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人族とは違い長耳を頭につけているエルフ族。
古くからエルフ族は独立国となっていた。
国境を精霊の森で覆われていて、魔法で外部から侵入を防いでいる。
その為、人族や魔物も入ることは出来なくしていた。
冷がお風呂で楽しんでいる最中、エルフ族の国は奴隷とも思える仕打ちをされている。
長い時間の労働。
農園での薬草作りと、薬草から回復薬を作る。
苦しい生活を余儀なくされる。
種族的にエルフ族は平和な思考。
戦いは自ら望まない正確であった。
そこを商人ヤリッチは見抜きエルフ族を従えていた。
ヤリッチは白いシャツにパンツスーツ姿にも似た服装で命令していた。
大きな胸を揺らして命令する。
「エルフどもよ、もっと働きなさい。我々魔族の為に!」
ヤリッチが命令するとエルフ達は怯えてしまう。
恐怖で逆らう者はいなかった。
ヤリッチの配下の魔族も一緒に見下す。
隣にはエルフ族の王女タリヌが控える。
「ヤリッチ様、ご報告です。命令された回復薬の製造は順調です。製造数は飛躍的に増えてます。他国に向けて送っております。人族の調合した回復薬よりも品質が良く価格が安いのが受け入れられて、評判もよいとのことです」
「順調か、もっと多く早く作れ。そして人族に売りつけろ。人族め、どんどんとこの回復薬を使えばいい。なにも知らずにバカな人族だ。タリヌ王女よ、この回復薬の特殊効果はバレてないよな」
「はい、他国に送った調査班からは報告書ではバレてません。普通の回復薬だと思っています」
「フフフ、これが実は回復薬であると同時に使った者の体力のマックス値を減少させる効果があると知らずに使っておる。そのうち、奴らの体力はいつの間にか減少、戦力は激減するだろう。それも我々魔族は何の被害も受けずにだ。しかも金まで手に入る。凄い仕組みだよな」
ヤリッチが考えた策。
それはエルフ族に回復薬を製造させる。
その回復薬は特殊効果で、使った者の体力値を減少させる。
他国に販売し人族を弱らせるという計画。
しかしヤリッチひとりだけではとても無理な巨大な計画。
そこでギガースに接近し、計画を伝える。
ギガースがうしろだてとなり、エルフ族を従えるようになった。
ギガースには回復薬の売り上げの半分を渡すのが条件である。
エルフ族もさすがにギガースが居たら手は出ない。
1つの国の戦力をも上回るのがギガース。
ヤリッチだけなら勝ててもギガースの軍隊を征するのは無理であった。
ヤリッチがタリヌ王女を従える形となり国の運営は変わる。
ヤリッチの配下が、
「さすがはヤリッチ様、考えることが素晴らしい。商人の神様でございます」
「ギガースを使ったのが正解であった。あれはハンパなく強いが頭は弱い。脳筋て奴さ。金さえ渡せば黙って私の右腕さ。まぁ半分もっていかれるのは痛いがな」
「そこはギガースも引きませんでした。金にはうるさいようです。ただしヤリッチ様がエルフ族のトップに。逆らうエルフいませんよ、ギガースの名を出せば怖くて手も足も出せやしません。ヤリッチ様の頭の良さが存分に発揮された結果でしょう」
「うん、このままエルフ族の支配は続ける……あはははははは……」
ヤリッチは自分の計画が全て順調に運ばれ上機嫌となる。
魔商人とも呼ばれるほどに金のためなら何でもしていた。
ヤリッチが高笑いしていた時に、騒ぎがあった。
「ヤリッチ様、ギガースがお見えになっております」
「ギガースか……集金に来たか。わかった、通せ」
ギガースは定期的にヤリッチに会いにきていた。
今日はその日であった。
ギガースは仲間のサンマル、チルフを一緒に連れている。
サンマルはギガースと同じ巨人族で主に調合の特殊スキルを持つ。
もうひとりのチルフも巨人族。
水属性のスキルの使い手である。
身長は高く2メートルはある。
ギガースがヤリッチに、
「ご機嫌ですねヤリッチ、回復薬の方はバッチリだそうですね、前回よりも集金額は増やしてもらいますよ」
「……いや、そんなには儲かってないですが……。前回と同じ額の分け前でどうですか?」
ヤリッチはギガースの金額の上乗せにケチをつける。
「……今言ったことが聞こえませんでしたか……。増やすと言ってるのを……。それともなにかな、聞こえてるのに私の意見に反対していると」
「いえ、いえ、反対だなんてとんでとない、絶対に反対などしません、けどこれ以上上げられると私の取り分が減り続けるでしょう、ギガース様にはそこまで金を必要ないと思いまして」
ギガースが怖いがヤリッチとしてもかけ引き。
取り分を確保したい。
そこでサンマルが、
「もっと回復薬の売上げを伸ばせば良いだろう。そうすればあなたの取り分は減らない、簡単な計算だよ。2倍に売り上げを伸ばせ、次は」
「む、む、む、無茶なサンマルさん、2倍って厳ししすぎます!」
「努力しろよ、商人と名のってるなら意地でもやれ」
「…………はい、サンマルさん、努力します…………」
ヤリッチはサンマルににらまれて、怯えてしまった。
ギガースからの要求は日増しに厳しくなるのが悩ましかった。
チルフが念をおして、
「エルフ族の国が支配できているのが誰のおかげなのかもう一度考えるのだな、現在の世界の状況は変化している。予測が出来ないレベルで変化する。つい、先日も大異変があったのは知ってるはず。ギガース様と同じ中級魔人のゴーレム一味がとある人族の冒険者に負けた。そしてその冒険者の支配下におかれたようだ。さらに中級魔人ガーゴイルおも従えているとの噂。ハッキリいって脅威。魔族と対等に戦える戦力を持ち始めている。このエルフ族の国が安泰なのかはわからないのだよヤリッチ」
「…………冷ですね、その冒険者とやらは。もちろん耳に入ってます。警戒はしていますが、今のところ冷がエルフ族と接触した形跡はありません。この国とは無縁と言えます」
「それならいいがね……」
「お話が済んだところで、お食事のご用意が出来てます、どうぞギガース様……」
ヤリッチのメイドが食事を案内し話は終わる。