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ゴーレムの名前を知らない冒険者はいない。
そして魔族のメンバーであるシールドとボーガとギャンもまた名が知れていた。
とても恐ろしい魔族であると。
魔族となってはいるが実質には下級魔人といってよかった。
単に国から下級魔人と指定されていなかっただけである。
「はじめまして、シールドといいます。今後は冷のパーティーメンバーの一員として頑張ります、ギルドのユズハさん、よろしく。ちなみに盾で守るのが得意かな」
「し、シールドさんですね、はい、こちらこそ、よろしくです。防御できるメンバーは貴重です」
シールドが挨拶をするとユズハは声を震わせつつ挨拶をお返しした。
「続きまして、ボーガと呼んでくれていい、ギルドとかよくわからない」
「は、はい、ギルドはクエストを紹介してあげられます。どしどしクエストをこなしてください」
ボーガにクエストを説明するが、魔物を倒すとか説明は省いた。
「クエストとはなんだい」
「えっと……魔物を倒すとかですが…………」
「なにっ、魔物を倒せと、それでは魔族に魔物を倒せと、人族に人族を倒せるのかな」
「ギルドは基本的には人族を守るものですから、人族を倒すクエストは存在しません」
「なるほど」
ボーガは納得したのか、頷く。
「ギャンと呼んで。スピアが得意の武器。攻撃的なのが好き」
「スピアですか、とても長いですけど、使えますか」
「もちろんだ、ホレっ!!!!」
「うわぁわ〜わわ〜」
ギャンは自慢しようとして得意のスピアを振り回して、あげくの果てには、テーブルを破壊してしまった。
ギャンからすれば、少しも脅かすつもりはなかったのに、冒険者からしたらとても危ない場面となる。
テーブルにいた冒険者は部屋の角に逃げてしまった。
「ダメだろ〜ギャン! 人々を怖がらせない約束を忘れたか!」
(ギャンは気をつけないと危険ですね)
「すまん、すまん、つい、脅かしてしまったみたい」
スピアをしまい、反省をする。
ユズハも凍りついていた。
「す、す、スピアが凄いのはよくわかりました、クエストも問題ありません」
三人が挨拶を終えると冷はメンバーの登録をお願いする。
「あの〜ユズハさん、ゴーレムとこの三人を冒険者登録させたいのですよ、可能でしょうか?」
(魔人とか魔族とか、人族ではないから登録も難しいかもな。これから俺の仲間として活動するのにクエスト受けれないとふびん。おおめにみて欲しい)
「…………。はっきり申しますが、私の経験上、魔人達をギルド登録した話は聞いたことありません。過去にもないのではと思います。そもそもギルドは魔人を倒すのを最終的な目的においてるわけですから、その魔人を登録など想定してない問題です」
「そこを何とかならないかな。ユズハさんにしか、お願いできないんでね」
(難しい顔をしてるから無理かな)
「う〜ん、お願いされても、無理なものは無理と言わざるを……」
「登録なんて紙に書いてしまえばいいのだろう〜に!!!」
「や、や、や、やめろ、スピアを出すなっ!」
登録を受け付けしないユズハにキレたギャンがまたもスピアを振り回してしまう。
(ヤバいなこのスピアは、ハンパなくヤバいだろ)
「わ、わ、わ、わかりました、登録します、しますからスピアを振り回すのはお止めになって」
「わかればいいのだよ」
「ゴーレム、ギャンは暴れやすいのかな」
リリスがゴーレムに確認してみると、
「スピアを振り回すのは、彼女の趣味だな」
「趣味ならば、頻繁に出るな」
リリスはゴーレムの説明で納得した。
「そうなる」
「そうなるじゃないだろ、ゴーレムが監視するのだぞ、わかったな!」
その説明では納得しない冷は、ゴーレムにギャンの監視を言いつける。
(仲間が増えたら忙しくなってきたな。当初の俺の理想とはだいぶ違うような。長く続けられるようにしたいのだが)
「ギャン、町の人々を脅かすのは良くない。わかるよな?」
「わかります。つい、この女性がわからずやなので振り回してしまっただけですから」
「君が、わからずやなのだけどね」
アリエルが新しい仲間ギャンに言った。
「…………。では、登録は終了しました。ゴーレムさん、シールドさん、ボーガさん、ギャンさん、の手続きをしましたから、今後は冷さんと一緒に行動してください。本来なら新しい登録者には失敗のないように危険さをご説明するのですが…………説明不要ですよね、この方々には」
「たぶん、要らないと思うから、省いていいです。そこら辺の魔物には負けないはずだし、死ぬことはない。むしろ魔物の方が逃げるかもしれないし」
(ゴーレムクラスになると魔物だって危険なのを感じることもあるだろう。魔物にも魔力を感じることはできるだろうから)
「魔力といっても色々いるから、どのレベルの魔物にもよるよ」
ゴーレムは困って冷に訊く。
「現在のところは考えなくていい。俺が考えておく」
ゴーレム達の登録も終わり、ギルドも落ち着きを取り戻すと、ボーガが気になっていたことを言う。
「あの〜冷、彼女はどうするの、登録させますか?」
ボーガはまだ紹介していないガーゴイルを気にしていた。
「私も登録したいです。冷のは一緒にいたいから」
「ああ、そうだったな、ユズハさんにお願いしよう」
(ガーゴイルも登録したい。ゴーレムが登録できた、同じ魔人なのだから、そこは問題ないだろう)
ユズハはまだ知らない顔の女性に気がつく。
「もうひとり新しい仲間の女性がいたのですね、どうぞ登録しますからお名前を?」
「はい、名前はガーゴイル、ゴーレムとは昔からの知り合いだ」
ごく普通に名前を言って自己紹介を終えた。
その瞬間にいつも通りにやる気に満ちたギルド店内は静まり返る。
ユズハも例外ではない。
「…………。いま、なんとおっしゃいましたか、どうも私の耳にはガーゴイルとか、聞こえてしまったので?」
「ガーゴイルであってますよ。耳はおかしくない。他にガーゴイルとなのる者などいないでしょ」
僅かの間、時間が止まった。
そして再び時間が動くとユズハは絶叫した。
「…………。えええっ!!!! ガーゴイルってあの魔人のですか! いやいやあり得ないですよね、ゴーレムさんもいるけど、二人も魔人が揃うなんて考えられません!」
ユズハは首を左右に振って話す。
周辺の冒険者もあっけにとられた。
「揃ったのです。今日から冷の彼女としてね。国王も認めてくれました。彼女といったら驚いていたけど。心配しないでいいから登録お願いします」
「大丈夫ですか冷さん、ガーゴイルは魔人として名がある。とても登録は無理な話ですよ」
「うん〜、俺がいるから甘くみてもらえないかな。ガーゴイルもパーティーメンバーに加わると、とても魅力的です。ギルドの役に立つことを約束します」
ユズハは不安な気持ちを冷に表す。
冷は逆に魔人との戦いに必要があるとした。
(かなり無理なお願いの感じします。周りの冒険者も相当にビビってますし。ガーゴイルを認めてもらわないと俺は役に立たないとなってしまう。絶対にひけないな)