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「空き部屋ならありますので、お使いください」
「ありがとうございます」
部屋は空き部屋があり、冷の要求は通った。
(これで宿は心配なさそうだな。新たな部屋はゴーレムとギャン、ボーガ、シールドに割り当てよう。なんだかとても楽しみな予感がする。魔人を仲間にするなどよそもしなかっただけに、宿の確保などしていなかったからな)
いったんはいつもの部屋にゴーレム達を案内することにした。
ネイルが待っているからである。
「ただいま、ネイル!」
「おかえりなさいませ、主人様!!!!」
いつものように冷に抱きついてくるネイル。
「ネイルは相変わらずだね」
「寂しいのか分からないよ」
アリエルとミーコはネイルのテンションにまたかと苦笑いする。
「寂しかっただろ」
(ネイル。見れて安心した。何もなくて良かったよ)
「はい、あれ、見たことない女性がいますよ、アリエルさんに、ミーコさんに、リリスさんはいますが、他の女性は誰でしょうか?」
「紹介するよ、こちらはガーゴイル、あとゴーレム、ギャン、シールド、ボーガだよ。みんな俺の仲間になったからネイルとも仲間だ」
「こんにちはネイル、ガーゴイルです。冷とは彼女ってことでよろしね」
ガーゴイルはさりげなく彼女をアピール。
「どうもこちらこそ…………。あれ、いま、ガーゴイルと言いましたか?」
「言いましたが」
「ま、ま、魔人のガーゴイルとか?」
「魔人ですけどなにか」
「ええええっ……、魔人を仲間にですか!!!」
ネイルはあまりの衝撃に声を大にして言った。
「そうなんだよ、仲良くしてくれな」
「はぁ〜」
どうしていいか分からないまま返事をした。
「ネイル、私も魔人ですけどよろしくです」
ゴーレムも挨拶したら、
「ゴーレム…………あのゴーレム!! 結局は仲間にしたのですか!! もうわからないけどよろしくです」
ネイルはゴーレムに挨拶して自己紹介は終わった。
そこへ聞き慣れた声が、
「こんなに多くの仲間を作ったか。さすがは私の血をひいてるだけはある!」
すっ裸で現れたのはナギナタのバアちゃんであった。
ミーコがお湯で濡らして元の姿にしたのであった。
「なんだ、バアちゃんか! いきなり裸で現れたからびっくりしたぜ!」
(たまげたなバアちゃんかよ、急に来られると俺も驚くけどよ、しかも裸だし)
「ミーコがお湯をかけてくれたのさ」
「あの〜こちらの方は?」
ガーゴイルは不思議になり訊いた。
突然に部屋から現れたので無理もない。
「紹介するよ、この女の子は俺の先祖の方でバアちゃんて呼んでる。ナギナタにお湯をかけるとこうなっちまうんだ。びっくりしたかもしれないが危害はないから」
「あのナギナタからこんな可愛い女の子が…………。どういう仕組みかは知りませんが、凄いスキルか何かでしょう」
ガーゴイルだけでなくシールドも驚く。
魔法かなにかのスキルだと推察したが、理解できなかった。
「それにしてもこれだけ人数が増えたのだし、新たなメンバーに祝杯はどうでしょうか?」
ミーコが祝杯を思いつく。
「祝杯か、みんなはどうかな?」
(リリスの言うのもごもっともかな、今日だけは特別な日としよう。新たなメンバーとも仲良くなるいい機会だし、外食もいいかもな)
「賛成します!」
「空腹ですよ!」
「人族の料理か、興味あるな」
ボーガは興味津々であった。
「リリスは酒と食事があればご機嫌ですね」
「決してそんなことはない! 単純に祝杯として言ってるのだよアリエル!」
「わかりました、そうしておきます」
ネイルも連れて宿屋から出て外食とした。
お酒はガーゴイルもゴーレムも飲むと、遠りょなく他のメンバーも飲み始めた。
食事をしている最中に冷は夜になったのを待ち望んでいたのであった。
(お酒もはいって、みんな良い気分になってるようだな。祝杯なんて本当はどうでもいい余興。俺にとってはこれからが本当の意味での祝杯なんだよね。なにせ魔人も加わるのだから、興奮してきたよ)
「ごちそうさまです。人族の料理はイケるな」
「ボーガ、料理が好きなら毎日でも食べさせてやるよ」
「本当ですか、ちょっとうれしい!」
「これは美味いです」
「シールドも食べさせてやろう」
「ありがとう」
「魔族の口にも合う料理なのね」
「魔族の料理よりもあっさりしているけど美味しく食べれます」
「魔族の料理は、こってりしてるの?」
「もっと血生臭い感じです」
「はあ〜、私は遠りょしておくわ」
ミーコは話を聞いて拒否した。
「あら、今度作ってあげますから」
「いいですって!」
料理はとても美味しく食べると、宿屋に戻る。
「ゴーレム達は、こっちの別室で泊まるんだ」
「わかりました」
ゴーレム達は案内されて室内に。
部屋でくつろぎ時間を経過した。
酒がまわり眠くなってきていた。
ゴーレム達は別室にいき、冷はチャンスとばかりに行動に出る。
うとうとしていたので冷の行動に気がつくのが遅かったアリエルは、
「れ、れ、冷、今日は祝杯した日よ、それなのにアレはないわよね。でもその雰囲気はまさか……」
アリエルは祝杯した直後であるので油断していた。
絶対に油断してはいけなかったのに、つい気を許していたのである。
「アリエルくん、俺に祝杯など関係ない。俺の夜に祝杯なんてものは無関係なのだよ」
(まだ俺のことをわかっていないようだなアリエルよ。今日こそ思い知らせる必要があるな)
「気をつけてミーコ、リリス、ガーゴイル! 始める気よ!!」
「しまった……これを忘れていました」
「忘れていたのなら、不覚だよ」
(ミーコよ、いつも言ってるだろう。いつ敵が来るかわからないのだ。だから気を許してはダメだとな)
冷が不覚だと言ったらアリエルとミーコとリリスは慌てる様子に。
ネイルだけはお構いなしであるが。
それを見たガーゴイルは、なぜ慌てる様子なのかの理由がわからないでいた。
まるで恐れていて敵が襲ってきたかの様子である。
先程まで楽しく食事をしていたのに、どうしてしまったのかと。
対称的に冷は楽しみを感じている風に見える。
この差はなんだろう。
ガーゴイルが悩んでいると冷は行動に移った。