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宿屋でその日は過ごしていた。
食事は適当にあるもので準備をする。
パンに飲み物とサラダであった。
冷には十分な料理であるが、肉料理がないので、女の子の中にはやや不満点。
フォークを止めてミーコが何か考え込んでいる風にして、
「このままゴーレムやギャン達が町に馴染むのは難しいかと思ってて、どうにかして馴染めないかと……」
「考えがあるのなら言ってみなよ、参考までに」
「彼女達に恐怖感を感じてる風に見えるの。魔人や魔族でしょう、どうしても話しかけるのは無理かなって思う。話せるきっかけがあればいいなぁと」
ミーコが考えていたのはギャン達にきっかけさえあれば、町の人と会話できるのにと思った。
「きっかけか……過去に人族と会話したいとか思ったことがない。いきなり人族と仲良くするのは難しい。私の事を恐れているのは実感している」
「ゴーレム自身も感じてるなら、町の人も同じ気持ちだろうな」
(思ったよりも人々が警戒している)
ゴーレムが困った顔をしているとシールドがひらめいたとばかりにして、
「ゴーレム様、きっかけならいい考えがあるのですけど、果たして受け入れてもらえるかが肝心なところでして…………」
「シールドの意見をぜひ聞いてみたいな」
「ミーコが怒るかもよ」
「怒らないから言ってみてよ」
「ゴーレム様は?」
「うん、怒らないよ」
「それなら言います、実は私には、あとギャン、ボーガもなんだけど、特技があるのです。それは木を切ったり加工したりできるのです。森で生きていたので自然と木を使っていたら技能として見についた。その技能を使えば町の人達と会話したり身近になれるかなと…………」
「なるほどな、その手があったか!」
ゴーレムはシールドの意見にハっとなる。
思わずシールドに頷く。
「へえ〜〜木を使って加工か、つまり木工師、大工的な職人に近いことが出来るのですか。それなら役に立つかもです。きっと町の木工師の職人も歓迎するのでは、そして評判が上がればシールド達に警戒心を緩める作戦ね。それは良い考えよ!」
ミーコはシールドに賛成する。
「木工が出来るのは初耳だよ。ギャン、ボーガも出来るのだよな?」
(木工師か、意外な特技があるもんだな)
「はい、私は弓矢で木を切り倒していきます。でも太い木はギャンに任せる」
「このスピアで大木などぶっ倒してしまうぞ〜〜〜」
「ち、ち、ちょっと振り回すのはダメ〜」
ギャンは急に立ち上がりスピアを振り回す。
周りの者は慌ててギャンをしずめる。
「そのスピアなら大木も切れそうだね」
(スピアって突き刺すイメージだったけど、イメージを壊す使い方だな。ボーガの弓矢もだけど。そうなると木こり、木工師といった形で人族の中に入っていけるかもな)
「切れます!」
「では、実際の木を切ってもらったらどうかな」
「うん、いいかもな、ゴーレムも賛成かい?」
「木を切るのが1番わかりやすいだろうね。ちなみに私の特技は土です。土を固められる」
「土を固められるスキルかい」
「ゴーレム様のスキル、クレイブロックです」
「クレイブロック……、そんなスキルをまだ持ってたのかい」
(どんなスキルなんだろうか、気にはなる)
ゴーレムの持つスキルに興味を持つ冷。
「クレイブロックならば貢献できる可能性はある。冷には黙っていたわけじゃないけど、魔人なんだから複数持ちは当たり前なのよ。よければみせてもいいけど」
「冷、今日は時間あるならゴーレムのスキルと、ギャン達の木工師、木こりの技も披露してもらったらどうかな?」
アリエルが面白しそうに言った。
「そうしようか、時間はあるのだし、これから実際にみせてもらいたい!」
冷は魔人が人族と共存する方法を模索していく途中。
何でも試してみたいと思う。
(面白そうだな。ぜひとも試してみよう)
「町から出て近くの森に行けば木はたくさんある。わくわくする!」
ミーコは笑顔で言うと、アリエルとリリスも賛成していた。
先ずは着変えて防具服に装備。
外に行くのであれば防具服が最適。
汚れるのもあるからで、冷も含めて着替えることに。
そこではアリエルからガーゴイル、シールドまで全員が下着姿になる。
当然と言えば当然だが、部屋で着替えることになるので冷がガン見した。
彼女らは誰も冷を意識していない。
防具に着替えるのは毎日の作業のような感じになっているから。
特別な作業ではない為に冷を無視していた。
ただしリリスだけは警戒感を持っている。
「おい、お前さ、さっきから着替えるのをジッと見てるだろ?」
「み、み、見てないさ。俺だって着替えてるわけだし、そんな暇ないよ」
(リリスめ、俺がガン見してるのを警戒してやがるな)
リリスが言ったあとに他の者は冷に意識するようになるが、隠すことはしなかった。
「あら、見たいなら触らしてあげるのに〜」
ガーゴイルだけは彼女達の中で違う反応を示した。
「ありがとうガーゴイル」
(ガーゴイルだけは違うのか。俺に対して拒絶反応が全くない)
「ガーゴイルがこんなにも人族に惚れこむとはな。魔人もわからないものだよ」
ガーゴイルの反応には同じ魔人のゴーレムにも意外であった。
長いことガーゴイルを知っているが、人族を好のむ傾向はなかった。
むしろ吸血するのが好きなのであり、人族は食料とみなしていたくらい。
それが僅かの間で真逆の女に変わってしまった。
自分もガーゴイルみたいに変わるのではと心配になっていた。
着替える作業は終わり、準備は整った。
近くの森に出発する。
ネイルはいつものようにお留守番となる。