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町から1番近くの森に出発することに決めた冷達は、いつもとは違う気持ちに。
たいていは魔物と対戦するクエストでしか外には出ない。
気持ちは厳しい重苦しくなるのだが、今日は魔物と戦う予定なし。
重くなくむしろ楽しい気持ちがあるくらいだ。
歩きながらボーガが足を止めて、
「ねえ、木を切ったりするわけでしょ、せっかくだから町に持ち帰ったらどうでしょう、材木として価値があるのでは?」
「か、金!!」
ミーコが金と聞くと目が丸くなった。
「ミーコったら、金にうるさいからボーガも気をつけて」
「ミーコは金にうるさい、記憶しておきます」
「変なキャラを吹き込むのやめてよね、それはそうと、木は家や家具など使い道がある、町の材木屋に話しをしてみたらいいです、きっと金になりますから」
「やはり金じゃないか」
「アリエルの言ったとおりでした。気をつけて行動します」
「金になるからとかじゃない、町に貢献できるかもと言ってるのよ」
ミーコは必死に弁解するが、言えば言うほどに怪しくなる。
「ミーコ、あきらめるのも大事だ」
(もうみんなミーコの性格は熟知している)
「冷まで私をそんな目で見て!」
「冷もこれ以上ミーコをからかうのをよしてよ、材木屋に行きましょう」
アリエルが言ってミーコの話しは終わった。
そこから近くにある材木屋を発見した。
見るからに大木を加工した後がみてとれる。
色々な丸太が置いてある。
「いらっしゃいませ、木をお探しですか?」
「探してきたのではないのです。材木について尋ねたいことがあってきました」
(とりあえず、材木の需要とか訊きたい)
「ほお、材木なら必要だね、ただし魔物もいるから、簡単には森に行けないのだよ。材木を切る職人はいましたが、最近になって退職した。もう歳でね。だから新しい材木が手に入りにくくて、困ってしるんだな」
「それでしたら俺に材木を取ってくる仕事をさせてもらえませんか、まだ未経験ですが、腕のある子がいますので、力になれるかと」
(なんとタイミングのいい。職人がいなくなったのならチャンスだよな)
材木屋は新しい材木を探している最中であったので、冷の話しにのることにした。
「わかった、森に行って材木を持ってきてくれたら買い取ろう。約束する」
「ありがとう、また来ます」
「待ちなさい、材木を持ち帰るのに素手では大変だろう。ウチが荷台車を貸してやろう、そうすれば楽に持って帰れる」
そう言って材木屋の店主は冷に荷台車を貸した。
荷台車はタイヤがついており、大量の材木が運べる。
「荷台車があれば便利、ぜひ使います!」
冷はありがたく借りることにした。
(なるほど、これは必要だな。リアカーって感じだ)
材木屋から荷台車を借りて準備は整った。
「いい物を借りれましたね」
「これならいっぱい詰めるが、本当にボーガ、君たちは木を切れるのかね、まだ俺は半信半疑なんだけど」
(森に行ったら、切れませんでしたでは、俺が恥をかくのだぞ)
「冷は私を疑っているの、行ってみればわかります。私たちの実力が」
ボーガは冷に疑われるとわかり、後で確かめてくれと言った。
その瞳には自信が満ちあふれる。
森に到着すると平原から徐々に木々が覆われた土地にかわる。
目指している大木は十分に生い茂っており、足を止めた。
ボーガは大木を実際に手で触り感触を確かめる。
「この木ならきっといい材木になりますよ。どうでしょうこの木で?」
「任せるさ、俺にはどれがいい材木なのかわからないからな。さっそく取り掛かっておくれよ」
(どれでも同じにしか見えないのだが、見る人によっては違うてことか)
「それではギャン、やるわよ!」
「はいよ!」
ボーガに声をかけられてギャンは返事をした。
大木に向かうとお気に入りの長大なスピアを手にした。
「おお、得意のスピア、まさかそのスピアで大木を切るのかい、いくらなんでもスピアは突き刺す武器だろ、剣や斧が合っていると思うけど」
(普通に考えたら木を切る作業は斧だろう。それなのにスピアとは、まるで場違いな感じ、とても切れるとは思えないが)
冷はギャンが切れるとは考えなかったがリリスも同じで、
「無理だろスピアでは。逆にスピアが壊れるだけだぞ」
リリスはギャンを止めに行こうとしたら、
「大丈夫ですよリリス、ギャンを見てて」
「……ゴーレムが言うなら見ていよう」
ゴーレムはまるで心配ない素振りでリリスを安心させる。
「さぁ切りますから、皆さんもっと離れてくださいよ、危ないですから〜」
ギャンの言われた通りに離れたら、スピアを大木に向かって付き出した。
大木はスピアと衝突し、木が裂かれる音で大木は折れてしまった。
一突きで大木は折れたのを見てアリエルは、
「なんですか、こんな切り方ってありますか?」
「これが私の切り方なの。凄いでしょう〜」
ギャンはスピアをかざして決めポーズ。
大木は真ん中にぽっかりと穴があき、見事に倒してしまった。
これにはアリエル、ミーコ、リリスもぼう然となっていた。