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 冷の異常な視線を感じるルクエ。

 普通なら相手の顔を見るだろうし、経験した相手はそうであった。

 だが冷の視線は胸に一極集中していた。


「お、おい、今さ、私の胸を見ていなかったか?」


「見てたけど」


 冷はあっさりと認めた。


(バレてましたか。どうしたってこの胸は見ちゃうでしょう)


「見てたけどって、フザケてるの。仮にも戦ってる最中にすることかしら。相手を馬鹿にした行為でございます」


「悪いな、俺は可愛い女性を見るとつい見ちゃうんだよ」


「許せません!」


 ルクエは再び剣を冷に向ける。

 剣とナギナタとの激しいぶつかり合いが続いた。


「凄いわね、姉さんと互角に……」


 いつもならルクエの両手剣で瞬殺されているはずなのに、冷には通用しないのを見て妹のルビカは冷がスキル魔法だけではない、武器の使い手としても一級であると実感した。


 しかしルクエがいくら剣を振るっても冷にかすり傷はつけられない。

 しだいに慌てる事態になる。

 剣の実力はシャーロイ家のなかでも随一であり、国内においても、名はしれている程であった。

 幼い頃から剣術はしこまれてきたからである。

 それも将来はシャーロイ家にとって必要な人材と決められていたから。

 遊ぶよりも剣術を鍛錬している時間の方が長い。

 そこまでして会得した両手剣。

 まるで遊ばれているかのような扱いに、ショックを隠せない。


「うう、やりますね冷。私の剣をここまで受け止めた相手はいません」


「そうだろうなぁ。素晴らしくセンスがある。思わず見入ってしまうよ」


(本当は胸を見ていたいのだけど)


「なぜか、バカにされてる気がします」


「褒めてるのだよ」


「ルクエ姉さんっ、私も協力する、冷は化け物ですもん!」


「そうね、2人がかりなら倒せないことはないでしょう。いや、楽に倒せます。ルビカ、お願いします!」


「はいよ、姉さん!」


「ん、なんだ、妹も来る気か。どうぞ俺なら構わないからよ!」


 余りにも強い冷を前にルビカは姉を助けに入る。

 協力すればいくらなんでも倒せるとふんだからだ。

 それに対して冷は、姉妹の考えと逆に歓迎ムードに。

 通常では考えられないが、冷はわくわくしていた。


「冷! 大丈夫ですか、この姉妹を2人相手は厳しいです。私も戦ってわかりました。はっきりいって強い。すけだちします!」


「おっと! ナニさん、すけだちは俺には不要だよ」


「なぜよ!」


「わくわくしてんだよ俺は。こんなに強い姉妹を相手に戦えることに。だからじっくりと観戦していてくれ」


「ええっと、わかりました。それが冷の望みなら。後で助けてって言ってもしらないから」


 せっかくナニが助けてやるといったのに、断る冷。

 冷にとっては楽しみを1つ奪われてしまうからで、丁重に断る。


(ナニには悪いがここは俺に任せて欲しい。妹のルビカとかいったかな、ブーメランの方、とても楽しみだし、めったに出会えないレア者だよ)


「バカめ、ナニと組めば私達姉妹を倒せたかも知らないチャンスを、みすみす逃すとは」


「バカですもん!」


「バカかどうかはやってみればわかるさ」


 姉妹は冷の行為をバカにした。

 そしてお互いに顔を合わせてニヤリとした。

 勝ったのを確信した笑みであった。


「ブーメランで終わらせるもん!」


 手始めにルビカはブーメランを投げつける。

 

「おっ、これがブーメランか」


 開始して直ぐに飛んできたブーメラン。

 ナニはブーメランを全て回避して戦ってきた。

 ナニには武器はあることはあるが、あまり得意ではなく、スキル魔法での戦いに専念していた。

 ルビカはブーメランを使い遥か遠くのリンゴを撃ち落とせたり、高速で飛ぶ鷹を獲ったりと、まるで自分の手足のように扱える。

 つまりは、自分の分身とも言えた。

 四六時中もブーメランを手に持ち、ご飯を食べてる時も肌身はなさずである。

 その為、ブーメランを使うことに関しては魔術師とまで言われる程に成長していた。

 無論、戦ってきた相手は、ブーメランの動きに魅了されて倒されてしまう。

 生き物のような動きに。

 生きているのではと、錯覚する。

 国内ではブーメランの使い手といえばルビカと呼ばれるまでに。

 ここで冷はルビカの予想を上回る行為に出る。

 狙いを定めた鷹のように、冷を狙いすまして、放物線を描き、飛んできた。

 その時、冷はいっさい動かずにいた。

 バシッ!と音だけがした。


「おおっ、これがブーメランか。カッコイイなぁ」


「ええええええっ!!!!」


 ルビカは絶叫していた。


「そんなに驚いた? 悪いな、カッコイイから、つい取っちゃった」


 なんと冷はルビカのブーメランを的中する直前に手で掴んでしまった。

 それも理由はブーメランがカッコイイからという理由で。

 

(いや〜、カッコイイよねぇ。俺もブーメランって使ってみたかったんだよな。憧れなんだよ)


「フザケてるの! 私のブーメランを返しなさい!」


「返して欲しいか……。そら、返してやるよ!」


 冷はルビカのブーメランを掴んでしまったので、ルビカは怒った。

 返してとなったのは当然であり、冷はブーメランを投げてみようと思う。


(未だにブーメランって使ってない武器なんだよな。そもそも実践には不向きなイメージあるから。よし、試しに使ってみよう!)


「返すと言ったな。とんでもないバカだなやはり。ブーメランは一見すると簡単そうに見えるが、実は扱いが難しい武器なの。だから初めて使う冷に使えるわけがないもん!」


 ルビカの言うとおりブーメランは的中させるには、恐ろしく長い年月の訓練が必要であった。

 冷がブーメランを投げ返すと、初めて投げたわけで、弧を描いてルビカに飛んでいった。


「なにっ! 初めてなのに、しっかり狙い通り飛んで来てる!」


「逃げるのよルビカ!」


 ルクエがブーメランの動きをみて、危ないと直感でわかり、ルビカに逃げるように指示した。

 だが、姉さんの心配もよそに、ブーメランはルビカに。


「うう〜わあ〜」


「ルビカっ、!!!」


「おっと、悪かった、悪かった。命中しちゃった!」


 ブーメランはルビカの体に見事に命中。

 ルビカはダメージを受けて倒れてしまう。

 あくまでも冷は返したつもりも、とても勢い良く飛び、ルビカが攻撃したのと変わらない強さであった。

 

「……私のブーメランで攻撃してくるとは、考えてなかったもん」


「いや俺は攻撃したつもりもないのだけど……」


「現にダメージされてるもん」


「俺って天才かもな」


 自分で自分を天才と言ってしまった。

 初めて使ってみたブーメランの成功に自分を褒めたのだった。

 そんな冷を仲間にしているナニは恥ずかしい気持ちになった。

 

「ちょっとあなたね、天才とか言いますか自分で?」


「だって見たろ今の俺の。天才以外ないだろ」


「はあ〜、この人が騎士団に入るの無理かも」


「俺が天才過ぎるからかい、天才過ぎると理解してもらえないから辛いよなぁ」


(天才って辛いかもな)


「いやいや、言ってませんから」


 ナニは冷の勘違いさの大きさに、あきれてしまった。

 勘違いにも程があると思った。

 ルビカが怪我をさせられて、たまらないのは姉のルクエ。

 急いでルビカに近寄る。


「大丈夫かい?」


「けっこう痛いかも、ブーメランて痛い!」


「当然よ、あの速度でぶつけられたのだから、ダメージはしかたないわね」


「それよりも、このまま黙ってたらシャーロイ家の恥となるもん。やり返すもん!」


「……冷は噂通り、いや噂以上の強さかも。普通に考えたら勝てない。2人の力を合わせて同時に攻撃しないと勝ち目はないですわ」


「悔しいけど。このままだとルテリ姉さんに顔向け出来ないもん」


「ルテリ姉さんが怒ったら……怖い」


「冷よりも怖いもん!」


「動ける?」


「もちろん!」


 姉妹はこんな恥ずかしい負け方したら、長女ルテリに叱られると考えた。

 それは避けたかった。

 同じ怖いなら、冷との戦いの方が増しだと。

 ナニはもう負けを認めたのかなと思っていた。


「もう終わりかな。いい加減、国に反抗するの止めたらどう?」


「うるさい、もう反抗してしまったのだから、あなた達を始末するしか道はないのよ。ナニさん、わかりますか、シャーロイ家がどれだけ国王を恨んでいるかを?」


「知りません。わかりました、反抗は続けるのね、残念です」


「俺は嬉しく思うよ、強い姉妹と戦えて楽しいからよ!」


「楽しいですか、それを苦しいに変えてみせますで、ございます!」


 ルクエとルビカは同時に冷に向かって行く。

 ルビカは痛みを我慢して走ると、ブーメランを投げる。

 ルクエは両手剣で。

 ほぼ同時に対応しないと無理な場面に。

 2つを同時に対応できるかが、この場面を切り抜ける方法。

 冷はナギナタを構えると。


((同時に来ておるぞ、大丈夫か?))


(ああ、スキルを使うかな)


((また冷たい奴か))


(その予定です)


 ナギナタに魔力を注ぐ。

 使うスキルはナギナタと相性の良いアイスドラゴンブレードを選択。

 迎え討つ冷は、一気にスキルでかたをつけにいくのであった。


(俺のアイスドラゴンブレードを披露してやろうかな)

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