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 国王の言う内容は皆を納得させる。

 不安な空気が立ち込めていたから、国王の発言が注目されていたわけで、はっきりとした牢獄行きの命令に安心感で満たされていく。

 当然なわけで、誰も国王の命令に対して反論するバカ者などいない。

 しかし冷は習わしや風習や、伝統など関係なかった。

 自分が思ったら、そのまま言ってやろうというスタンスである。


(何か言いにくい雰囲気になってきてるが、俺は言わせてもらうよ。例え国王であってもね。ガーゴイルとゴーレム達を簡単に牢獄になど行かせない。国王が決めても、まだ変えられる可能性はあるはずだ)


「国王様、ガーゴイルとゴーレム達を牢獄に投獄する件に関して、俺の考えを聞いてもらいたいのです」


「冷の考えとは…………」


「おのれ冷よ、国王様に意見を言うとは無礼者! 身分を考えて言え!」


 軍師コロナが冷の発言と行き過ぎた態度に注意する。

 コロナの注意は当然と言える。

 常識的に国王に意見を言える者はいないからで、ビジャ姫ですら許されるわけではない。

 それを言ってしまったので、周囲の兵士も冷や汗をかく。


「すみません。出過ぎた態度かも知れませんが、言わせてください」


(軍師コロナってのは、色々とうるせーな。俺のこと嫌いだな)


「……構わん、言ってみなさい。ゴーレムを倒した功績は認めないわけにはいかない」


 国王は冷に感謝を感じていたので、少しくらいの言い分は認めようとした。


「ありがとうございます。そしたらまずガーゴイルは俺の彼女になりましたと報告します。ガーゴイルも認めていますから。彼女ですので離れて暮すのは変ですと思い、俺と一緒に暮らしたいです」


 冷が発言し終わると、室内の空気は静まり返る。


(あれ、なんか静かになってしまったな、ヤバい空気になってます。言ってはいけなかったかな。国王も目が笑ってませんし)


「やはりお前は国王をバカにしておる!!!!」


 軍師コロナは怒鳴りつける。


「ガーゴイルと一緒に暮らすと申すか……。それは少し出過ぎた発言ではないかな。魔人は人族にとって災いでしたない。牢獄から出すのも本来なら危険なのだ。それをゴーレムの居場所を知ってるからとその条件で出した。それに彼女とはどう言う意味だね、全く理解できないが……ガーゴイルよ」


 国王はガーゴイルに直接に説明させようとした。 


「意味ですか、そのままの意味です。冷の彼女になりました。好きになってしまったのです」


「なんだと〜」


 国王はガーゴイルの発言に、あっけにとられる。


「ええ〜〜〜〜、冷、本当なの?」


 アリエルも魔人を彼女にする人族など見たこともなかった。


「俺は問題ないからな」


「魔人を彼女にするなんて、とんだバカ者です!」


 軍師コロナは顔を真っ赤にして国王に言う。


「お互いに認めているから、国王も認めて欲しいんだ。もし認めてくれないとガーゴイルの機嫌が悪くなるのもある。だって会えなくなればピリピリした気持ちになるでしょ。そしたら牢獄内で暴れる。どうです俺と暮すの方が安全ですけど?」


(この説明でわかってもらえるかな)


「彼女だから牢獄から出せと言うか。そしてそれが一番安全だと」


 さすがに国王も即決で答えられる話ではなかった。

 そこでビジャ姫が国王に、


「お父様、ここは冷の考えが正しいと思います。ガーゴイルがもし裏切るならここには帰ってないはず。ここに来たのなら裏切らずに信頼できる証と言えます。冷に監視させておくのが一番安全となるのは理にかなってます」


「ぬぬぬ、確かに言えてる。ガーゴイルを監視し続けるのは危険もある。わかった、ガーゴイルに関しては、牢獄から開放しよう。その代わり絶対に国には反乱しないと約束するのが条件だが、出来るかな?」


「反乱しません。人族側に完全に協力します、冷と暮らせるなら」


 ガーゴイルは冷の腕に抱きつくと、大きな胸が腕に当たる。


「では、ガーゴイルの件は終わりにする。これでよいな」


「いいえ、まだあります。ガーゴイルの件に続いてゴーレムの件もあるのです。聞いてください?」


 冷は失礼など気にせずに話した。

 ナニは冷の無礼さにはあきれてしまう。


「冷ったら、どこまで自由な性格してるのかしら。ガーゴイルと同棲生活なんて……」


「僕にはもう理解できる範囲を超えていますよ」


 ナーべマルは困り果てていた。


「あいつは変態なんじやねえか。魔人の女を好きになるなんてよ、考えらんねえぜ!」


 ラジッチは頭を抱えてつぶやくまだあるのかと。


「お父様、認めてくれてありがとうございます」


 ビジャ姫は父にお礼をした。

 姫は冷に感謝していて、冷が必ずこの国に必要な人材となると確信していた。


「…………もう一つの条件とは?」


「はい、ゴーレムも一緒に暮らしたいのです。ゴーレムの仲間の魔族は、シールドとボーガとギャンですが、とても優秀で強くなれる素質があります。俺が鍛えてやろう思っていて、そうすれば国王も喜ぶかと。これから魔人や魔王とも戦う可能性があるのなら、戦力アップは必要があるでしょう。彼女ら三人は必要な人材と変えてみせますよ俺が。それなのでシールド、ボーガ、ギャンは牢獄に入れずに俺と暮すようにして、ただし三人はゴーレムを尊敬していてゴーレムの言うことは聞きますから、ゴーレムも一緒に暮らすことになりますが、これでどうです?」


(要はゴーレムとも三人ともハーレムしたいだけなんですけど、それは口がさけても言えませんから)


 またも室内の空気は冷たくなる。

 先程よりも冷たくなり凍るようであった。


「お前は国王をなんだと思っておるのだ! 不謹慎もいい加減にしろ!」


 軍師コロナが剣を抜きそうになった。

 さすがにヤバいとなりラジッチがコロナを静止させる。

 ラジッチが止めなければ危なかった。

 冷と軍師コロナとのバトルが開始されていたであろう。

 兵士は軍師コロナの強さを知ってるから冷や汗ものである。


「ゴーレム達を牢獄に入れるなと申すか…………。魔族のくせにと言ったらなんだが、彼女達にはその意志があるのか?」


「えっと……いま、初めて聞きましたが……」


「私もです。冷に教えられる話は知りません」


 シールドとボーガは実際に知らなかった。

 それは当然で冷が勝手に決めた話だからである。

 彼女達にはこの場で説明して納得させようとしていた。


「どうなっておる、彼女達は知らないようだぞ」


「ゴーレムよ、君から説得してくれ。俺の道場の生徒にさせると。君が言えば彼女達はついてくると思う。頼むよ」


(ゴーレムならわかっえもらえと思う)


「シールドとボーガ、これは私からの頼みです。冷と暮らすのです。そして冷から訓練を受けなさい。きっと今よりも強くなれるはず。私も強くなれるように一緒に暮らしますから」


「ゴーレム様が暮らしましようと言うのなら、拒絶はしません。ぜひとも一緒に暮らしたいです」


 シールドはゴーレムとともに居たいので肯定した。

 ずっと一緒に居たからこれからも暮らせるのが喜びとなる。

 牢獄行きだとばかり思っていて、嬉しくなる。


「ゴーレム様とまた暮らせるのなら、冷とも暮らせます。離れるのは嫌ですから」


 ボーガも共同生活を望んだ。

 深刻な顔をしていたのから、シールドと嬉しそうに笑顔になる。

 すると国王は悩みだした。

 ガーゴイルだけでなく、ゴーレムまでも国内の町で暮らすのを許すのはどうなのかと。

 国王として失格ではとも考える。

 

「もし冷と暮らすとしよう、町の人はどうする、魔族や魔人を見て安静な暮らしが保証されるかな。とても不安な毎日とならないか?」


「俺が居れば安全です。絶対に町に危害はさせませんから。ちゃんと教育します。必ず国に必要な戦力に育ててみせます」


 ろくに学校にも馴染めなかった冷から教育すると言うのもへんではあるが。


(シールドとボーガはオッケーしてくれたみたいなので、俺としては受け入れる用意はある)


 国王が苦渋の顔になるのを見てビジャ姫が、


「お父様、現在の魔人の、上級魔人の動きをご存知かと。魔王を復活させるとの噂もあります。そうなると大変に危険な状態となります。とても国にいる戦力では戦えきれません。強力な戦力になるのなら冷に任せるのも必要かと思います」


「待ってくださいビジャ姫……。ガーゴイルといい、ゴーレムも放つと余りにも危険ですのをお分かりですか?」


「軍師コロナ、それをわかった上でコントロールするのがあなたの役目でしょう」


「無理な役目ですね、魔人をコントロールなど誰にも出来ますまい、冷がコントロール不能になったら町に多大な犠牲者が出ますぞ」


「冷は魔人をコントロール出来ると思います」


「思うだけでは、国は動かせません」


 ビジャ姫が肯定的なのに対して軍師コロナは逆に否定的な考えがはっきりとなり意見が別れる。


 ビジャ姫が魔王の話を出すと国王とその他の者も同じように顔から精力が消えた。

 明らかに恐怖感が支配した世界を想像して絶望した顔色であった。

 歴史的にも人族は滅びかかっている。

 今回も殆どの人族が死ぬことになり得るわけで、国王は冷にかなりの期待はしていて、むしろせざるを得ないところまできている。

 現在は上級魔人の動きは静かであるなら、逆に怖い。

 影で何か企んでいるものと推察できる。

 ただし魔人側には人族に対して恐れもあって、歴史的になぜか勇者が現れる。

 魔人をも超える能力で制されてきた。

 その経緯があって、簡単には人族に手を出すのをためらっている。

 人族はその度に絶滅寸前まで減らされていたので、伝説として伝えられており、魔人と聞いたら凍りつく程に怖がる。

 ビジャ姫の進言に国王はまたも悩んでしまった。

 どちらかを選択しなければならない立場なのが辛い。

 国王は少し時間を置いて決断した。

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