180
180
メドメールは無理だと思い始めていた時に冷がヤル気をみせてホッとする。
アリエルが不穏な顔で、
「故郷の国が危機なのはわかりました。冷が行くと言ってるので行くことに決定とします。しかし問題はどうやってヤリッチを追い出すか、それが簡単ではなさそうよ。だってヤリッチは中級魔人のギガースと組んでいると。ヤリッチに手をつけるとギガースとも戦うことに。かといってヤリッチと話あって解決できる相手ではないのでしょう」
「ヤリッチは商人でして、金が好きです。エルフの国から出ていけとなれば金の入る仕組みが失われるわけで、絶対に出ていきません。それは確実でしょう」
「中級魔人ならガーゴイルかゴーレムがギガースに直接話あってみてはどう、それくらいは出来そうだけど」
ガーゴイルはアリエルに聞かれ、
「ギガースか……最近に会ったのは会ったが、私の言うことを聞くタイプではない。中級魔人はいっけん同じグループに思われるけど、実際はバラバラ。考えかたも、行動も違う。人族が勝手にグループ化しているだけで、私達は迷惑なのよね」
ガーゴイルはギガースとの会話は無理となりゴーレムは、
「ギガースに会いにいっても、ケンカになるな。冷のパーティーに入ったのを知ってるだろうから。最悪、中級魔人対中級魔人の争いに発展もある。ガーゴイルと一緒にこうして居るのも冷が居るからで、普段なら近寄らないよ」
二人とも魔人が単独での行動をしていると明かした。
「なるほど、魔人だから通じてるわけではないのね。意外と仲悪いとか知らなかった。万が一、ギガースとバトルとなっても、こちらにはガーゴイル、ゴーレムもいるわけで有利ではないのかな。二人も中級魔人がいて、冷もいるのだし、勝てそうな気もする」
「侮ってはいけませんギガースを。あれは戦闘力はハンパない。そして支配下の戦力も多いと聞く。強力な下級魔人も揃えているし、簡単に勝てるかと言ったら、違うと言える。むしろ負ける可能性だってある」
ゴーレムは厳しい顔で言う。
こんなに厳しい顔をしているゴーレムを見るのは、アリエルも初めてであった。
ゴーレムの脅しとも取れる話を聞いてミーコが、
「王都に相談したらどうですか、国王ならギガースクラスの魔人が相手ですと言えば、力を貸してくれるのでは。なぜならギガースがエルフ族を制圧したのなら、次はこの国が危ないから。人族もターゲットになり得る。そしたら騎士団も協力してくれる。大軍で攻めればギガースにも効果はあると思う」
「ミーコが言うのは国王を味方につけるやり方か。しかし素直に国王が話にのるかどうか。むしろリスクがあり過ぎて、帰されるかもよ。あの国王はリスクを取ることは極力避ける。軍師コロナなどは絶対に避けるだろ」
「じゃあどうしろって言うのゴーレム。このままメドメールに謝り、帰ってもらうと……」
「う〜ん難しい」
ゴーレムはギガースに国王が戦いを挑むとは思えなかった。
どちらかと言うと、保守的な考えの国王だと。
「冷はどうなの?」
「俺なら決まってる、もう考えは決まった」
(俺の考えは簡単だよ)
ミーコに聞かれてあっさりと返答する。
「……決まった……どうする気?」
「簡単だよ、俺がエルフ族の国に行く。ヤリッチをなぎ倒す、ギガースが怒って俺を襲う、そしたらギガースもなぎ倒す。こんな感じですけど何か……」
(要は全員倒せばいいのだろう。そうすればエルフ族は平和になる)
あっさりと説明した内容は、とてもバカげた内容でアリエル達をあ然とさせるのに十分であった。
「……………………あなた今までのギガースについての会話を聞いてなかったの?」
「聞いてたよ」
「……………………それはやめとけと魔人さんが言ってましたけど、わかりますか」
アリエルは冷に失笑してしまう。
あまりのバカさ加減に。
ギャン、シールドも呆れていた。
「聞こえてたよ、ヤリッチとギガースがなんとかとか……それよりも俺が興味深いのはメドメール。メドメールのような可愛いエルフ族がいるなら、エルフ族の国に行けばもっといっぱい可愛い子に会える。行く価値はあるんだよアリエルくん〜」
(エルフ族の国に行けば可愛い子に会える。それならヤリッチだろうがギガースだろうが戦うしかないよな)
「……………………」
あまりのバカな発言の連続に全員が言葉を失う。
「もはや救いようがないなこの男は」
リリスは冷を切り捨てた言い方。
「なぜこの人と今まで一緒に冒険してきたのか……」
ミーコも後悔し始める。
「あの〜〜私は……帰った方がいいでしょうか……」
メドメールは空気をよんで帰ろうとした。
とてもこのまま居たらマズいと感じたから。
エルフ族もこの空気の悪さは理解する。
「帰らないでくれ!」
(俺は悪いこと言ったかな)
「そしたら私達の住む宿屋を教えます。後で来てください。それまでに回答を考えておきますから」
メドメールに宿屋を教える。
直ぐに答えがでないから、時間をおくことにした。
ただし時間をかけたからといって、答えがでるかはわからないが。
「エルフ族だけで解決すればいいのですが、このままだと無理。エルフ族の未来は暗いです」
「私達も協力はします」
ミーコが言うとメドメールは道場から去っていった。
不安な顔であり、パーティーメンバーは難題を抱えた。
このまま無視してしまうか、エルフ族を助けるかの2択を。




