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「あの〜冷って、変態でございます?」
「……本人に訊いてください」
ナニはその質問には答える気分はなかった。
どちらでもいい質問であった。
冷がスキルの縄縛りを発動する。
姉妹を拘束した。
まだ残っていたシャーロイ家の兵士達がいて、戦いを隠れて見ていた。
「な、な、ななんだアレは、化け物かよ!!」
「ああ、間違いない化け物だ、ルクエ様とルビカ様が二人とも負けるなんて、普通じゃない!」
「逃げろっ!」
姉妹を助けようにもどうにもならないとわかり、逃げ出してしまった。
後でシャーロイ家に帰れば、問題になることは間違いないが。
兵士の予想を遥かに超える強さであった証拠である。
再び馬車でナーべマルのところへ追いかけるには時間はかかる。
「馬車で急いで戻ります!」
「ナニは馬車で姉妹も連れて移動してくれ」
「えっ……と、私だけ?」
「そうです、俺は馬車でなく移動しますから」
(なんといっても俺にはスキルがあるからな。ここでは大変に役に立つだろう。まぁナニは驚いてしまうかもな。それでも速いことに越したことはない)
「馬車の方が速いと思うけど。馬車ではない乗り物があったのですね」
ナニは冷が馬車よりも速いだろう乗り物をイメージしていた。
「違うんだ、俺は空中を飛んでいくから」
(なんと説明していいか、分からないが、とにかく飛んでいくのです)
「……ええええっと……。意味がわからないけど、飛ぶなら、どうぞ、飛んでください、勝手にどうぞ。私は馬車で移動しますから」
「どうも、です」
ナニは一瞬固まったが、すぐに取り戻して馬車を走らせた。
そこで冷は、覚えたスキル、ガーゴイルの翼を使うことにした。
このスキルの特徴は変身してまるで鳥のように飛べること。
手が翼に変化し、足が尾翼とかした。
考えにくいが実際に変化している。
(いつ見ても不思議だよ)
姿が変わる様を見ていたナニは、もはや馬車の中から笑うしかなかった。
鳥のように変化していく人間など、聞いたことなかった。
空中に上昇すると、目的の方角に向けて、あっという間に馬車を追い越してしまった。
(おおっ、速いな。馬車なんて比較にならんよ。ナニは俺を痛い目で見ていたが、実際に飛んで驚いてるだろうなぁ)
まさに、人間飛行機と呼べて、上空を鳥よりも速く移動した。
飛んでいる最中は気持ち良くなっていた。
う
ゴーレムは手下の三人のギャン、シールド、ボーガと行動をともにする。
シャーロイ家での話を終えて、シャーロイ家の姉妹の長女ルテリも一緒であった。
ルテリはすでにナーべマルがいる地点の詳しい場所を調べてあった。
「目的は決まってる、場所も兵士に探らせてあります。あと、その三人の女性は?」
「これはまだ紹介していなかったかな、俺の手下の者。名前はギャン、シールド、ボーガ。実力は問題ない、俺が保証しよう。騎士団など数を揃えても無駄となるほどにね」
「よろしくお願いします、ルテリさん」
「こちらこそ」
ギャンが代表して挨拶をしたら、ルテリも挨拶を返した。
ルテリは多くの兵士を引き連れているのに対して、たったの三人であるのに、不安がよぎった。
しかしゴーレムの信頼する手下ならば、恐ろしく強いのだろうとして、それ以上は説明は要らなかった。
兵士はルテリを守る為に、目的は一緒でも魔人であるから、いつルテリを裏切るかわからないので、警戒感を緩めずにいた。
だがそれも三人の手下のギャンと目が合うと、凍るような感覚になっていた。
それは経験のない恐怖感であって、兵士は魔人と魔族を初めて見て、現実感が薄らいでしまった。
はっきり言って一緒に居なくない、直ぐにでも離れたい感覚。
一時間も一緒に居たら、頭がおかしくなると兵士の誰もが思った。
向かうはナーべマルとナニがいる地点。
「彼女らがあなたの手下の魔族なのはら、わかりました。魔力が凄まじいですから。並みの魔族ではないのは肌で感じます。それとあなたは俺、俺、と言ってますが、女性なのですか、仮面を被っているのでわかりませんけど」
ルテリはゴーレムが鋼鉄の鎧と仮面に覆われているので、男なのか女なのか判断がつかなかく、本人に訊いてみると。
「俺か……女だよ」
「ああ、女でしたか。私と同じ」
ゴーレムは特に隠すことなく女であることをなのった。
ルテリはなんとなくそう思っていたから、驚きはしないが、同じ女性でここまで有名になった魔人が女だとなると、いささか驚きはあった。
「そうだよ、別に問題ないだろ男だろうが女だろうが。それよりも作戦はどうなってる?」
「もう実行してます。私の妹であるルクエ、ルビカがいましたよね、妹の二人が先に向かいました。まずはナニとナーべマルを分断させるように仕込んであります。兵士を一般人になりすまさせておきます。そして兵士が二人を分断させる。問題は冷です。冷がどちらに行動するか」
「それは重要。大きな問題だよ。まぁどちらにしろ俺が殺すのだろうが」
「ずいぶんと自信ありですね。まぁからの情報が入ってまして、わかってます。ナニとナーべマルが妹の方に、そしてナーべマルとリリス達はそのままの地点に待機、よって私達が向かう先に冷はいない」
ルテリは兵士を使い、情報の収集を怠らなかった。
念には念を入れてのこと、シャーロイ家の生命がかかっているのであるから、当然と言える。
「なんだぁ〜居ないのか。まぁいいだろう、リリスさえ手に入れればな」
「余裕だなまったく」
「あそこがナーべマルの居る地点だな、リリスも一緒にいる。ここは、こちらから先制攻撃がいいのでは?」
「賛成よ、向こうはまだ気づいていませんから。気を付けるのはナーべマルだけでしょう。リリスなどの冷の仲間はどうなのです。私は彼女らの情報はありません」
「実力はない。スキルは使うが、破壊的なダメージを受けるのはまずない。それと騎士団は数が多いくらいでカス、居ても居なくても同じ」
「それでは、作戦は決まりました。一気に片付けてしまいましょう」
ルテリはナーべマルの居場所をつかめていて、そはまで来ていた。
近くまで来てもナーべマルと騎士団は把握できていなくて、笑顔もチラホラとかいまみえる。
複数いる騎士団の馬車。
騎士団のマークがどれも付いている。
ナーべマルの中では、特に大きな問題ではないよなと思う。
盗賊といっても、ナニが勝てないような盗賊に、遭遇するなど考えにくい。
ナニの力をもってすれば、すぐにかたがつく。
それにあの冷も一緒だ。
負けることは100パーないだろうとした。
逆に冷がなにやら問題を起こさなければの話だが。
冷には不思議と魔人を引き寄せる、冷のほうから近寄ってるのかもしれないが、かかわり合いになる。
魔人が出なければいいがと、ナニの安全を気づかった。
ナニと冷が出発してから時間はたつが、問題はないと信じて待つことに。
そこへ騎士団の団員から連絡が入る。
「失礼します、ナーべマルさん!」
「どうしましたか……」
「あ、あ、あ、あ、あ現れました、魔族!!!」
「えっ! 魔族…………」
「外を見てください!!」
「……騎士団に指示します、全員、戦闘につき防御しなさい!」
「はい!」
ナーべマルは外を見ると魔族の姿は目の前にあった。
その場で騎士団に指示を出し、自分が最前線に出る。
馬車にいたアリエルは大きな振動で異変を感じ、ミーコとリリスに声をかける。
「何かしら、もの凄い音がしたわ」
「敵襲のような」
「休んでる場合ではないな。早く外に!」
外に出ると予想が当たっていて、騎士団と魔族が激しい争いを展開していた。
怖がっている場合ではないのは明らかで、武器を手にする。
「敵襲とは困ったけど、私達も出来る限り戦いましょう!」
「冷氏は居ないけど、その分、頑張る時よ」
「面倒くせぇ魔族だな」
リリスは面倒くせぇとは言いながらも、魔剣を片手に進んでいく。
騎士団の争いに加わった。
馬車は粉々に破壊されたり、森は焼かれたりと、辺りは静かな森が、一変してしまった。
魔族側の三人、ギャン達は騎士団を蹴散らしては、探していた。
リリスが目的であるから、間違えて殺してはマズい。
「リリスは殺したらダメだ」
「そうよ、殺したらゴーレム様にめっちゃ怒られる」
「怒られるどころでは済まない。だから、慎重に騎士団を相手にしていこう。まぁ見た目が少女なのだからわかりやすいとは思うが、念のため気をつけて」
リリスをまだ発見していないから、戦いながら探していく。
ふと目を凝らすと、少女の姿を発見し、
「おい、アレじゃないかな」
「……見つけたわね」
ギャンは群集の中で三人の少女を発見した。
周りは男ばかりなので、見つかりやすいのは否めないのもある。
ギャンが体をリリスに向きを変えて向かった。
「リリスか?」
「……ふん、そうだよ。お前に名前を教えたことはないけど。私に用があるのかい?」
「半分正解、でも半分は違う。半分は残りの者は全員この場で死んでもらう」
「勝手なこと言うな。そんな卑劣なのは許さない!」
リリスはギャンの話を聞いて少なからずショックを受ける。
と同時に怒りを覚えた。
魔剣グラムを握りしめて、ギャンと向かい合った。