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 リリス怒りでゴーレムを心底恨んだ。

 無理に連れていかれても、絶対に魔人などと一緒になる気になれなかった。

 ラジッチはゴーレムがリリスを必要としていようが、それよりもこの場をどうやって切り抜けるかである。

 ゴーレムに特性の斧で攻撃を仕掛ける。


「ふふ、これしきで俺には効かないよ」


「!!!」


 ラジッチはめいいっぱいの力を込めて振り下ろしたのを腕で防御してしまった。

 鎧を切り裂く威力が自慢であったので、ラジッチはめんを食らった。

 

「邪魔だ、散れ!!!」


 ゴーレムはラジッチにスキルである、ライトブラストを放つ。


「ぐっ!!!」


 斧での防御は使えず、雷属性の攻撃を受けてしまった。

 たまらずに、吹き飛ばされてしまい、地面を転がりうつ伏せになっていた。

 ナーべマルを助けにきたが、相手が格上過ぎた。

 ナーべマルは、ラジッチの様をみて、


「ラジッチ……。逃げて」


「もう遅いと思うぜ、体がしびれて動けないし」


「これが中級魔人なの……」


 二人とも現実を初めて知った。

 中級魔人な対するイメージと現実の差に。

 余りにも差があった。

 ルテリは二人の有名な冒険者を前にして、勝ち誇る。


「あっはははは、これがあの有名な冒険者の姿かしら。笑っちゃいます。これで終わり。最後は私が行いましょう」


「……クソッ」


 ラジッチが悔しがるがルテリは剣を抜いて二人の命をとりに行った。

 ゴーレムはルテリの行動を止めることはなく、薄笑いしていた。

 最後の瞬間を楽しみにしている笑みであった。

 ゴーレムの隣にいるギャンとシールド、ボーガも同じである。

 剣を頭上にかかげて、一気に振り下ろすと、ルテリは剣の先に、遥か頭上に影を感じる。

 

「……あ、あれは、鳥?」


「何かあったか」


 剣を振り下ろすのを止めて、上に視線を移す。

 ゴーレムは、ぱっと見て鳥だと思った。

 空中から誰かが来るとは考えにくいから。


「ゴーレム様、あれは、鳥ではないです!」


「まさか……」


 しかしゴーレムの裏をかいて空中からルテリに落ちてきたのは冷である。

 

「助けに来たっ!!」


(あれはラジッチだよな、なぜここにいるんだろう。まぁいいか、助けてやろう)


「誰だっ!」


 冷はルテリに真っ逆さまに落ちて、ルテリとラジッチの間に降り立った。

 

「冷っ!!!」


 ラジッチは驚いたのは冷が来たというよりも空から来たからである。


「大丈夫かよ、ナーべマルも。かなり酷くやられたみたいだな」


「申し訳ない、相手が強すぎて。それにアリエルとミーコが大変なことに……」


「なにっ、アリエル……」


 冷はナーべマルに言われて、周りを見てみると、確かにアリエルとミーコが横たわっているのを発見した。

 発見してショックを受ける。


(うう、やったのは誰だ。ゴーレムか、それとも周りにいる奴らか。どちらにしろ、許さないけど)


「冷め、来やがったか」


「ゴーレム、お前が関わってるのは知ってたぜ。派手にやってくれたな、俺が来たからには、好きにはさせない」


「残念だったな冷、あいにく俺の目的は達成できてる、リリスが手に入ればいいのさ」


「リリス!」


「なにやってる! 早く助けてくれ、お前ならなんとかなるだろう」


「わかってるよ、今すぐにでもたすけてやるよ、アリエルとミーコは生きてるのか?」


「生きてる。でも危ない、早く手当てがいる」


「急がないといけないな」


(なんとかなるだろうって、そんな助けあるかよな。リリスだけでも無事で良かった)


 冷は一刻も早くアリエルとミーコの手当てがしたい。

 それにはゴーレム達を倒すと決めた。

 哀れなアリエルとミーコの姿に、冷の怒りは急上昇する。

 平然としていられないほどに、ヒートアップしていた。

 

「急がないとだと? 笑わせるな〜。まるで俺に勝った気だから。この魔人ゴーレムに」


「俺はそういう意味で言ったんだけど。わからなかったか?」


 ゴーレムに言えば、ムカつくのはわかっていて冷はあえて言った。

 するとゴーレムはムカっときて、


「生意気な奴だ」


「1つ訊きたいことがある、答えなさい冷?」


 そこへルテリが会話に入ってきた。

 ルテリは会話の中身から推察して冷だとわかる。

 冷を見たのは初めてであるが、思ったよりも、若くてこれが魔人を倒した冒険者なのかと疑う。

 

「なんですか? 俺は冷ですけど」


(うわ、よく見るとすっげー美人ですが、誰ですかね)


 ルテリの容姿を上から下まで観察する。

 敵だという認識が薄かった。


「そうなると、妹はどうしたのかしら。もしや妹を倒してきたとか」


「妹ですか……ああ、ルクエとかルビカとか言ってたけど、あの二人のことかな?」


「どうしましたか、妹を?」


 ルテリは妹二人がいて、尚かつシャーロイ家の兵士が大軍である、その数がいて負けるはずはないと思っていた。

 冷がなぜここに来れたのかが訊きたい。


「兵士がいっぱい居たから、先ずそれらを追い払ってだな、その後に妹の二人を倒して、縛ってから馬車で移動中だな。言っておくが妹二人は殺してないから安心していいよ」


「嘘っ! 負けたですって! そんなバカな」


「嘘はついてない。後から来るさ。俺が空中を飛んできたから速かっただけさ」


 (飛んできたからっていうのも、嘘っぽいが飛んでるところを見てるから、本当だと信じてくれるだろう)


「……よくも、よくも、妹を傷つけたな。かわいそうに、許せませんことよ!」


 ルテリは大事な妹が負けたのを知らされ、予定が狂った。

 妹の気持ちになってみて、冷がムカついてきたのが、今の気持ちであった。

 ルテリが闘志を全面に押し出してきたところで、ゴーレムが冷に言い渡す。


「どうやらルテリ、冷ともお互いに、ムカついているようですね。俺はリリスさえ手に入れればいい。後はお二人で気の済むまで戦ってください。俺からはプレゼントとしてギャンを置いていく。ギャン頼んだぞ」


「はい、ゴーレム様。冷を倒すチャンスを頂き、ありがたいです。必ず期待にこたえてみせます」


 ギャンはルテリの横に並んだ。

 ゴーレムはリリスが目的の為、とっとと消えるつもりである。

 冷が現れて正直言って面倒なことになって、ルテリに押しつけてしまう考えであった。

 ギャンを置いていけば、ルテリと協力して勝てる見積もりもあり決めた。

 

「では、サヨウナラ」


「待てっ、ゴーレム!」


「冷っ〜〜〜、早く助けろっ〜」


 リリスは冷に忠告すると、ルテリが冷をさえぎる形で、


「おっと、あなたの相手はこのルテリがします。リリスの所には行かせません!」


「ちくしょー、リリスが行ってしまうじゃん。退いてくれ!」


 (ルテリとかいってたけど、邪魔なんだよ)


「退きません。私がお相手になりましょう」


「マジで俺は怒るぜ、お嬢さん!」


「私はとっくに怒ってます」


 ゴーレムとシールド、ボーガはリリスを無理やりに連行してしまった。

 抵抗しようにも無理があった。

 後にはルテリとギャンが残る。

 冷を憎むルテリは冷の前に立ちはだかる。

 剣を抜き冷に向けた。

 隣にいるギャンもまた得意の長大なスピアを自慢げに披露した。


「ううううあ〜〜わ〜! 俺はリリスが好きなんだよ、リリスのいない生活なんて最悪だっ」


 冷はまるで子供みたいな言葉を述べた。

 ずっと一緒にいた仲間でもあるから、取られた感覚を覚えた。

 取られたのなら、黙っていられるわけはない。


(このまま黙ってる俺ではない。武器を出したなら俺も戦うよ)


 冷はナギナタを用意する。

 武器には武器で対抗とした。


((冷、おの女は口だけではないだろう。先程の女と姉妹なら、間違いなく強いぞ))


(バアちゃん、黙っててくれ、俺は今、腹が立ってるのだからよ!)


((それがダメなのだ。よいか、相手は二人だ、それもスピアの女も危険だ。冷静になれ))


(……冷静か、済まねえ、俺はどうやらリリスの件で冷静さを欠いていたようだ)


((この際、リリスは忘れておくのだ。戦いに集中することだな))


(ありがと、そうしますよ)


 冷はふぅ〜と、深呼吸をひと息つくと、いつもの冷に戻った。

 そこへギャンがスピアで攻めてくる。

 ギャンは冷を見て、まだ子供だなと感じる。

 それもリリスを取られたショックで、文句を言い出す子供に。

 こんな子供みたいな人族に、魔族が負けるとは思えないのだが、なぜ魔人のガーゴイルやサイクロプスが負けたのか。

 なにかトリックがあるのかと思う。

 普通にスピアでいけば、問題なく当てられるだろう。

 それに、陳腐な安っぽい武器を持っている冷。

 このスピアには突き通せない壁はなかった。

 敵の持っている盾も一撃で貫いてきた。

 あんな武器などこの自慢のスピアでへし折ってやる。

 ギャンは冷のナギナタを先ず折ることにした。


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