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 ガーゴイルの登録をゴリ押しするようにお願いした。

 ユズハとしては断るつもりであつたが、ガーゴイルと目が合うと、マズいなと思う。

 ゴーレム達を認めてなぜ私はダメなのと訴えてくる眼差し。

 とても耐えられる眼差しではなかった。

 魔人と視線を合わせたら当然の成り行きである。


「…………わ、わ、わかりました、ガーゴイルさんも登録します。こうなるとアリエルさん達のもとのメンバー三人に加えて今回の新たなメンバー四人が加わる形で、合計七人となりました。短期間でだいぶ増えましたね」


「これだけ増えると俺も把握するのが大変そうだよ。みんな個性があるからな」


(ケンカにならなければいいけど)


 冷の心配をよそに、ガーゴイルは嬉しがる。

 実は無理なのだろうと考えていたから。

 ユズハがきっぱりと断ったら仕方なく登録は諦める覚悟もあった。

 だがユズハが勝手にガーゴイルを怖がり登録を承諾したので、嬉しがるのは無理もなかった。


「やった〜〜〜わ〜! これで冷と一緒に冒険できます!」


「この男のどこがいいのだ、良いとこなど全くないぞ?」


 リリスはガーゴイルに冷のどこが好きなのかを尋ねた。

 突然に魔人が冷を好きになったとなれば理由が訊きたくなる。


「冷は…………その、私の胸を触った最初の人なの。それで好きになっちゃった」


 ガーゴイルは魔人らしくない恥ずかしい感じをいっぱいに言った。


「さ、触っただとっ! この男のしそうなことだ。確信犯だよ触ったのは」


「違う、違う、俺は偶然に触ったんだよ。戦いの最中にだな、確信犯で触るなんてないから」


(リリスはガーゴイルに何を教えようとしてるのだ。やめて欲しいものだ)


「本当ですリリス、戦いの最中でした。突然のことで私も何が起こったのかわかりませんでしたが、後に牢獄に入っていて思ったの。冷に触って欲しいと」


 ガーゴイルは正直にすべてを話した。

 その結果は、とてもかわいそうな女の子だなとなる。


「たったそれだけで好きに、それもまた触ってくれとは驚いた。魔人てのは人族とは違う生き物ですよ」


 ミーコが驚いて言うとアリエルも、


「魔人には魔人にしか理解できない領域がある。もちろん神族にもある。仲間になつたのなら、魔人を理解していかないといけない。たとえ考え方がおかしくても、そこは分かり合う必要がある」


「アリエル、たまには良い事を言うな。俺が言いたかったのはそれだよ。人族も魔人も神族もお互いにわかり合う必要があるのだよ。一緒に暮らしていくのだから」


「わかりました!」


 冷が全員に説明を終えると、全員一致で返事をした。

 

「…………魔人クラスに言いつけるところは、さすがは冷さんです……。恐れいりました」


「いえいえ、今日は挨拶に来たので、また来ます」


(登録も済んだので安心したが、ユズハさんは困惑してるようにみえるので心配。俺が余計なことしたかな)


「また来てください……」


 冷が挨拶しギルド店を出ていくと、ユズハはとても生きた心地がしなかった。

 魔人を二人も前にして説明した経験はなかったし、夢にも思わなかったので、登録してしまっていいのかなと。

 冷がガーゴイルとゴーレムを仲間のしたとギルド店内で知った冒険者は、噂話にした。

 魔人を仲間のした話は生まれて聞いたことないとなる。

 事実、魔人が人族に仲間入りしたなれば腰を抜かす事態である。

 人族が最も恐れている魔人が人族と友好的になるなど誰も考えもしなかったのだから。

 支配されることはあっても、一緒に仲良く歩く姿など想像するのも無理がある。





 王都では町以上の衝撃が走った。

 国王が魔人を自由にしたと。

 

「おい、国王様が魔人であるガーゴイルとゴーレムを自由にしたらしいぜ」


「ゴーレムを倒したのはあの冷。その冷にゴーレムを仲間に認めたと。どうなってんのかな。大丈夫なのかよ」


 不安な王都の人々。


「けど国王様がしたのは考えがあってのことだろう。しばらく様子をみてみるのでは」


「魔人はみんな冷と一緒に遠くに行ったから問題はないよ」


 不安はあるが国王を信じてる国民は魔人を封じる手があるのだろうと考えるに至った。

 しかし城にいる軍師コロナは慌ただしい。


「なんだって魔人を開放してしまったのですか。あれに預けるなんてどうなるか予測不可能ですよ!」


 国王に向かって焦りの表情で言いよる。


「冷はそんなバカな考えはないだろう。我が国に反乱する気もない。心配はない」


「なぜ、分かるのです、安心させておいていつか国を滅ぼしにくる計画があるのかもしれないです」


「冷にそんな計画があるようにはみえんよ。それに魔人を城に置いておくほうが危険もある。万が一暴れ出す可能性もあるし、他の魔人が襲ってくるかもだ。そしたらただでは済まないぞ」


 あくまでも冷には反乱はないと考える国王に対して軍師コロナは側近として危険性を訴える。


「国王、起きてからでは遅いです!」


 そこへビジャ姫が来て、


「冷は反乱する気はありません。私にはわかります。むしろゴーレムを倒したたのを評価すべきでしょう。今まで魔人には手を出さないようにしてきたわけです。それが本当に良かったのか、冷が魔人と戦うのは評価すべきです」


「ビジャ姫、その考えは魔人を舐めてます。ゴーレムだけではありませんよ魔人は。未だに行方もしれない魔人もおります。調査でも分からない謎の魔人も。それらの実力は計り知れません。恐らくはビジャ姫の想像を絶すると思いますよ。だから言ってるのです、現段階では魔人には手を出さないで、静観しているのが得策だと。わかってください」


「それこそ手遅れかもです。守っているだけでいいとは思えませんね。お父様、冷に魔人を託したのをありがとうございます」


「別にお前に言われたから託したわけではない。少しの間は様子見としよう、よいなコロナよ」


「…………はい」


 軍師コロナは仕方なく返事をした。

 これ以上言うと、国王に歯向かうことになると察したからである。

 逆にビジャ姫は冷の成果を喜んだ。

 両者は考え方に違いがあったが、ここにきて対立的な立場となっていた。

 お互いに引く気はなく、国王から離れていった。

 国王は両者が対立するのを気にしていた。

 ケンカとまではいかないが、良いことではない。

 更に魔術士ラインも軍師コロナに近い考えであり、どちらの意見も聞かなければならない立場。

 魔人と戦いに出るのが得策なのか、逆に静観するのかを選ぶのは難しい局面である。

 冷にも難はあって、魔人の強さは桁違い。

 冷が及ばない程の魔人が現れたら、と考えると危ない面もあり得る。

 そこで冷に魔人を預けるのも良いかなと思い至る。

 冷が仲間にしたいから認めてと言われて驚いたなんてものではなかったが、魔人を監視させるにはもってこいであると。

 王都に置くよりも冷の近くにいさせて、他の魔人がどう動くかを監視することにしたのだった。

 その方が安全な策だと思った。

 




 国王の狙いなど知らずに、冷は宿屋に向かっていた。

 宿屋の受け付けでエクセリアと再会して、


「あら、冷さんおかえりなさい。ご元気そうですね!」


「ええ、新しい仲間が加わったのです」


「本当ですね! えっと……八人いますし、室内にはネイルさんも居られますから全員で九人となります! いきなり増えた感じ! それもみんな美少女系とは、冷さんらしい……」


 エクセリアはこんなに増えた仲間の数に面を食らった。

 

「宿泊する部屋を増やす必要があるならお願いします。この美少女を野宿させるなんて、俺には絶対に出来ないから。外は危険があるる、どんな男に襲われるかもしれないしね」


(この人数だと同じ部屋は無理があるよな。とりあえず部屋は確保したい、楽しみもあるしな……)


 冷は彼女達の身の安全を訴えてはいるが、頭の中身は彼女達との楽しい時間を過ごすことであった。

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