表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/351

130

130



 落胆していたその矢先に馬車が現れた。


「あれは馬車ですね、冷の話の通りならナニが乗ってるはずです」


 ナニが来るのか半信半疑である。


「お〜い、ナーべマル!」


 ナーべマルを呼ぶ声。


「ナニ! 生きてたか良かった」


「ナーべマルも生きていて良かったよ。あれ……なんでラジッチまで居るの?」


 ナニはラジッチがいるとは思ってもいなくて、目がキョトンとしてしまう。

 呼んだ覚えはなかった。


「説明するの面倒だからナーべマルに聞いてくれ」


 少しふてくされた言い方。


「助けにきたのに、冷に助けられたのでスネてるみたい」


「うるさいぜ!」


 せっかく来たのに冷に良いとこを取られたのは事実。

 むしょうに腹が立ってる。


「あはは、それと冷はどこかな?」


 先に到着したのに、どこにも姿がない。


「冷ならば王都に行きました。いや、僕から見ても行ったというよりも飛んだと言ったらいいかな」


「ああ、アレね。空飛んで王都に行ったわけか。馬車よりも圧倒的に速いからいいかも」


 ナーべマルよりも先に飛ぶスキルを知ってるので、納得した様子となる。


「ナニは知ってたのね。冷が王都に行ったら、僕達の立場はなくなる」


「大丈夫かも。馬車にはシャーロイ姉妹もいるし、ここにはルテリもいる。あと魔族がひとり。全員を国王に会わせれば、期待されてる以上の成果となるわ」


「国王に反乱した者だから価値はあるわね。冷を追いかけて王都に向かいましょう。ラジッチも行く?」


「行きますよ。他に行くとこないし」


 ナーべマルとナニ、ラジッチは出発の準備に取り掛かる。

 アリエルとミーコの治療も騎士団に行わせる。

 

「あと、アリエルとミーコの治療は馬車内で行わせる。王都に着く頃には、回復してきていると思う」


「かなりやられたようね。ゴーレムと戦って生きてる方が珍しいと思えばいい。幸運の持ち主なのかもよアリエルとミーコは」


「……ありがとうございます、冷が来てくれたのね」


「冷氏は負けません……」


 アリエルとミーコが苦しそうにしてナーべマルにお礼する。


「意識はあるみたいだ、君たちの治療は僕らがします、これは冷から頼まれた件なので、しっかりと回復してください」


「ありがとう、やはり魔族となると強いです、とても勝てる相手ではなかった。まだまだレベルが足りないようです」


「冷と冒険してれば、レベル上げはついてくるでしょう」


 アリエルは残念がる。

 魔族であるギャンやシールド達に歯が立たなかったのは事実。

 しんしに受け止めるのであって、逆にナーべマルはアリエル達に巨大な能力の片りんを感じる。

 何だろうかこの子達の能力は。

 一般的な冒険者とは明らかに異質な能力。

 もしかして、これが女神、勇者の素質なのか。

 感じたこともなければ、見たこともない力の持ち主。

 今はまだ荒削りで、ひ弱な部分もある。

 それもどこかで突発的に開花しそうな予感があった。

 ナーべマルは直感であるが、末恐ろしいとなる。

 馬車はルテリとギャン、ルクエとルビカの姉妹もいて、回復中のアリエルとミーコも乗せて出発した。

 

「ルテリ姉様っ!」


「ルクエ!」


「お姉っ!」


「ルビカ! 二人とも無事でなにより」


 ルテリは妹の二人と馬車内で再会し安どした。

 しかし妹達はガッカリする。


「まさか、姉様が騎士団などに縛られて、悔しいでございます」


「それも全てあの冷のしわざ。作戦は半分成功し、半分は失敗だよ」


「どういうことなのお姉、全部失敗したもん」


 三女ルビカは冷が完全に勝ったと思っていた。

 なぜなら長女がここにいるのは、ゴーレムも負けて、長女も負けて、国王にダメージを与える作戦が失敗したと思ったのだった。


「いいえ、国王側のナーべマルとナニは無事であり、ラジッチまでいて無事である。それとアリエルとミーコの冷の仲間も同じく。治療すれば回復するだろう。だけどゴーレムは目的であったリリスを手に入れるのに成功。つまり我々だけ失敗したわけ」


「うう〜、お姉が負けるなんて、考えられない。どうしよう、国王のいる王都に行けば、私達はどうなるもん?」


 三女のルビカは悲しい顔で長女に言う。


「免れないだろうよ。申し訳ない、結果は国王に反乱した三姉妹となったから、牢獄か死罪だろうよ」


「ぬぬぬ〜憎い、冷が憎いもん〜」


「落ち着けルビカ、もうどうにもならない。いくら暴れても無駄に帰すさ」


「シャーロイ家そのものも危ないですよね。きっと国王はウチの一族ごと潰しに来る。潰せる理由があるわけだし、姉様のせいだけではありませんでございます」


「ゴーレムはリリスを手にした。そのまま逃亡した。ゴーレムとシャーロイ家は協力的な立場であるはずだが、初めからシャーロイ家のことなど眼中になかったかもな。私の考えが甘かったの。魔人を信じ過ぎたの」


 この様な最悪とも言える結果になって初めてルテリは、後悔の念を感じてしまう。

 妹や父母の為をと思位したことが、裏目に出た。

 最悪なのは一族ごとなくなることである。

 長い事続いた名家の名に傷がつくわけで、言葉にならない苦しみに満たされる。


「それで冷はどこでございますか?」


「話では冷はゴーレムを追いかけるようよ。リリスを本気で取り戻すつまりなの。ナーべマルやラジッチは止めなかったのは、勝てると思っていたからなのか、あきらめてるのか判別はつかなかった。とても勝てるとは考えられないわね。どんなに冷が強くて人外な強さでも、魔人ゴーレムは別格と言えます。魔人ゴーレムと組むのは失敗でした。組むべき相手ではなかった」


「姉様……」


「お姉……」


 馬車はシャーロイ三姉妹を乗せて走り、彼女達は後悔してやまなかった。

 冷が話で聞いていて、予想していたよりも遥かに強かったのが原因となる。

 



 馬車が走るよりも桁違いに速く王都に向かうのは冷。

 数倍かそれ以上の速度で飛行していた。

 

(慣れてくると更に速度が増したな。これならばあっという間に到着も可能だ。まるで飛行機で移動している感覚だよ。風景が凄まじい変わりようである)


 そして教えられた通りに飛行して王都の付近にまで到着した。

 普通なら王都にある城壁の門で兵士がおり検問されるのであるが、冷は面倒に思えた。


(門をいちいち通るのは面倒だよな。それなら城壁の上を飛行しちゃえばいいよな。たぶんバレないだろうよ。一瞬のことだし) 


 普通なら考えられないが王都の城壁を飛行して通り抜けてしまった。


「おい、今何か通り抜けて行かなったかい?」


「気のせいだろ、誰が通るんだよ俺達の上を。勘違いだろ」


「そんだよな、あり得ないもんな。鳥だったんだな」


 もちろん兵士はあまりの速度に冷の存在に気づいていない。

 鳥か何かと錯覚してしまう。

 冷は城の中庭に無事に着陸した。

 中庭には兵士は誰もおらず、そのまま城の中に入るのに成功した。

 

(城は広いから迷子になるよな。国王に会えるのが目的だ。そうすればサイクロプスとガーゴイルに会わせてもらえるはずだ)


 冷は内部を当てずっぽうで歩いてみる。

 しかし予想していた通りに国王のいる間にはたどり着けない。

 当然といえば当然であり、城は外部から来ても国王の間にはたどり着けないように、設計するのが常識である。

 直ぐに到着したら終わりだからで、冷は結果的に迷子になった。


(思ったとおりに迷子になったぞ。これは困ったな。困ったときには話しかけるのが一番だよな。兵士に訊いてみよう)


 冷は考えていてもたどり着けないのがわかり兵士に話しかけてみた。


「あの〜すみません。国王に会いたいのですが?」


「はあ〜!! あなた誰ですか。許可は取りましたか!」


 兵士は冷の姿を知らないし、不審な人物と断定した。


「いいえ、許可は取ってません。でも国王に冷ですと言えば、通じるはずです、お願いします」


(国王には会ったことがあるのだし、名前を言えばわかると思う)


「ななななっ、冷さんでしたか、どうしてここに、これは大変です、直ぐに国王に知らせます!」


「どうもです」


 兵士は敵か誰かわからずに緊張していた。

 そこへ冷と名のられて、驚いてしまった。

 冷の名前は知らぬ兵士はいない。

 即座に国王に知らせに行き、冷はその場で待つことにした。

 その兵士の慌てようから他の兵士は冷に注目する。

 冷だと判明すると、城の中にいる兵士が冷の周りに集まる。

 城は冷が来たことで非常事態となる。

 緊張感で包まれた。

 何しに来たのか。

 まさか攻撃しに来たのかと不安がられたのは、言うまでもない。


(まいったな、これじゃ俺は危険人物だろう。戦う気は全くないつての)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ