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アイスドラゴンブレードと両手剣が交差する。
この瞬間にルテリは思ったのは、さっきまでのナギナタではない、スキルを使用してるが恐ろしく冷たい冷気を感じる。
とても剣では抑えられる魔力ではないし、剣が破壊されるのではと。
見たこともないナギナタに両手剣を前に出せない、腕ごと吹き飛ばされてしまった。
「ううわぁ〜〜」
「姉さん!!!!」
ルテリは両手剣ごと吹き飛ばされ、しかも冷はそのまま妹のルビカにも迫る。
ブーメランが来るが、両手剣と同じであった。
青い冷気がまとうナギナタの前には、ブーメランは軽く飛ばされてしまった。
こんなにも軽く、まるでオモチャのように扱われたは、ルビカも初めてであった。
まるでドラゴンが襲って来るかのような感触を得ていて、ルビカは弾かれる。
「ううわぁ〜〜」
「これが俺のスキル、アイスドラゴンブレードさ」
姉妹をあっという間に倒してしまい、2人とも苦しくもだえていた。
(俺のスキルの方が遥かに上の様だな。しかし2人ともいい度胸しるよな。死ぬかもしれない状況でも、ひるまずに突進してくる当たりは教えてもできることではない)
「素晴らしい、素晴らしい戦いでした。私の出番はあんまりなかったみたいね」
「いいや、ナニとルビカのブーメラン戦はとても面白く拝見しましたから」
「拝見しましたですか、まるでスポーツ観戦してる感じですかね」
「ああ、俺には命をかけた戦いは、楽しいからね」
(なんともいい収穫があったな。初めてのブーメランの凄さ。それとこれまた珍しい両手剣との剣術バトル。ずっと暇だったから体がなまっていたので、十分に楽しめた)
ナニは姉妹をあっさりと倒してしまう冷に、恐ろしい感じを抱いた。
しかも冷は楽しいからと言っていて、どんな頭をしてるのか理解できない。
話には聞いていた、冷は何を考えてるのかわからないと、それをかいま見た感じである。
「た、だ、だ、大丈夫かいルビカ……」
「ええ、姉さん、私なら大丈夫かな。姉さんは?」
「ああ、命は問題ないようだ。どうやら私達姉妹の負けのようですね。あのナギナタには勝てませんでございます」
「まるでドラゴンが襲って来る感じしました」
「私も同じく。きっとスキルでしょう。はっきり言って化け物で、やはり中級魔人を倒したというのは、噂ではなく、本当でしょう」
「どうします、このままではルテリ姉さんに怒られますもん」
「ええ、怒られますね」
姉妹は倒れて気を失っていたが、しばらくして目を覚ますと、命に別状はなかった。
もちろんダメージは相当に負っているが。
むしろ死ななかったのが不思議に感じる。
「おおっ、どうやら目を覚ましたのだな!」
「……目を覚ますとは……もしや、あなたは私達を生かしたというのか、つまりは殺さないように?」
「そうだよ、殺さない程度に力をセーブしてナギナタを振ったんだよ。だからそろそろ起きてくるころだなと思ったのさ。やはり俺って、天才だよな」
(俺の感覚ではそろそろだと思っていたから、グッドタイミングだな)
ルクエはなぜか、と自問した。
殺して損はないはずなのに、どうして殺さなかったのかが、理由が見つからないのだ。
生かして国王に付き出すしか答えはなかった。
「さては、生かして国王に送る気ですね。そうして殺すよりも地獄を味合わせるとは。なんとも鬼畜でございます」
「酷いやつだもん!」
「おいおい、勘違いしないでくれよ君たち。俺はそんな気はないし。騙されて馬車で連れてられたのは、別に気にしてないから」
(むしろ感謝してるよ、楽しめて)
姉妹は絶対に国王に送ると決めつけていたから、冷の言うのが嘘にしか聞こえない。
「嘘を言うな。私達があなた達にしたことを水に流すというのかい、気にしないで。信じられるますかそんなのが」
「俺は、気にしないよ、でもナニがどう思ってるのかな?」
冷はナニの方を向いて気持ちを確かめてみると。
「もちろん許しがたい行為です。国王に反乱したのは間違いないのですから。しかも国王から王の座を狙っていると知れば、尚更許せません」
「姉妹は死刑って、わけね」
「はい、騎士団の名にかけて許せる行為ではありませんので」
「それなら、どうぞ、王都に連れて行ってください。私はもう抵抗しません。まぁ抵抗しても無駄ですし、冷が、いたら」
「そうします」
冷は姉妹をあえて殺さずにいたのだが、ナニは違った。
やはり騎士団のそれも立場のあるナニは、姉妹を重い刑にさざえるを得ない。
冷を無視して姉妹を王都にと決める。
姉妹は抵抗はせずに、黙ってナニに従うことにしていた。
姉妹にはまだ考えがあったからである。
それはもう一人の姉である、ルテリ。
三姉妹の長女のルテリは別行動であった。
ここには居ないのは、ある別行動にすでに動いているからで、それがあるから妹のルクエとルビカは、黙っていて、我慢できずにニヤついてしまった。
その瞬間を冷は見逃さないでいて、
「あれれ、捕まるのになぜかいま、ニヤついてたよねルクエ?」
「ええっ! ニヤついてません」
「あれれ、俺には見えたよ」
(確かにニヤついてたよな。どうしてだろう)
「さぁ捕まえたらいいわ」
その時にナニは不審に思っていた。
シャーロイ家の姉妹は確か三姉妹であったと思い出したからである。
「ちょっと待ってください。あなた達シャーロイ姉妹は確か三姉妹でしたよね、でも今いるのは二人です。てことはもう一人、それも長女の……ルテリでしたか?」
「ルテリ姉さんの名前をご存知でしたか。さすかは騎士団です。隠しても無駄ならば教えてあげます。その通り、もう一人の姉がいます、ルテリ姉さんがね。そして彼女はここには居ないのよ。別に動いているから」
「別に動いているとは?」
「教えて欲しいので、ございますか」
「教えなさい!」
ナニはしまったと思った。
ルクエの何か引っかかる言い方に。
冷静に考えたら、すぐにわかったのに、シャーロイ姉妹と言えば三姉妹だと。
どうして気付かなかったのだろうか。
そしてナーべマルが頭に浮かんだ。
おいてきたナーべマルとアリエル達と騎士団のことを考えて、嫌な予感が走った。
「確か冷の仲間がいたのよね、ルテリ姉さんはそちらに向かっているのよ。なぜかって、私達姉妹の本当の狙いは、もう一つあるのでございます」
「ナーべマルと騎士団がいます。目的は何ですか?」
「もう言ってもいい頃ね。黙っていたのは冷をここに引きつけておく為で、目的は仲間にいるリリスを残して始末することでございます」
「リリスをだって!」
突然にリリスの名前がでておどろしまう冷。
どうしてかわからない。
なにしろ、シャーロイ家の目的とリリスは関係ないからである。
(おいおい、リリスが心配になってくるよな。大丈夫かな)
冷が驚いているので、ナニは考えてみると、
「ちょっと待ってよ、シャーロイ姉妹の目的は国王の座でしょう。それはわかります。私も冷も殺せば弱体化するし、ナーべマルも騎士団も消せば同じく弱体化します。国の力は確実に弱まる。だから、二手に別れさせて、長女はナーべマルの方に行ったわけね。でも分からない部分もあって、リリスは関係ない。なぜかしら……まさか?」
「その、まさか?でしょう。ナニさん、きっとこう考えたのでは、リリスと言ったら……淫魔族……淫魔となると……魔族…………魔人……ゴーレムと」
「ゴーレム!!!」
ルクエの口から淫魔、魔人、ゴーレムと聞かされて、ハッとなった。
なぜなら、リリスは現在もゴーレムから狙われていたのは知っていた。
そうなると話は複雑になる。
このシャーロイ姉妹と魔人ゴーレムの繋がりが。
リリスとゴーレムの名が出て、一番驚いていたのは冷であろう。
「うう、ゴーレムが関わってるのかよ、まさかもうすでにリリスの所へゴーレムが行ったのか?」
(それはマズいよな。俺もこんな所で姉妹の体が良いとか、胸が良いとか考えてる場合じゃないし)
「ご察しの通りだもん!」
「つまりは、姉妹とゴーレムは手を結んでいると考えてよろしいでしょか?」
「さすがはナニさん、鋭いです、どうしてかって言うと、ゴーレムはリリスが欲しい。シャーロイ家は騎士団と冷は死んで欲しい。そこで利害が一致したってわけ。もう遅いかな、今頃は姉さんとゴーレムが計画通りにいってる頃でしょうから、あははははっ!」
計画は進んでいた。
魔人ゴーレムとシャーロイ姉妹が手を結んでいるとわかったところで、もう遅いとルクエはわかっていた。
「ナーべマルと騎士団は……」
「私達は失敗したけど、ルテリ姉さん失敗しない。きっと全滅してます、リリスだけはゴーレムが手にして」
「むうう……、冷、どうします?」
「マズいよな、みんなが心配だ。直ぐに戻ろう。ゴーレムの奴め」
「戻るしかないね」
「俺としては、楽しみもあるしな」
「楽しみですって?」
ナニは絶望的な場面なのに何を楽しみなのかと首を傾ける。
どう考えても楽しい要素など見当たらないからで、気が狂ったのかと思った。
「今の姉妹の話を聞いて、もうひとり姉さんてのがいるのだろ。てことはだ、こんな可愛いらしい姉妹なのだから、姉さんも可愛いに決まってるよな、だったら、会いたいし、すっごいいい体してるかもだし、お楽しみだよ!」
(リリスは心配だけど、姉さんってのも気になるよな。なにせ姉妹がこの高レベルの可愛いんだから)
冷はこの場面であり得ない発言をした。
「……。ダメだこれは……」
ナニは余りの愚かさに言葉を無くした。
そして姉妹も。
「冷って、もしかして、変態で、ございますか?」