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ゴーレムはグッタリとベッドに沈んでしまうと、ギャンが心配そうにする。
「ゴ、ゴ、ゴーレム様まで…………冷に、恐るべし人族、魔人様にする行いですか」
「…………うう〜〜、ギャン、冷には逆らうな、あなた達の敵う相手ではない」
「…………そのようですね」
ギャンは素直にゴーレムの言うことに頷く。
ギャンだけでなくシールドも同じで、
「はい、今晩の冷にされてはっきりしました。もはや人族の域を超えてるとしか思えません」
「そうだろ、やっと俺がわかってくれたのだな。俺に逆らうよりも、一緒に冒険してくれよな」
(結局は俺の考えに従ってくれればいいのだ。こんな仕方は変だけど、やり方はどうでもいい)
ボーガが小さな声で確かめるように、
「逆らうと……どうなるの?」
「毎日、今晩のようになるな。繰り返し繰り返しだよ。俺はそれではいいよ、君たちが望ならさ!」
(これはこれで楽しいからね)
「か、か、か、か勘弁してください……」
ボーガ達は冷から遠ざかり、体を手で隠した。
その時に冷の思いしない誤算が起こる。
部屋の扉が開いたからで、
「お邪魔します〜〜」
「……が、ガーゴイル、何でここに?」
「ごめんなさいギャン、私も…………混ぜてくださいな」
「…………は、は、はあ〜〜わわ〜!」
信じられない発言に驚きの声が響き渡る。
冷も同じく驚き、
「ち、ち、ち、ちょっとガーゴイル、混ぜて欲しくて来たのかい?」
(嘘だよな)
「はい……………………あれ、もしかして……………………終わり、でしたか?」
「終わりです〜〜」
「まだまだイケますよね〜」
「ガーゴイルひとりでして!」
ゴーレムは半分呆れる。
まさか魔人がここまで落ちるとはと。
「冷……………………どうします?」
全員が冷に注目する。
さすがに全員の視線は厳しい。
ゴクリと息をのむ。
冷の気持ちは決まっている。
「断るわけないでしょ! さぁおいでよ〜〜!」
(誤算と言えば誤算。けどこれはラッキーな誤算だよ。でも折れ大丈夫か、もう体力無いよな〜)
ガーゴイルは冷に近寄ると甘える形で抱きつく。
その日の夜はいつもよりも長くなった。
今まではアリエルやミーコの体力を使い尽くし、体力の最低値まで減らした。
その過程で彼女達のパラメータ、体力、防御力、魔力などは急激に上昇していたが、この日は別で、冷の方が極限まで減ってしまう。
そのおかげというわけで、冷もパラメータが上昇してしまう結果になる。
現状でも凄い、人族の域を超えたのだが、魔人とからみ合うことで、あり得ないレベルのアップされていた。
人族が魔人とからみ合うのも通常ないわけで、誰もしない。
しかし冷はその壁を突き抜ける。
魔人と人族のいとなみは、戦いに匹敵すると、それも長時間に渡ると、もはや笑うしかないレベルまでなる。
柳生 冷
性別 男
種族 人族
ユニークスキル スキルストレージ
職業 無職狂戦士バーサーカー
レベル 6100
体力 62000
攻撃力 62000
防御力 62000
魔力 62000
精神力 62000
素早さ 62000
剣術レベル 3500
柔術レベル 3500
槍術レベル 3500
弓術レベル 3500
斧術レベル 3500
と、異常な上昇率で数値は上がっていた。
これまた嬉しい誤算。
冷はそこらへんは感づいていない。
それよりも彼女の体のことで頭がいっぱい。
破裂しそうなくらいに。
強くなるのはいいこととすれば、冷の行動は間違いではない。
しかし度が過ぎる。
隣の部屋にいるリリスは、うるさくて中々寝付けなくなるのも頷ける。
さながら宿屋は冷のお祭りとなった。
翌日は朝はいつになく静かであった。
それもそのはずで、冷でさえ目が覚めない。
そうなると誰も起きず、起きて顔を合わせるのがお昼を過ぎていた。
「おはよーご主人様!」
「〜〜〜〜おはよーネイル、もう起きたのかい?」
(俺としたとこが朝になってるのに、起きてないとは。いつもならリリスを起こすのに。それだけ昨晩が強烈だったのだろう。不覚というのは大げさか。俺がここまで追い込まれたのは事実。危なく気絶させられてしまう瞬間もあった。反省する)
抱きついてきたネイルの胸に刺激されて、一発で目が覚める。
全員が起きたとして、冷を見る目は違っていた。
アリエル、ミーコ、リリスは以前にも増して変態的な視線を送る。
「冷……………………お前のせいで寝不足なんだよ……」
「あはははは、悪かったな。でもどんな状況でも寝れる精神力も必要があるんだよリリス」
(完全に言い訳ですけど)
「よく言うわ〜」
アリエルはもう失望している。
「アリエル、残念がることはないです、私は冷がいて幸せよ〜〜」
「ガーゴイルも変態かも、だって昨晩はゴーレムのいる部屋に行ったまま、あっ怒らないでね!」
「変態ですか私は……冷の前だけ変態でもいいかな」
ガーゴイルは怒るどころか認めるありさま。
「認めるのですね」
「魔人の品格が失われる」
「ゴーレムから品格とか言われても」
「確かに、ゴーレム様に品格は……あっ失礼しましたゴーレム様、それより今後は冷に従って魔物を倒すのを協力することでよろしいのですね」
「うん、その点ははっきりさせておこう、我々は冷に従って行動する。最初は仲間になっても、人族は敵、魔物は味方であった。しかし昨晩で気が変わった。約束する、一緒に行動すると」
ゴーレムはまだ不安であったアリエルを説得させようとした。
「昨晩は何があったのかは、言わなくていいです、知りたくもないし、でもこれで晴れて仲間と思っていいのね」
「よろしくお願いします」
ゴーレムとほぼ同時にギャン、シールド、ボーガも言った。
その言葉を聞いて冷はひと安心し、
「よし今日はみんなを訓練しようかな、準備をしておいてくれ」
(ゴーレムの件は安心して良さそうだな)