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魔物との合流を済ませたことで戦力補強は成功とし、万が一何かあった時などに、町の防御も行えまた、魔人との戦いの際には貴重な戦力となるのを期待する。
中級魔人を二人を仲間にして、魔物を100匹も加えた冷のパーティー戦力は、計りしれない能力にまで上がった。
どの冒険者パーティーも冷を恐れるし、名前を聞いただけで逃げる冒険者があとをたたないまでに成長。
ギルドもここまで急激な成長を遂げた冷に感謝もするが、むしろどこまで成長するのか、ギルドで手におえるレベルは遥かに超えてしまった。
(魔物はオッケーとしよう。次はどうするかだな。エルフ族のメドメールはどうしてるかな……)
道場は完成して訓練に励むとして、魔物も補強し、次はエルフ族の件が気がかりとなり冷は行動に出ようと考えていた。
メドメールが心配であり、助けるのは助けるのだが、どうやって助けるのかを検討している段階。
アリエルが町を歩きながら、
「ギガースがヤバイのは私も知ってます。女神ですら恐怖する名前です。出来れば冷に会わせるのは後回しにしたいと思っていたの。でもエルフ族の件で急接近して、冷はギガースに向かうのでしょ?」
「アリエルが心配してくれるのはありがたいが、俺はエルフ族のメドメールの話を聞いて決心したよ。エルフ族の国に向かう」
はっきりと冷は自分の口で言いきると、アリエルだけでなく全員が止めても無駄だなとなる。
(俺ひとりでも行っやろうじゃん)
「冷をひとりで行かせるのは反対します。私も行きます」
「魔人相手なら魔族の力は必ず役に立つ、行きましょう私も」
「うむ、このスピアがある限り、ギガースには負けんぞ〜〜〜」
シールド、ボーガ、ギャンは冷と一緒に行くと言ったので冷は嬉しくなり、
「ありがたい、だがギャン、スピアは振り回すのはダメだ。町の人がかなりビビってるから」
「はい、申し訳ない」
ギャンは張り切り過ぎてスピアを振り回すので注意されると、頭を下げて謝るが、冷には可愛いなとなった。
「他のみんなはどうするかだ。必ず行くことはない。行きたい者だけにしよう!」
(あくまで任意で、強制はしないさ)
「残るのは無理かな、みんなが行ってて私だけ残るのは辛いなぁ」
「ミーコがそう言うなら、私も同じだな」
アリエルも行くのをためらわないと言うとリリスが珍しく、
「ちぇっ……別に行きたくはねぇけどよ、お前らが行くのなら行ってやるよ!」
リリスも行くと、素直に言わないのがリリス流である。
メンバーは全員が頷き、エルフの国に行くこで合意し、覚悟を決める。
何が起こるかはわからないが、みんなと一緒ならというのが冷には伝わってきて、胸がジーンと熱くなる。
「よし、みんなでエルフの国に行くよ!」
冷が行くよ!と決意表明した時にシールドが指を指して、
「あれはエルフ族の子だろう。あの子にも言っておくのはどうです」
「うん、ちょうど良い。彼女には伝えておこう」
最初に会った時と同じ店を露天販売していて、通り過ぎる冒険者に回復薬を販売しているメドメールの姿であった。
ひと声かけようと彼女の仕事中に近寄ると冷の軍団に気づき、
「冷さん! また来たの、1つどうですか回復薬は?」
「今は足りてるから次に購入するよ、それよりも重大な話がある」
「重大なとは……金がないとか」
「違う! 金なら使い切れないくらいある。金じゃなくて君の、メドメールの国の件。みんなで話し合った結果、エルフの国に行くと決めたんだ」
「えっと……本当に、私の国に冷さんが来てくれると。嬉しく思います〜、国の危機を救ってくださるのは冷さんしかいません! しかしそれには条件がありまして、条件を満たさないと国には入国出来ません」
メドメールは冷に感謝するも、直ぐに厳しい顔に、それはエルフの国に秘密があった。
「秘密とは、入国するのに許可証がいるのかな?」
(パスポートみたいなのが必要ならわかるけど)
「いいえ許可証ではありません……厳密には似たようなものでして、許可証よりも厳しい制限です。理由は我がエルフの国には他国、人族や魔族から入国されないように結界魔法が国の領土周囲全てにはってあります。結界魔法はやすやすと破れる結界ではなく、エルフ族の伝統的な魔法でして、それ故平和な時代が長く続いていたのです」
エルフ族の結界は人族には破れなく攻められることを凌いできた。
「結界がある間は、俺は入れないわけか」
(面倒な結界だな。入れないとなると困った)
冷が困ると疑問を持ったのがボーガで、
「今の話だと疑問がある、結界魔法があるのなら、そもそもギガースとヤリッチも入国出来ていないわけだし、平和が崩れないのでは?」
ボーガの意見を聞いたアリエル達は、納得するとボーガと同じ考えになる。
ギガースがエルフの国に入ったのは事実であり、それで支配されてしまったわけで、そうなると矛盾点が残るのは、どうやって結界を通り抜けたのかである。
ボーガの疑問の答えはメドメールの口から、
「魔商人ヤリッチがエルフの国との間で商売したいとなり、タリヌ王女と会いアイテムの売買を始めました。ヤリッチは最初は献身的でしたが、ある時に結界魔法が人族の国の地点と繋がっているのを知りました。その地点は古くから繋がっている時空間魔法でありま」
メドメールの話が複雑になり冷達は、黙ってききいってしまうのだった。