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一人ずつ倒してもいいのであるが、時間がかかるし、手間もかかる、冷にとってはその作業は面倒な作業であり、一度に手をかけずにスキルでいくとした。
使用するスキルは、広範囲な攻撃を可能とするフレイムバーン(火属性)、ライトブラスト(雷属性)を選択し、何度も放つより効果的と考えて、連続的に使用してみる。
(火属性と雷属性を連続したら、少しは俺の能力を理解してくれるよ)
そうとも知らずに兵士は単純に数に頼って突っ込んで行ったら、いきなり冷から強烈な火力の玉が放たれて、それも兵士の数よりも多い数であって、突っ込むのを止め防御、または回避しようとした。
「うわわわわぁ〜〜、火の玉だぁ〜」
「それもすげぇ数!」
兵士には1発も命中せずに地面に落ちた、命中しなかったのではなく、わざと冷が外してあげたのであった。
「上手くいったかな?」
(命中させないのも大変だな)
次にライトブラスト(雷属性)を放つと放電された電気が付近に散らばる。
「こ、今度は雷か?」
「ヤバいぜ、体が痺れます!」
ライトブラストも兵士には命中させないようにして、付近に落としたら、冷の思惑として兵士はビビってしまい、戦うことの戦意を喪失させるのが目的であった。
「ライトブラストはコントロールするのが難しいから、命中しそうになった」
(兵士には命中してないけど、これで相当にビビってるはずだけど。逃げ出すのも出てくるだろうな)
「ダメだ〜、ルテリ様〜」
「とても敵う相手ではありません!」
兵士はほぼ無傷であるのに、完全に撤退してルテリに助けを求めると、ルテリはこのアホか!と怒鳴りたかったが、今のスキルを見て、正直にルテリもビビってしまい、
「な、な、なんだ今のは。火属性と雷属性を両方を使える能力者か。珍しい奴です」
「姉さん、こうなったらウチら姉妹の恐ろしさを思い知らせてやるもん!」
「大丈夫か、ルビカ。冷の能力は底しれない、私が戦うのでございます」
「うん、そしたら姉さんに冷は任せます。ナニをぶっ飛ばしてやるもん!」
冷の連続的なスキル攻撃に恐怖を感じて退散していくと、ナニも苦笑いしてしまう。
「さすがですね……」
「次の俺の相手はどちらかな?」
(姉妹が次の相手だろう)
「私も負けていられません、騎士団の名が恥じます」
ナニは冷にばかり活躍されてはたまらないとばかりに、姉妹と向きあった。
真っ先に来たのは三女のルビカ、向かったのは冷ではなくナニで、目のあったナニは直ぐさま戦闘モードに入る。
三女ルビカの得意とする攻撃は、手にしてる武器からわかるが、くねっと曲がったブーメランである。
ブーメランは相手に投げると戻ってくる武器として有名であるが、ルビカのブーメランも同じタイプで、その腕は確かなものとして名が知れていた。
「むむ、ブーメランか……」
ナニはあまりみない武器に警戒して、不用心な攻撃をせずに様子をみることにした。
「避けれないもん!」
ブーメランを投げる手は手慣れたものであって、ナニの居場所を的確にとらえて迫る。
「速いわね……でも回避出来ない速度じゃない」
素早い身のこなしでナニはブーメランを回避したら、ルビカの目は真剣な目に変わる。
「さすがは騎士団として有名なナニさんね。今の動きはただ者ではないもん」
「ブーメランとは珍しい武器だこと。じゃあこちらも攻撃します、エアシュート!」
「スキル? 風?」
ナニは得意のスキルで風属性スキルを放つと、ルビカは足を使いエアシュートから逃れた。
「よく逃げれたわね三女さん。私のエアシュートは次こそあなたの体を貫くよ」
「その前にブーメランでぶっ叩くもん!」
両者は次々と攻撃を繰り出し、お互いに距離を取り戦う。
その戦いを観戦していた冷は、中々の見応えのある戦いに、思わずみいってしまう。
(う〜む、ナニと姉妹のルビカとやら、両者ともいい物を持っているな。エアシュートとブーメランはどちらも遠距離攻撃が可能、それだけに距離感が大事だろう。しかしブーメランなんて武器を使うのは、初めて見たな。面白い武器だよな)
間近で初めてみるブーメランは、異世界ではあっても日本では、まず見かけることのない武器で、冷は大変興味深く見届ける。
もちろん立場的にはナニを応援しなければならないのだが、ブーメランも応援したくなってしまうところに、冷の困った性格が出ていた。
戦いは長期戦になりかけた、そこに姉のルクエが注意すると、
「何をモタモタしておる。騎士団など早いとこ倒して!」
「わかってる〜、でもナニは意外と強いんだもん〜」
「それならば、私も加わるでございます!」
長引く戦いに姉のルクエは遂に自ら参戦に出る。
ルクエは得意分野は両手剣であって、左右の手に剣を構えた。
これで二対一の戦いになってしまいナニは不利な立場に。
「おい、これは不味いな。いくら何でもナニに不利過ぎるだろう。俺も参戦でしょ」
(ナニ、今行くからなっ!)
ルクエの動きをみて冷は、ここで俺の登場かとなると、不思議とナニは冷を足止めさせる。
「冷、来なくていいです、ここは私一人で戦えますから」
「ええっ、厳しくないか?」
(無理しすぎでしょ)
「私には騎士団としてのプライドがあるのよ、だからここは私に任せて」
「任せてって、無理でしょ」
「やってみます!」
ナニは意地っぱりな性格が出てしまい、冷は仕方なく、本当は戦いたい気持ちはいっぱいなのに、押えて見守ることにした。
ルクエは両手剣であり、ブーメランに気にしていると、接近戦を仕掛ける。
「ふふふ、ブーメランばかりに気を取られてると、私の剣に斬られます!」
「うう〜」
あっさりとナニは斬られてしまう。
エアシュートを撃つも、的が2つあるわけで、どちらを狙うか迷いが生じていた。
余計に当たらなくなり、体には傷が複数個ついていた。
「まいったわね……」
「だから言ったろ、ひとりでは厳しいって、あの姉妹を舐め過ぎだぜ」
これ以上は危ないと思い、ナニに忠告しにいく。
(やはり無理があるよな。ナニは素質があるのは認めるよ、でもあの姉妹もかなりの素質がある。幼い頃から鍛えられてるのが動き一つとってもわかる。洗練された剣のさばきだ。両手で剣を振るうなんてカッコイイ!)
「すまぬ、恥ずかしい限りだが、冷も参戦してくれ、言うとおり、あの姉妹は強い。完全にみくびっていたようだ」
「俺もあそこまで強いとは思わなかったよ。かなりの達人級だよ」
冷はようやく自分の出番に嬉しくなったが、きわめて強い相手に、緊張感はあった。
冷の登場にルビカは慌ててブーメランを持ち直す。
「おっ、姉さん、どうやら向こうは冷が出てくるようです」
「やっと……て感じです。まぁ例え冷が加わったところで結果は同じでございます」
「ウチラの勝ちだもん〜〜〜〜!」
冷の登場を見てもひるまないで、むしろ勝ち誇る姉妹。
冷は手加減はしないで、戦うことにした。
そこにナギナタから声が、
((冷よ、久しぶりだね))
(よおっ、その声はバアちゃんか。この前見た時は驚いたぜ)
((何の話だい?))
(ほらっ、バアちゃんがあんなに可愛いくてよ! しかも裸はとても綺麗でしたよ!)
((バカっ! この状況でよくもそんな話をできるものだ、あきれたよ!))
(悪い、悪い、今の話は無しで)
((全く困ったものだ。それよりもあの姉妹はいい線してる))
(ああ、腰から胸にかけての膨らみの線は最高だな、ついつい、みとれてしまうよ)
((アホか! その線ではない、技の切れ味のことだよ。よほどの腕のある者に鍛えられてるな))
(わかってるよ、俺もナギナタで勝負する。頼むぜバアちゃん)
((はいよ))
相手がブーメランと両手剣となれば、冷としても武器であるナギナタでの戦いをしてみたいとなる。
ナギナタを持ち出す、姉妹はナギナタに注目した。
最初に冷のナギナタとぶつかったのは、姉のルクエ。
両手剣は片手で攻撃、もう片手で防御も出来るし、両手での同時攻撃も可能で、使い方によっては幅広く使える。
ルクエの両手の剣がナギナタと重なると、一瞬で冷がナギナタの使い手とし最上級であるとわかった。
「うう〜、ナギナタの使い方は完璧。一部のスキもない。私の両手剣の角度、速度も完璧に読まれている……悔しいでございます」
「ありがとうです、ルクエ。君の両手剣は凄いよ。俺から見ても褒めてあげます。ただまだまだ脇が甘いかな。もっと練習が必要だよ」
この殺すか殺されるかの状況で、冷はルクエの剣を褒める余裕をみせた。
(これは、受け止めるのは難しいぞ、俺だから受け止められたけどよ。弱い魔物なら一撃で死ぬな)
「なによっ! 敵に褒められるほど落ちぶれてません!」
「俺は本心で言ってんのよ」
「次の一撃であなたを、しとめます、覚悟して」
ルクエは冷に子供扱いされた感覚になり、頭にきて、冷をみじん切りにしてやると決めた。
対する冷は、ルクエと剣を交えた時に、間近で見て驚いてしまう。
接近戦での偶然にも発見したのだった。
(うわぁ〜〜、ルクエっていい体してるな。胸もとても綺麗で大きいし、ぷるぷるしてる!)
殺されるかの瀬戸際にも関わらず、冷の視線はルクエのボディに夢中であった。