120
120
ナニと冷は馬車を一台使い追いかけることにし、連れさられた女性の知り合いの男も同乗、聞くところによると女性3人は隣の町に行こうとしていて、男は付き添いであったと聞かされ、彼女との距離的にどこまで離れているかが気になっていた。
「その盗賊って目的は何なんだ?」
(金か。エロいならヤバいよな)
冷が隣のナニに聞いた。
「女性だけをさらったよう。他には盗んでいないらしい、となると女性が目的だな。悪い奴らだと決定。女性だと金になる。特に若い子らしいから余計に金になる。それも3人もだ」
「女性だと金になるか。なんて酷い奴ら。許せないぜ!」
(その女性を売ったら金になるのは、もっとヤバいよな)
「君は女性の味方だというのかい?」
なぜかナニは冷に意外な質問をした。
「当たり前だ。俺はどんな女性でも助ける。変なことをされてる可能性もあるなら、なおさら許せない!」
(盗賊って言うからには㊚だろうな)
「へ、へ、へ、へ、変なこと……」
ナニは急に言葉の調子がおかしくなり、顔が赤くなる。
「どうしたナニ。俺がおかしな事を言ったかな?」
「い、い、い、いやその、なんて言うか……」
変なことと言われてナニには冷がした行為を思い出してしまっていて、ミーコらにしていた、裸にしてハーレム状態だったあの部屋でのことを。
「えっ……と……あれ、ナニ。もしかして俺がミーコらにしていたのを言ってるのか!!」
「そ、そ、そ、そうだ! あんな、女の子にそれも3人もの女の子に君は……。アレが変なことじゃないとでも?」
「いや、俺がしていたことは日常生活だからさ。あの子らも嫌がってるわけじゃないんだよ」
(俺がしているのと本当に日常生活なんだよな。わかってくれるかな)
「に、に、に、に、に、に、日常生活ですか!!!!」
「そんな驚くことない。俺と盗賊の違いは女の子が嫌がってるか嫌がっていないかの違いだな。ミーコとアリエルとリリスは嫌がってない。そういうことだ」
(俺の思い込みじゃないことを祈るけど)
「はぁ!!!! き、き、き、君はなんて恐ろしい男なんだ。女性からみて恐ろしいとしか言えない!! 私から離れてくれよな!」
冷の女性をエロとしかみない態度にナニは身の危険を感じる。
「だから俺は無理矢理はしないっての! 盗賊じゃないから! まぁそれはいいとして、連れさられた女性は可愛いのかな?」
話の途中でも冷は可愛いかどうか気になってしまう。
(だって重要な点だよね)
「や、や、や、や、やはり、君は盗賊と変わらない!」
ナニには冷と盗賊の区別がつかないのだった。
「全然違うから!」
「む、む、むしろ、君の方がヤバイじゃん!」
「ヤバくない、ヤバくない。めっちゃ安心。安心してくれ」
全く安心などできないナニは、少しだけ冷から距離をとるのである。
そのまま走っていた馬車、そこへ男がナニに指摘する。
「すみません話の途中ナニさん!! アレです! アレが盗賊の乗っていた馬車です! 間違いないです!」
「なんですと!! よし馬車を止めるんだ! ここからは歩いて慎重に接近しよう」
「生きていればいいが……」
「大丈夫です、追いつきさえすれば、連れ戻せます。あなたも私と来てください。彼女達の顔がわかりませんし、お守りしてます」
「ついて行きます」
心配な気持ちを押さえられない。
「ついに追いついたぜ盗賊。俺が来たからにはもう終わったも同然」
(馬車は一台のようだ。そうなると敵の数も少ないと予想できる。恐らくは10人もいないだろう)
「ゆっくりと盗賊の馬車に近づく。冷も一緒に行動とする!」
「わかりました」
盗賊の馬車は森林が覆われた土地に停車していて、辺りにはその馬車一台のみが見え静かで、緊張しつつナニ達は馬車の付近まで接近に成功。
音もなく近づくのは難しいが、盗賊は気づいていないようであり、監視役の盗賊がひとりでいたのを気づかれないようにして接近、監視役は周りを確認するので首を左右に振っていた。
「ナニ、監視役の盗賊がいる、俺がヤルか?」
「頼む冷、出来るだけ静かに倒してくれよ」
「わかった」
ナニに監視役を倒す許可を得て冷は、接近していくことに、音もなく接近するのは得意であるから、まるで気づかれずに接近し、監視役の盗賊の背後をとる。
後は簡単である。
後頭部に軽く打撃を与えると、一発で気絶する。
(こんなの朝飯前です)
いとも簡単にやってのけた冷にナニは頷くと、しっかりと仕事をこなしてくれて、ありがとうと笑顔に、そこから再びナニに合流し、
「腕はさすがです!」
「俺の腕はこの程度じゃないけどよ。この後にわかるさ。連れてきて良かったと思うよ」
「そうなることを期待します」
冷の動きと結果に見ていた知り合いの男達は驚いて、
「す、す、す、凄い腕の持ち主! さすがは騎士団ですかね」
「いいえ、厳密には彼は騎士団ではないの。まだね。これから入団してもらう予定かな」
「えっ……騎士団ではない! 頼もしいお方です」
男は冷を見てすっかり驚いていた。
「ここからが本番。馬車に接近後に、いっせいに中に入る。盗賊はまだ気づいていないはず。そのスキをついて盗賊を全員まとめて捕らえます」
「あの〜殺しちゃってもいいのかな」
(捕まえるよりも楽かもしれないし)
「出来れば生きたままの方がいい。なぜかと言うと賞金首がかかっている盗賊かも。生きている方が価値があるのです。王都に捕まえていけば、大いに評価されます。もちろん場合よっては殺すのは仕方ない。その時しだいで、判断は任せます。よろしいですか?」
「ああ、俺ならオッケー」
「行きます」
盗賊のいる馬車はまだ静かで、音もなく監視役が倒れても変化はない。
知り合いの男達と騎士団は近くから見学で待機に。
一瞬で決まると予想されるので、足手まといにならないよう配慮だ。
行くなら今しかないタイミングでナニ、冷が馬車の後方から入っていく。
「誰だ!!!」
中に居たのは情報にあるように女性、それと武器防具を身に着けた男が4人いて、女性は3人ではなく2人であり、ナニ、冷に対して声を上げたのは男のひとりだった。
馬車の中は狭く、とても暴れるような戦いは無理となるので、冷は反射的に肉弾戦での戦いを選ぶと、4人の盗賊は冷を見た途端に剣を抜こうとした。
しかし抜く前にすでに倒れていた。
冷の拳が4人の腹や顔に入り気を失っていて、盗賊らは余りの速さに殴られたことすら気がつかないで倒れていた、もっとも冷にしてみれば、準備運動程度の動きではあったが。
「ナニ、指示通りに気絶だけで終えたぜ」
(楽勝、楽勝)
「は、は、は、は、速っ!! ここまでの速さは私も見たことはない! てことで盗賊の方は終わった」
冷の速さは異常と言え、これまでに数々の歴戦のあるナニでさえ、目視できなくて、4人が倒れて初めて冷の攻撃なのだとわかった程だ。
そして驚いたのはナニだけではなく、馬車にいた女性の2人も同じでありナニを見て、
「あ、あ、あ、あの、あなた方は……」
「騎士団のナニ」
「と冷です。よろしく!」
「た、た、助けていただきありがとうございます。今のはもの凄い速さでしたが」
「そうかな、これでも速度は抑えたんだけど。だって殺すなって言われていたから、なるべくゆっくり動いたんだよ。でも女性の2人が無事でなによりです!」
冷はあっさりと倒して女性を見て感じたのはとても綺麗な2人であったこと。
(すっげー美人じゃんか。それも2人とも!!!!)
「あなたは、もしかしてあの冷さんですか!!!」
何かに感づいたかのように。
「そうですね、あの冷です。知っててくれて嬉しいかな。俺ってかなり有名人らしいな」
「はい、それはとても有名人! とりあえず馬車から降りてサインをください!」
冷に感謝するどころかサインまでねだりされて、冷はご満悦となる。
「ああ、いいとも!」
目的であった女性が無事に盗賊を捕らえることに成功、女性も全員無事であったので、満足のいく結果となり、ナニは喜びたいと思ったが、あまりにも緊張感のない冷のデレデレした態度に、やはり連れてくるべきではなかったのではと後悔もあった。