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「ありがとうございます!」


 馬車から降りて女性は頭を下げたら、冷は助けたのが女性で美人なので、照れてしまう。

 

「それよりも君たちこそ、この盗賊らに何もされなかったかい!」


(1番の不安はそこ)


「ええ、幸いにも怖がってたからか、何もされませんでした。でももう少し遅ければ危険な目にあったかもしれません」


「良かった、良かった! 無事で何よりです!」


「あなたがこの冷さんをお呼びしてくださったのね」


「はい、ちょうど騎士団の方が通りかかって声をかけたら冷さんもいたのでした」


 知り合いの男達は嬉しそうに女性に説明した。


「私は騎士団のナニ。無事でなによりです。ここら辺は治安が悪い。騎士団が町までお送りします。そして盗賊は捕まえましたから、王都に連れて帰りますから、ご安心を」


「さすが騎士団のお方。国の治安を守るのが仕事って感じ。そこまでしてくれなくて…………いいのですよ」


 せっかくのナニの親切を女性は断り、せっかく助けてもらってお礼を言うのが一般的であるのに、逆であった。


「本当に危ないですから、気になさらないで。それに魔物もいたら大変!」


「いいえ、必要ないです」


 またも断った。

 ナニはどうしてそこまで必要に断るのかわからなく、普通に考えてみて盗賊に拐われた後なのだから、そして女性の顔には笑顔もなくなっていた。


「どうしてですか。まるで私には断る理由がわかりません。あえて言うなら町に帰る必要ないみたいに聞こえますが?」


「言ってみればナニさんのご察し通りです。私達を護衛することが不要と言っているのです。わかりますか、ここまで言ってるのにわからないて、鈍感ですかナニさん?」


 鈍感て言われて変だなと感じ、ここでナニは女性が不審な考えを持っていることに気がついた。


「……あなた方は何者ですか。本当に盗賊に拐われたのですか。今の言い方だと違う気もしますし、もしかして私と冷をここに誘導した?」


「だとしたら……」


「……冷、どうやら私達は騙されて来たみたい……」


 会話のちぐはぐさから、異変に気がついて、冷の顔をのぞくと、


「らしいな……。こんなに綺麗な女性がまさか騙すとは思わなかったけど。だからって俺達をどうしようっていうのかな。まさか女性2人で俺を倒せるとでも?」


(いくら何でもそれは俺を低く見過ぎ)


「ふふふ、あなたの噂は聞いてます。ここに呼ぶくらいですからもちろん策はあります。皆さん出て来なさい!!!」


 女性が誰も居ない森林の方に向かって言い放った途端、誰かが居るような言い方であって、視線は森林に向かう。


(なんだ、誰かが居るのか?)


 すると森林の茂みをかき分けて、剣と鎧を武装した兵士達が続々と現れ、それも完全に待ち伏せ的な出方であった。


「な、な、な、なんですかこれは……。冷さん、どう見ても敵のようです」 


「敵だろうな。それも数も多いし、武装してる。兵隊だろうどこかの?」


(あっさりと俺の周りを囲みやがった。これだけの仕込みをする理由はなんだよ。てかそんなこと考えてる余裕ない感じですね)


「申し訳ない、私にも詳しくはわからない。見た目は盗賊の姿とは違うし、装備している防具類も違うかな。向こうは戦う気満々とみた」


「うん、俺ならいつでも戦えます。そう言えばあんたあの女性の仲間なんだろ。どう言うことか説明して……あれれ、居ないし」


(うっ、しまった。男も仲間なんだから注意しておくべきだったな。敵の部隊に気を取られて見失った)


 先ほどまでナニ、冷と一緒に来ていた男達は兵隊の登場と同時にナニから離れて女性側に移動していて、ナニと冷の周りを囲む兵隊に加わる。

 

「もう、おわかりかしらナニ、私達の正体が」


「わかりませんけど、誰かしら?」


「聞きたいの?」


「知りたいから言っているのです!」


「ではお教えしますでございます。私はシャーロイ、ルクエでございます。ご存知ですか、たぶん名前くらいは知ってると思いますが。それと私の妹の……」


「ああっ、3女のシャーロイ、ルビカだ〜〜〜」


 ナニと冷の前に現れたのは、次女ルクエ、3女ルビカであって、名前を伝えると、急にナニが動揺して、


「シャーロイ……ルクエですって!」


「ああっ!! 私を言ってない!」


「誰でしたっけ?」


「3女のシャーロイ、ルビカだ〜〜〜」


 ルビカは名前を言われなくて、ナニに注意する。


「ナニ、知ってるのかあの女を? その顔からすると」


(会話から察すると姉妹なんだろうな。姉妹で俺に戦いを挑む程に有名ね姉妹なの?)


「知ってます。もちろん名前だけ。シャーロイ家の者で、王都でもシャーロイ家と名のれば、怖がられるわね。まあ簡単に言ったら有名な大貴族の一家かな」


「貴族なんているのかよ。それでナニの知ってる情報を教えてくれ」


(貴族かよ、まるで中世とかそんな世界ってわけか。つまりはとんでもない金持ちてことなのかな)


「冷のいたピルトの町も含めて、ここは国の領土でも南部に位置します。我が国は、いくつかの有力な貴族が国を分割して管理しているのよ。シャーロイ家はその内のひとつとして有名ね」


「待てよ、国を分割してるなら、つまりは国に属してるわけだろ、仲間だと思うし、騎士団とは敵ではないだろうに。なのにナニと俺に剣を向けておっかない顔してるのはなぜっすかね、俺にはわからないよ」


(敵はむしろ魔物とかじゃないのか。それとも俺が嫌いとか。だとしたら結構ショックだが)


「わからないなら教えてあげてございます。シャーロイ家にとって今のハンマド国王はムカつくの。ハッキリ言って邪魔。我らシャーロイ家がこんな南部におさまってるのが許せないのよね、この説明でおわかりでございますか?」


 シャーロイ、ルクエ次女は正体を明らかにすると、正直に国王が嫌いだと言ってしまい、ナニはというとシャーロイ家が国王と関係が良くない噂は聞いたことなく、敵対してくるのは困る。


「話を聞いた限りですと、シャーロイ家が国王に反乱するとの宣言に聞こえました。まさかそんなバカな真似はしませんよね」


「いいえ、その通りでございます。宣言布告と申したらよろしいですか、今のハンマド国王に変わって我らが国王になるために、あなた達には死んでもらいます」


「なぜかな」


 ナニは死んでくれと言われて、ピンとこない、そもそもなぜ自分なのかの理由もわからないからである。


「わからないようなら教えてあげますわ、隣にいます冷、大活躍中の売り出し冒険者がいますわね、その冷が問題なの、それは冷が勢いよく成長し、国王に協力する、つまり騎士団とも協力していくと、国王側の戦力は超大幅にアップ。今でさえ我が一族と国王側の差があるのに更に差が広がるのは確実です。はっきりいいますと、困るわけ。ただ現時点では冷は宙ぶらりんな状態だときいてますし、国王側と協力する前に潰してしまおうって理由、これで納得でございますか?」


「納得しました」 


「おい、納得するなよ!」


(簡単に納得するなって!)


「だって冷は騎士団に入ってくると騎士団は超強力になるからね」


「だからって殺していい理由にならないよ!」


(騎士団も内に敵がいるってわけか、複雑だな)


「国王も納得するかも」


「アホか!」


 ナニがルクエの説明にあっさりと納得、納得してもらっては立場がない、当然に言い返す。


「アハハハ、笑っちゃう、笑っちゃう! ルクエ姉さん、冷が騎士団に協力なんて嘘かもよ、だってめっちゃ仲悪い感じするもん!」


「言えてる」


 三女のルビカが冷とナニの関係がチグハグなので笑った。


「敵に笑われてるよね」


「ナニの対応が悪い」


「はあ〜私って空気読めないかも。それより戦うようですけど、準備はいかがです?」


「俺ならいつでも戦えます。なんなら俺から先制攻撃しますか」


(相手が女性であるのがやり難いけど、まぁ敵に変わりわない。周りにいる部隊は数は多いがカスだろうな)


「シャーロイ姉妹は噂ではかなりの達人であると聞いたことあります。この威圧感だから、相当な強さに違いないです」


 ナニはシャーロイ姉妹の能力に警戒感を示した。


「なるほど。俺を倒す自信ありか」


 冷は敵とわかると頭を戦闘モードに切り替え、直ぐにでも戦える。

 周囲の雰囲気は冷に感謝する形から、冷を殺す風に変わって兵士は武器を構えた。


「倒すのは冷、そして騎士団のナニでございます!!!」


「おお〜〜〜!」


 シャーロイ、ルクエの掛け声で兵士の士気が上がり、いっせいに襲いかかった。


「どうする、逃げるのもありますが」


「逃げる? 俺が逃げるわけないっしょ」


「じやあ、兵士は私が引き受けます」


「俺も兵士をやる、それと姉妹もな」


(つまり、両方俺が倒します)


「頼もしいです、それではいきましょう!」


 対する冷とナニは逃げる選択肢はなく戦い、姉妹を倒すことで決まった。


「あなた達、冷とナニを倒した者には報奨金と勲章を差し上げますでございます!」


「おおおお〜!」


 兵士は我先に冷に向かって剣を向けると、飛びかかる、その剣を冷はナギナタで迎え撃ち、冷にとってはこの程度の剣など、まるで数にならず、全てを受け止めてしまう。

 兵士は余りの速さに、いったい何が起きたのか、どうやって防いだのか、ぼう然と立ち尽くすと、シャーロイ、ルクエからは、罵声を浴びせられる。

 

「立ってないで、早く斬れ! それでもシャーロイ家の兵士なのでございますか!」


「けど……やっぱり強え!」


「ハンパないっすよ冷は。見えねえし!」


「立ち止まるのはダメ、斬るんだもん!」


 三女ルビカからも激励される。


「ようし、まだまだ、やるぞ!」


「手加減してましたね冷、本気で攻撃する必要がありそうよ」


「手加減してたけど、そんじや少しだけ本気だすかな」


 冷はただ受け身の防御しただけでは、相手の気持ちは変わらないとわかり、兵士に攻撃を与える作戦を考えて、スキルを使い圧倒的な強さでひれ伏したくなった。


(防御だけではまだ俺の強さがわからないならスキルでも使ってやろうかな)


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