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 ゴーレムは水の壁に阻まれて悔しさをにじませる。


「私のライトブラストが防がれるなんてあり得ないわ。水の属性っぽいけど、そうでしょう」


「当たりです。水属性スキルもつかえるのさ」


「ちょっと待て、あなたね、おかしいでしょ。だって、今のは水属性として、ライトブラスト、雷属性も使った、さらに烈火拳は火属性のはず。そうなると変でしょう。三つも属性を使えるなんて、魔人の私ですら二つの属性しか使えないのに。普通なら一つの属性が原則。まれに優れた魔力の適正を持つ者だけが二つ持てる。三つは絶対におかしい」


 冷の属性の数が多すぎると不満を漏らした。

 ゴーレムの言っている話は間違っていなくて、二つ持つ者でさえレアモノと言われるのが通説。

 それを簡単に三つ使ってしまったのであるから、ゴーレムが驚いてしまうのも無理はなかった。

 それは冷のスキルストレージのなせる技である。

 それに加えて冷が蓄積してきた武術の基礎が高いのもあった。

 

「言っておくけどゴーレムさん、俺の持つ属性は三つとは限らないぜ、もしかしてもっとあるかもよ!」


(実はあるんだよな。魔人より多いてことは魔人を超えた天才なのかもな)


「嘘でしょ、それ以上の適正なんて、たかが人族の持てる能力を超えてる。だけど防御だけなら勝てませんことよ。攻撃力なら私が上。戦いに勝つには攻めないと勝てないのよ、ライトブラスト!!」


 冷の持つ能力は認めるが、攻撃なら負けないとなり、ライトブラストを放った。

 それも一つではなく、両手から放ったのである。


「今度は二つもかよ、危ねえ攻撃してくるな!」


(ダブルのライトブラストですか。ちょっと危ない感じしますから、ここは壁ではなく回避します)


 冷は後方に回避した。

 ライトブラストは丘に激突すると丘全体を破壊してしまい、半分以上崩れてしまう。

 さらにライトブラストを連続して放った。

 丘は殆ど崩れてしまい、下にいた魔物は生き埋めになっていく。

 

「逃げるのか冷?」


「まだそんな魔力があったのかよ」


 逃げる冷を追いかけつつ、ライトブラストを連発した。

 当たりはライトブラストで爆裂していく。

 地面にはライトブラストで壊された穴が無数に生まれた。

 これをみてもライトブラストの破壊力がわかる。

 冷は逃げているばかりではなく、攻める方法を考えていた。

 

(こうなったら俺も攻撃的にいかないとマズいよな。考えてみたら俺もグランドシェイカーは使えるのだ。ゴーレムに披露してやろう)


「グランドシェイカーならどうだい!」


「なんだと?」


 冷は地面に手をつき、グランドシェイカーを使ってみる。

 もちろんゴーレムのおはこである。

 それを知っていて使ったのだった。

 揺れは凄まじい勢いで周辺に伝わった。

 地割れが数か所で怒ると、魔物達を飲み込んでしまう。

 深い溝がいくつも出来る程に強力であるので、ゴーレムはたじろいでいた。


「なんだ、この凄まじい揺れは。私のグランドシェイカーよりも揺れが大きい。グランドシェイカーは土属性のはず、土属性もつかえるのか」


「オール属性が使えるんだよ俺は。多分ね」


(言っておくけど、あくまでも俺の予想だけど)


 地割れは更に深く、大きくなっていき、とてもゴーレムは耐えられるわけもなくなった。

 ゴーレムは立っていられなくなり、膝をついてしまう。

 グランドシェイカーが効果があったが、これでゴーレムを倒せるわけではないのは冷も承知している。

 

((冷よ、ゴーレムは弱気になっておるぞ、攻撃するなら今だ!))


(わかってるよバアちゃん。俺もそう思っていたところさ!)


 バアちゃんからのアドバイスで冷は一気に勝負をつけにかかる。

 

(ここは俺にとったら最高のチャンスだろう。ここを逃したら俺に勝ち目はないとみた。勝機は戦いのなかで、そうあるものじゃない。勝機を逃したら負ける。オメガラウンドで!)


 冷は魔力を高めると、オメガラウンドで巨大な岩をいくつも作り出した。

 

「なんだその岩は……まさかそれ全部を打ってくるとか……」


「全部あげるよゴーレム!」


(ありがたくもらってください!)


 岩の数は更に膨れ上がり、それら全てを周辺地域に突き落とした。

 もちろんゴーレムのいる範囲も含めて。

 ゴーレムは頭上から降る岩に防御するが、あまりの大量な数に防御しきれない。


「うわぁ〜〜〜」


「これが俺のスキル、オメガラウンドだよ」


(勝負あつたか、さすがに勝っただろ。魔人でも痛いのは一緒だろうし。ちょっとやり過ぎたくらいかな)


 ゴーレムは膨大な岩の下敷きになっていた。

 周辺は崩れた岩や、地割れした地面になり、戦う前とはうってかわる風景になっていた。

 冷が様子を見ていると、岩が動いて崩れた。

 

(ゴーレムか……まさかまるで効いてなかったらどうするかな。起きてきて、笑っていたら、マジで俺はヤバイよ。俺の攻撃が無駄になるし、勝つ気がしなくなる)


 岩から顔を出したのはゴーレムであった。

 だが姿は知っているゴーレムではなく、美少女の姿をしていた。


「あれれ、女の子だな……。まさかゴーレムの正体かな」


(とても可愛い美少女ではないか。でも待てよ、うかつに近づくと危険な感じする。突然に攻撃されたら終わりだ。少し様子を見ていよう)


 いつもの冷なら可愛い美少女をみつけたら喜んでしまうが、この時ばかりは近づくことなく、見ている。

 

「……………………私の負けです冷。とても強いな、完全に負けました。これ以上戦うだけの力と魔力はもうありません…………」


「そうか、じゃあ近づいても大丈夫だよな。リリスを返して欲しい…………とか言って、急に攻撃するのは無しだぞ」


(まだ信用はならねえ。用心に越したことはない)


「いいえ、本当に負けました。リリスはお返しします……」


「おい! 大丈夫か!」


 返すと言ったとたんにゴーレムは、崩れ落ちるようにして倒れてしまった。

 

(あれ、大丈夫かな。これは演技ではなさそうだ。直ぐに助けなきゃな)


 冷は駆けつけて倒れたゴーレムを抱き上げた。


「大丈夫です。それよりもリリスの所に案内します」


「頼む」


 ゴーレムは冷に抱きかかえられてリリスを案内する。

 ゴーレムの心配をしているようにみえたが実際の冷の頭の中はというと。


(近くでみると可愛いなぁ。それに胸も大きくていいぞ。魔人はみんな可愛いのは本当かもしれない)


 ゴーレムが怪我をしていながら冷に指示して行った先にはリリスが待っていた。

 リリスは冷の姿をみると笑顔で走ってきた。


「冷〜〜、遅いぞ!」


「悪かったよ、心配だっただろ。もう大丈夫だからな」


「あれ、この人は?」


「ゴーレムです。鎧を脱ぎましたから、わからないですね。私は冷に負けました。なのでリリスを返すことで話はつきました」


「そういうわけで、俺と一緒に帰ろうか。みんなも心配しているぜ」


(リリスの顔を見れてホッとしたよ。リリスは俺の仲間だから、絶対に離れるのは嫌だね)


「ええ! 本当に勝ったのお前?」


 ゴーレムに勝ったと聞いてびっくりしたリリス。


「勝ったよ。俺が負けるわけないだろう!」


「相手は魔人だぞ。勝てると思うかよ。それでどうするんだ、私とお前は帰るとして、ゴーレムは?」


「うーん、考えたんだけど、ゴーレムに任せようと思う。俺としてはリリスが手に戻ればオッケーだから」


(ゴーレムはここに残っていて構わないさ、王都の国王などは何て言うか。まぁ勝ったよと、軽く会ったら言っておこう)


 軽く考える冷であるが、自分がしたことがどれだけ凄いことなのか、まるでわかっていなかった。

 中級魔人のゴーレムを倒したとなれば、一大事である。

 簡単に聞か流せる話ではない。

 国王が知ったら驚いてしまうくらいにしか考えていない冷とは大違い。

 

「リリス……悪かった、私のわがままで淫魔を利用としていたことを謝る。魔族が支配する世界を作ろうと思ったんだ。あなたなら出来ると。無理矢理であったから、怒っているだろう私のことを」


「別に怒ってはいないな。面倒くさいことに巻き込まれたくらいさ。冷なら必ず来てくれるとわかっていたし、心配はなかった。また戻ると冷の執ようなまでの厳しい訓練が始まるから、むしろここにいた方が楽な面もあるんだよ」


 実はリリスは訓練しなくていいのも楽でいいなぁと思い始めていたのだった。

 それを聞いた冷は、


「リリス君…………明日からは休んだ分を猛特訓してあげますからね」


(楽などさせないからな。訓練は厳しい方がいいのだ。わからせてあげよう)


「やめろ、やめろ、やっぱりここに残るぞ、私は帰らないぞ!」


「ダメ、ダメ、連れて帰る!」


 嫌がるリリスの手を持って帰る準備をした。

 

「やめろ〜」


「そんなに訓練て嫌がるほど、キツいのかしら?」


 ゴーレムは不思議そうに尋ねる。


「厳しいなんてもんじゃない、コイツは鬼のように厳しいし、エロい変態なんだよ!!」


「な、なんですかそれ」


「やめろ、リリス、それ以上言うな!」


 ゴーレムに冷の正体をバラすリリス。

 冷は慌てて止めるがゴーレムはすでに冷を疑惑の目でみていた。

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