から三姉妹を連れて出すしかない。最悪は騎士団とかと戦うのもあるな、王都がめちゃくちゃになるとヤバいだろうけど、それでも取り戻してやろうと思ってる。アリエルもそのつもりで頼むよ」
(これは嘘ではない……)
「そうでしょう、きっとそう言うだろうと思ったわ。すぐに王都に向かいましょう。それとお尻のタッチは認めませんことよ!」
「あっ、はいはい……」
(厳しいなアリエル)
再び飛行体型に変形し上空に飛び立つと、シャーロイ家の兵士達は見上げて、どうやって飛んでいるのだと議論になって、しかし結論は冷が普通ではない、化け物であるとなった。
冷が去った後に残された伯爵は、考えてしまい、本当に良かったのか、間違えた選択をしたのではと、自問自答するも冷が帰ると信じて待つしかなかった。
魔人ゴーレムが来るは、女神が来るは、魔人を倒す冒険者が来るは、過去にない経験であり、何かしらの時代の大きな変化、安定していた人族と魔族の間の秩序の変化が起きている実感、現在が大きな歴史のうねりの中にいると感じざるを得ないのだった。
娘の起こした失敗も、そんな風に考えれば不思議ではなく、巨大な力に巻き込まれたとしたら、今よりももっと娘の心配が増えそうで困った。
王都に目的地を定めた冷は、回り道などせずに一直線に飛行し、アリエルを抱っこしながら、もちろん感触を確かめて、翼は両手が進化して羽となっていても、抱っこは器用に触っていた。
アリエルは翼で飛びながら体を触ってくる欲深さに、言葉が出なく王都まで我慢するしかなかった。
王都の城が視界に入ると、速度を落としていき、城下町をも通過して、城にむかい門番をも通過し、中に入ってしまう。
冷はもう何度も来ているのもあり、城の構造がよくわかっていて、門から入らなくても入城するのであった。
「この方が楽だろ」
(門から入ると面倒くさいからな)
「兵士に見つかると楽じゃなく面倒になるわよ」
「う〜ん、それは困るな」
「ていうか、さっそくみつかりましたけど……」
アリエルが危惧した兵士に見つかるのは、見回りの兵士がうろついているわけで、簡単に姿を発見されると兵士は、
「誰だ! 怪しい奴め!」
「ごめんなさい、怪しい者ではありませんので……」
(兵士がめちゃくちゃに俺を怪しんですます)
「いきなり現れて怪しくないわけない、しかもどうやってここに来れたのだ、門番からは何の連絡はないぞ!」
「えっと……通路にある窓穴から入りました……」
(本当のことをいっておこう)
「バカを言え、お〜〜い、不審者を発見したぞ〜〜〜」
兵士が他の兵士に応援を要請した声で、冷としては失敗したなとなるが、アリエルは強気であり、
「待ちなさい兵士達、私は女神アリエルです。国王に重要な話があって来ましたと伝えなさい」
「えっと……め、め、女神アリエル様! こ、これは、どういうことで……直ぐに国王に伝えますっ!!!」
兵士達は集まったもののアリエルにだとわかると、慌てて国王のもとに走って行き、アリエルは自慢げにして冷を見る。
冷はアリエルには女神という武器があってうらやましく思った。
(いいよな女神って、俺も女神になってみたいよなぁ)