173
173
道場には道具置き場も用意されていた。
冷は自分で図面を描いてあった場所に向かってみる。
「確かここが道具置き場として部屋を作っていたけど……あるな、うん、十分にスペースはある。ここを道具置き場としよう」
「道具置き場とは、防具とか武器のことですか?」
「よく使うのを置いておくと便利だろう。訓練用のを購入してもいいよな。冒険の時と訓練用と2つ必要だもんな」
(ここに置くといざ、冒険の時に不便。お金はあるからみんなの分の道具をこの際だから購入しておこう)
冷は道具が必要と判断し、購入を決める。
「冷が購入してくれるのよね。お金は持ってるのだし」
ミーコがお金の話になると首を突っ込む。
「まぁ、俺が払うのが筋だろう。安いので十分だし。本来なら道着もいるのだけど、この世界にはないだろうから、動き安い訓練用の衣服も一緒に購入だな」
「色々と準備がいるの、面倒だ」
「道着にはつきものなんだよリリス。慣れれば問題ない」
(道着に縁のないリリスには、面倒に思えるのは仕方ないかな)
「それと、気になる点もあります」
シールドが手を上げる。
「なんだいシールド」
「道着とやらに着替えるわけですよね、そうなると着替える部屋はどうなりますか?」
「更衣室だな。もちろん作ってあるはず、見に行こう」
(図面では更衣室も作っておいた。ゴーレムが造ってくれていれば、あるはずです)
冷は更衣室のある方に向う。
冷の構想通りに部屋はあった。
特別何もない部屋はガランとしていた。
「ここを更衣室としよう。更衣室とは着替える部屋だ。みんな始まる時と終わる時にこの部屋に来て着替える。汗もかくだろうから」
「なるほど、よく考えてある。これなら安心して着替えられます」
「安心して?」
(安心してとは気になる発言だな)
「冷に着替えるのを見られないのは安心ですという意味です。おかしいですか?」
ボーガが当たり前のことを述べる。
「俺だけ、のけもの?」
(おいおい、俺は着替えるの別にしろと……)
「だって、恥ずかしでしょ」
「恥ずかしいことない。俺は君たちの体を見て、筋肉量や無駄な肉がないかをチェックする。見るのは大事なことだ」
(これは本当のことですが、単に見たいのもある)
「なんだか、変な理由に聞こえます」
「そうよ、変です。お願いですから冷は別室で着替えて」
「アリエルまで言うか! わかったよ、俺は別室としよう。ちょっと寂しい気もするが」
「じゃあ私は冷と同室でいいです〜」
ガーゴイルは別室を拒否し、冷と同室を望んだ。
「ガーゴイルは訓練を勘違いしてるような」
「ミーコ、私は勘違いしてません。いつでも一緒にいたいだけですよ」
「それが勘違いなんですけど……」
ミーコはガーゴイルにこれ以上言っても無駄だとわかり、会話をやめる。
「それではガーゴイルだけ冷と同室と決まりで」
「ありがとう」
「ありがとうって、楽しそう」
「みんな、訓練は厳しくいく、決して楽しいだけではないぞ」
(ガーゴイルはよくわからないが、みんなには言っておこう)
ひととおり道場を見学し終える。
実際の道場と比べてもひけを取らない完成。
床が硬いという点を除けば満足のいくものとなる。
広さも十分にあり、人数が増えてもぶつかることはない。
狭いとぶつかる危険があるが、心配はいらない広さ。
空気口もしっかりと造ってあり、暑くなるので空気の入れ替えも必要があるが、対応してある。
見学は終えて外に出ることに。
「これで見学は終えよう。この後は必要な物を購入だな」
(次は必要な備品を揃えよう。町には訓練用の衣服も売ってると思う)
「訓練用の衣服なら防具屋に行くのはどうです、きっと安い衣服は揃えてあるはずです」
「それがいいな、防具屋に行ってみよう」
先ずは武器、防具屋に向かう。
買い物にいくのは冷にとっては新鮮である。
(女の子を連れて買い物か。緊張するよなこれは。しかもガーゴイルとゴーレム達も参加して人数が倍増。これでは目立ちすぎだろ)
事実、町の人々の視線は釘付けとなっていた。
これ程までに女の子を引き連れて歩く者はいない。
冒険者パーティーであっても、男女混合が普通。
割合も男性が多くても女性も少なからずいるもの。
それが冷ときたら、男性は冷だけ。
(やたらと俺が見られてる気がする。そりゃそうだよな、こんな美少女を多人数揃えたら目立つよな)
冒険者パーティーというより、ハーレムの団体にしか見えない。
異様な視線の中、武器、防具屋に向かった。
冷は知らないが道場を出た後に、騒ぎになっていた。
なぜなら昨日まで何も、いや道場の土台部分程度しかなかった。
広い土地にはまだ柱もなかった。
それがいきなり見たこともない建築物が立っていた。
驚かないわけがない。
通りかかった人々は騒ぎ始める。
「なんなんだこれは?」
「いったいどうなってる、昨日はなかったぞ!」
「さっき、冷が出てくるのを見たらしい。冷が関係してようだ」
「冷……なら、あり得るな。あの人はわからないことだらけだから、近寄らないことだ。みんなに伝えておこう」
道場だとはわからず、得体の知れない物だから、近寄らないと伝える。
別に危険性はゼロであるが、人々には理解の範囲を超えているので、結論は危険となった。




