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 シールドは何のためらいもなく丸太を削り始める。

 以前は盾の重量を利用して、大木をざっくりと切った。

 今回は逆に盾を器用に使っていた。

 丁寧に丸太を削り出して形を整えていく。

 次第に形は剣の形となり、あれよという間に、剣が出来上がった。

 先程武器屋で見た木製の剣と比べても、そん色ない出来栄えで、販売品と言われてもわからないくらいのレベルである。

 

「完成したけど、どうかな〜〜」


「凄いわよ!」


「完全に剣です〜!」


「売れるぞこれ!」


 アリエル、ミーコ、リリスもシールドの技術には舌を巻く。

 冷も技術の高さに頷き、


「驚いたよシールド。君の盾の使うテクニックには。こんなに正確に形を整えられるなんて、天才じゃないのかな!」


(本当に天才的だよ)


「ありがとう、天才だなんて」


 シールドはちょっと嬉しがる。


「シールド、冷に褒められて良かった。まぁ私はシールドがこれくらいは作れるとわかっていたが。人数分の剣を作ってくれ」


「ゴーレム様、おまかせを」


 シールドはゴーレムにも褒められて満面の笑みになる。

 その後に人数分の剣を連続で作る。

 盾を器用に削りまるで工場で職人が作ったかのような早さと正確さで、全く同じ大きさ、形、造りの剣が作られた。


「人数分の剣、完成しました!」


「凄い! 持ってみてもいい剣だ。訓練にも十分に使える。購入しなくて正解であった」


(武器屋で購入するよりも安上がりである)


 シールドの作る剣は完成品としても上等さが現れていた。

 ミーコが実際に持ち振ってみると、


「とても使いやすい感じします」


「どれどれ…………私も…………うん、握りやすい」


 そして全員が持ってみて確認すると、いい感じの返答が起こる。

 シールドはますます笑顔が溢れる。


「シールド、よく作れたな。この剣は持ち帰って道場で使うことにする。そして道着も揃ったことだし、準備はいいな」


(一度道着を着たところも見てみたい気がする。なんとなく楽しみだな)


 準備が整い冷だけはテンションが高まっていたが、リリスなどはいい迷惑だと感じていた。

 


 買い物は終わり宿屋に帰ることにし、途中で食事も取る予定とする。

 買い物していて腹が空いたからである。

 結構時間はたっていたのだが、夢中になっていて食事を忘れていた。

 食事できるお店を探して歩いていると道ばたで露店している少女が目に止まった。

 その子は耳が上に伸びていてエルフ族であり、必死に商品を売ってる。

 その姿をミーコが見て、


「あれはエルフ族の少女です。珍しいです」


「へぇ〜〜エルフ族……俺は初めて見るな」


(よくゲームに登場する種族だよな。本当に耳が上に伸びているんだな。それにとても可愛い。ちょっと寄ってみようかな)


「何かを売ってるようです」


「のぞいてみようか」


「お前はエルフ族の子が可愛いとか思ったからじゃないか?」


 リリスが冷の行動に違和感を感じて言った。

 正解であるが、冷は冷静に反論する。


「リリス、俺は純粋にエルフ族を観察しておきたいだけだ。変な気持ちはない」


(よく感づいたな)


「それならいいが……お前は過去にそう言って騙すパターンだから」


「リリス、ちょっと寄ってみましょうよ。美味しいものでも売ってるかもよ」


「なに! 美味いものだと、それなら話は別だ、直ぐに行こう!」


「リリスの方が信用ないだろ〜」


(まぁいいか、俺もエルフ族には興味あるしな)


 エルフ族の売り場は小さいながらもテーブル代の上に小びん、中びんなどを並べる。

 店を構えてるわけではなく、仮の屋台のようにして販売していた。

 リリスが欲張って近くに行くと、


「なぁ〜美味そうな物はあるかい?」


「いらっしゃいませ、えっと……食べ物は残念ながらありません。食べ物じゃないけど回復薬ならあるの、凄く良く効く回復薬がありますけど、武器を持っているのをみると冒険者さんですのね、買いませんか?」


「悪い、食べ物じゃないなら要らないよ」


 リリスは残念がる。

 遅れて冷も到着すると、正にゲームで見たことのあるエルフ族の姿であった。


「うゎあ〜エルフ族って本当にいるのですね〜」


(マジで驚いたよ)


「エルフ族です。エルフ族の者はエルフの国から外には出ません。だから珍しいのですかね」


「私も初めて見ます。確かエルフの国は遠いはず、この国の南部と接している。そして薬の調合が特異なのだと聞いたことがある」


 ミーコはエルフ族の子を見て語る。


「はい、エルフの国は遠いです。そして薬の調合はできまして、この回復薬も作りました。ぜひ購入してみて?」


「どうするの冷、購入してみたら、冒険者には必須のアイテムでしょう」


「そうだな回復薬はあって損はないよな。それならば10個購入します」


(つい、可愛い子だから気が緩んでしまう)


 実際、冷は回復薬には何の興味がなかった。

 単純にエルフの子から購入してみたくなっただけである。


「ありがとうございます…………今、冷って……聞こえましたが……」


 エルフは回復薬を渡した際に冷に確かめる。

 

「ええこの男は冷。もしかしてエルフ族まで冷を知ってるとか?」


「名前は聞いてます。とても強い冒険者だと。そして南部のピルトの町に居るとも。まさか本物の冷さんに出会えるとはびっくり」


「俺も有名人なんだな。別の国にまで名前が知れ渡るなんて。エルフ族の国にも行ってみたいかな〜〜」


(こんな可愛い子がいる国になら、ぜひとも行ってみたい)


「……そ、そのうちにでも……………………」


 なぜかエルフ族の子は冷が行きたいというと、口がかたくなってしまった。

 そしてそれ以上は喋らなくなり黙ってしまった。

 そこで回復薬は受け取ると、エルフ族の子とは別れた。

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