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 薄暗がりの中、道場の入り口から入る。

 昔の懐かしさがあり、神妙な面持ちであった。

 外観と同じく中も和風な仕上げがいき届いている。


「凄いぞゴーレム、完璧な造りだよ。俺が通っていた道場だよ!」


(凄いなこれ、日本にある道場だろ)


「図面通りに造ったまで。自分でもこれで合っているのかわからない」


「ここまでは完璧といえる。実際に道場の訓練する間に行ってみよう……これは!」


(普通の道場ならタタミが敷いてあるのが一般的だ……)


「どうかしまた?」


「…………ちょっと違うな俺の知ってる道場とは、タタミといって草で編んだ敷物が並べてあるのだけど、ここは石だよね」


 冷が見たものは明らかに石で出来た面が一面に敷かれてあった。

 イメージとは大分かけ離れたものである。


「う〜〜ん、タタミってのはよくわからない」


 ゴーレムはタタミを知らない。

 生まれてから一度も見たことはないのだから、作るのは無理であろう。


「タタミは冷しか知らないのですよ。そもそもこの世界に存在しない物。ゴーレムに造れと言う方が無理」


 アリエルがゴーレムをかばった。

 他のメンバーも頷く。

 誰もタタミを知らないことを冷は気づけないのが失敗となる。


「知らないか……当然か、俺の世界を知らないのだからタタミを知ってるわけないもんな。タタミの件は俺が悪かった。ゴーレムには責任はない」


(日本にしかないもんなタタミは。ゴーレムどころか外国人だって知らない人は多いだろうに、なぜ俺は気づけなかったのか)


「そんな大事な物なのかいタタミは、無くて良ければこの状態でいいのでは」


「ギャン、タタミはとても重要な部分なんだ。なぜかというと武術をするのに適している。倒れても土で固めたよりは柔らかくて、怪我はしない」 


(タタミの説明をしても伝わるのか疑問だが)


「つまり今の土から造ったのでは硬すぎると」 


「確かに、倒れたり、落とされたら怪我するわね」


 ボーガも地面を確かめて硬いた感じる。

 ゴーレムの造った面はとても頑丈であったが、弱点はクッション性に欠けていた。


「ゴーレム様、ショックを受けずに……」


「大丈夫だよボーガ、俺はゴーレムに責任を負わせないから。それよりも明日からここで訓練を開始しよう。みんなは武器、防具を身に着けてきて欲しい。俺の道場だ、俺の好きに使わせてもらうよ」


(夢でもあった自分の道場が持てた。こんなに嬉しいことはない。それに訓練生とも呼べる子もいるのだし、明日から楽しみだな。特にガーゴイルたゴーレムら新メンバーは強力である。一国に匹敵する力を持っているかもしれないな。そう考えると俺のパーティーは恐ろしい性能だよな。これでも魔人に勝てない、特に上級魔人に勝てないのなら、そいつ等は俺の想像を超えた強さを備えてるとしか言えないだろうな)


 冷は道場な完成して喜びもつかぬ間、すでに訓練の計画を思案していた。

 今後出会うであろう魔人について。

 どれだけの強さがあるのか、現在のパーティーの能力、パラメータで勝てる相手なのかを。

 

「余裕を持つのは禁物だ。これから出会う相手は、あくまでも俺たちよりも格上だと思っていた方が良いだろう。つまりはいつ全滅してもいいように日頃から訓練を怠らないことが肝心だ。自分たちよりも格上だとして、何が足りないのかを意識して訓練しよう。アリエル、ミーコ、リリスはまだまだ発展途上なのは明らかだ。自分に厳しくして欲しいぞ!」


「わかりました!」


 アリエルは素直に言った。


「道場での訓練は身を引きしめていきます!」


 ミーコも冷に反対しない。


「ガーゴイルとゴーレムがいるのだし、私は戦う必要ないだろ」


 リリスだけは批判的な態度に出る。

 魔人が居るのなら魔人に任せていいだろうという考えであるが、これはこれで一理あった。


「リリス、ガーゴイル、ゴーレムに任せて訓練をしないのは間違いだよ。なぜなら君には俺が見た限り、ガーゴイル、ゴーレムにも匹敵する能力、潜在的な力を感じる。ただ自分で気づいていないのだと思う」


「……そんなに私は強くなれないよ。自分のことは自分が1番わかってる。無理を言うな」


 リリスは冷が言ったことを信じようとしないで否定した。


「本当だよ。決して嘘ではない。現に今の君たちは俺と出会った当初よりも大幅にパラメータは上がってる。最初の頃は魔物に向かうのも出来なかった。それが今は違うだろ。気づかないうちに異常な程に上がってるのだよ。だから自分を見下す必要ない」


(事実、リリスの戦闘力は俺が思ってる以上だ。素晴らしい力がある。しかしリリスは自分を信じようとしないから困ったものだ。精神的な強さも必要になるな)


 冷はリリスに対してもっと自分を信じろと言った。

 まだ本人はわかっていないが、毎晩のお楽しみによる全てのパラメータ、攻撃力、防御力、素早さなどは急上昇していた。

 わかっていないというよりも、わかりたくないのもあった。

 変態的な行為で強くなってるなど、考えたくもない。

 口に出すのも嫌であろう。

 

「リリス、全員で訓練をしましょう」


「アリエル……。わかったよ、やるよ」


 リリスはアリエルに言われて納得。

 これで道場の完成、訓練生とも気持ちを同じくして新たな日が始まることになった。

 足もとの土は、今後考えるようにした。

 今は、どうすることも出来ない、タタミも存在しない、ある物でやり抜くのが大切である。

 冷は久々にテンションが上がっていた。

 

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