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「フフフ、バカと言われてしまったか。魔人も甜められたものだ。そこらの魔物と同じ扱いですか。それはいいとして、これには深い理由があるんだ。話を聞いてくれます?」
ゴーレムの不気味な笑いに長女ルテリが口を開いて、彼女は頭からゴーレムを否定はしないでいたのは、親の伯爵とは違い、利益があるとしたらと考えてのこと。
「魔人を舐めていません。誰もその様な愚か者はこのシャーロイ家にはいません。ご存知かわかりませんが、私は長女シャーロイ、ルテリ。もし仮に私達が騎士団に手を出せば、つまり魔人側の意見に同意して、攻め入ったとしたら国に反抗したとなるのは確実です。そこは理解してるわよね」
「理解してる。もちろん理解して言ってる。その上で言ってるのだけど、それともう1点、これは俺の偏見かもしれないが、シャーロイ家は現在の国王に不満があるのと違うかいルテリさん?」
「……なぜ、そう思う。あなた方がシャーロイ家と何の繋がりがあってですか。何も繋がる要素はないし、過去にもなかったはずですし、言ってる意味がわかりませんわね」
「やはりそうだな。今の反応で確信した」
ゴーレムはルテリがきっぱりと否定したのをみて、逆に確信に思える。
「いいえ、シャーロイ家は不満など一切ありません。もし勘違いなら、どうぞお帰りくださいませ。こちらはそれで構いませんから」
ルテリは完全に否定するも、しかしゴーレムはそれでも引かないで。
「嘘だな。絶対に嘘だよな、今の感じ。わかるのだよ、本来なら自分が国王になるべきだと思ってるだろうルテリよ。国のある大陸の南部を支配しているのだが、権力は十分にある、南部だけに留まらずに勢力を広げて、国王にまでなりたいと願ってるのはわかるし、今の立場に不満ありありだな。さらに悪い話は、冷の噂は耳にしてるはずだが……」
「冷……、あ、あ、あの魔人に手を出した冷ですか。もちろん耳にしてるし、この大陸南部に滞在してるとも聞いた。そして冷の活躍で魔人の勢力は押されてるとも。とても信じられない話ですが」
ルテリは冷静に会話をすすめてきたが、冷と名前が出た途端に冷静さは揺らいで、現在のところシャーロイ家も冷に関する情報を集めている段階であって、近々には城に呼ぶ計画もあった。
「つまりは冷が活躍すれば今の国王はより強くなり、魔人をも倒せるのだから強力な国王の戦力アップであるし、シャーロイ家は逆に弱くなる。よって国王を引きずり下ろしたいシャーロイ家には、急成長の冷は邪魔な存在となるよな。違うかい?」
「話では魔人に手を出した上に倒した程だ。そんな化け物がいたら我がシャーロイ家の力と国王の力に、もちろん国王側の力は上で、騎士団がいるし、上級の冒険者も関係しており、差が出るのはわかる。だが今の話の中で、話がわからないのは冷と騎士団を皆殺しに行くと何の繋がりがある。関係ないでしょう」
ルテリはゴーレムの考えてることがはっきりと理解していなくて、探りながらの会話にならざるをえなくて、周りにいる親の伯爵もまた、姉妹も同じ気持ちである。
「それがあるのさ。まず俺にとつて冷は邪魔。要らない。死ねって感じ。入ってきた情報ではあるが、かの有名な騎士団のナニが、当然知ってるよね彼女は、冷達と接触。そして現在も一緒に行動中。それもこの大陸南部でのこと。俺が言いたいのは冷と騎士団のナニも含まて皆殺しにしてしまえば、俺はハッピーですし、そしてシャーロイ家も国王の力が弱まるってわけよ。冷が国王側についたら、つまりシャーロイ家にとって不利な条件である、国王側の勢力は大幅にアップする。それならば協力して皆殺しにすれば、俺もシャーロイ家もお互いに利益があるってわけ。どう?」
ゴーレムはルテリに話の全容を話し、これで落ちるなと心を読み通りして、シャーロイ家は話に乗ってくるなと確信する。
ルテリはさすがに自分の意見だけでは決められないとなり、決断しなければならないと、周りの顔を見渡し、父親の伯爵ルーデンス、母親ミナミ、軍将アイシム、妹のルクエ、ルビカの顔が代わる代わる目に映る。
断るのが普通である、相手は魔人だし、魔人と組むなどあり得ないのであれば、でもゴーレムの言うように組めば国王側の勢力を減らせるチャンスもなくはない、願ってもないチャンスなのも言うとおり、そこで父親をもう一度見ると頷く。
これはチャンスだという頷き。
「ルテリ、ウチの内情は知られてるようだ」
「わかりました。お父様」
「話のわかる家系だな」
「シャーロイ家の内情にずいぶんと詳しいのね。お互いに本音で話しましょう、ところで今の話は面白い話でして、騎士団を皆殺しにするのなら協力してもいい。しかし条件があります。シャーロイ家が騎士団に手を出したと知られたら終わり、失敗です。ですので町の中では戦闘は不可能となります。誰も見てない場所での戦いが必須条件となるし、そして生き残りの騎士団も無くすこと、1人でも生き残ったら失敗です」
「ああ、それは当然だろう。王都に知られたら終わりだもんな。だけどこっちも条件があって、それ程難しい話ではなくて、冷の仲間に1人、リリスという者がいるのだけど、その女は生かす。そして俺が連れて帰る」
リリス以外は要らない立場を伝える。
「いやいや、それは無理、無理、無理。だって全員殺さないと意味ないし、そのリリスがもし誰かに話して国王側に知られたらどうする! それになぜリリスだけ生かす?」
なんの意味があるのよと、よほど理由があるとみた。
「リリスのことを知らないみたいだな、その言い方だと。言ったら驚くか、それとも信じないか、そのどちらにしても殺すのはダメ、理由はリリスは淫魔族の女だからだ。もう国王側はこのことは知ってるはずさ。魔人にとって、これは魔族全てを含めて、淫魔族は特別な存在である、至高の存在なんだよな。よって他の者達は全員殺してもいいし、リリス以外は殺す手はずさ。そこでシャーロイ家が心配する問題、要は国王側の者の耳にリリスが生きているのを隠せば問題なし、後はリリスには口封じするとして、問題ない」
淫魔の女などいるかと思ったのが伯爵ルーデンスで、話を聞いてそんなの伝説の話であるし、あり得ないバカなことを言ってるなとルーデンスは思うとゴーレムに、
「淫魔だと、ふざけるなよ。いくらなんでも淫魔族が生きていたなんて噂は聞いてないし、ふざけた笑える話、絶対に淫魔じゃないだろ」
「フフフ、伯爵ルーデンス、嘘であったとしよう、嘘ならば俺がここまですると、俺がここまでしてやる意味を考えて、つまりはマジだから」
「淫魔族の女が本当に仲間にいると……。そして冷は魔人を倒しまくると。その話が本当だとしよう、冷とかいう冒険者は何者なんだい。全くもって常識が通用しない相手だ」
「そうだよ、冷ってのは常識は一切通用しないし、ナメてかかるとシャーロイ家ごと消えて無くされるぞ」
「ぬぬぬ……」
伯爵ルーデンスは冷の噂話は聞いていたが、今出た淫魔族の話は知らなかったし、長女ルテリも同じく。
もし淫魔がいたら、本当にいるのなら、また話は狂ってくるのは容易に想像できて、世界が動揺する程のインパクトのあるニュースとなる。
リリスを生かしても、冷と騎士団を殺せれば、やる価値は十分にあり、国王側には大ダメージが加わるのは必至で、恐らくは魔人が仕返ししたとなるのなら、殆どシャーロイ家には被害は及ばないとの憶測もあった。
リリス1人くらいは大目に見るか。
「わかりました。リリスは生かすとの件は受けます」
長女ルテリが決断すると、妹のルクエ、ルビカも驚いた。
「私も受けます」
ルクエが言うと、
「私も同意します」
ルビカも賛同する。
三姉妹が実質的にシャーロイ家を支えていて、その三姉妹が決定したので軍将アイシムと騎士ジェムスは、
「…………こ、こ、こんな、よろしいのですかルクエ様」
「よろしい。ゴーレムの依頼話を受けます。ゴーレム、これでよいか」
一見ゴーレム側の有利な話にも思えるも、長女ルクエには、失敗した時はゴーレムに脅されたと話をでっち上げる腹つもりとし、どうせ魔人なのだから、完全に信用したら負けだし、利用できるだけ利用してしまえばいいと開き直り、逆にゴーレムは三姉妹を見て褒めていた。
まだ若い、長女ですら20才にも満たないのに覚悟を決めることに、それに反して軍将などは大したことない、ゴミの程度の者と思える。
「今の条件で決定とする。実行するのがいつかが問題だ。早い方がいいだろう。奴らは馬車で移動してる。大陸南部にいる今がチャンスだろう」
「わかりました。直ぐにでも我が部隊を集め向かわせる」
父と母は残していい。
三姉妹と軍将、騎士、部隊で望むのがベストで、かなり残していくのは、万が一三姉妹と兵力がないすきに、ゴーレム側の軍が城に攻めて来る可能性もないわけではない、完全には信用しないように心に決めた。
ゴーレムはいったんは城の外に出されると、待っていたのはギャン達。
「ゴーレム様。いかがでしたか?」
「話は決まった。全て俺の思惑通りだ。リリス以外は抹殺する。それもシャーロイ家の軍隊を使ってな」
「さすがゴーレム様です。頭が良い! あいつららバカですぜ!」
「もし、裏切り行為があればシャーロイ家ごと抹殺だ。そうすれば大陸南部は俺の領地だ」
「素晴らしい!! 素晴らしいです!! それで有名な三姉妹とはどうな女だったのですか。噂では、とても強い女だと聞いてます」
「ああ、それなら間違いない、度胸のある女だな3人とも。それに俺を見ても動じない。気に入ったぜ」
「おお! ゴーレム様に認められる女とは見てみたいものです」
「直ぐに見れるさ。な〜にお前たちの方が遥かに、いい女だし、可愛らしいよ。今日にも行動開始する、俺の時代の幕開けの日にしてやろう!」
ゴーレム達はシャーロイ家の城から距離を取り、シャーロイ家軍隊が収集されるのを待つ。
シャーロイ家の城には三姉妹が集まり、落ち着かない長女ルテリは妹にも覚悟を求める。
「ルクエ、ルビカ、これは大勝負になりそうよ。生きてきて1番の」
「ええ、ルテリ姉さん。シャーロイ家の大いなる繁栄の為。今の国王に痛い目を合わせてやりましょう!!!」
次女ルクエは意を決して言う。
「ハンマド国王もついでに殺しちゃおうぜ、姉さん!!!」
三女のルビカは最も野心的である。
「ルビカ、それはまだ無理。今はダメージを与えてやる。そしていつの日かシャーロイ家が国王となるのよ!」
「そうですわね!!!」
「しかしルテリ姉さん、ゴーレムは異様な空気を持っていましたけど、あれは魔人の持つ空気なんですかね」
次女のルクエが思い出して言った。
「私もなにせ初めて見たのだから、たぶんそうなんだろうな」
ルテリは改めてゴーレム級の魔人を前にして、恐怖を感じてしまうと、三女のルビカは違った印象を持っていて、
「あら、空気なら感じたわよ、でも感じたのは恐怖というより、女性っぽい感じかな。俺っていってるけど」
「ゴーレムが女性だと言うの?」
「う〜んと、なんとなく感じただけ、気にしないで姉さんたち!」
「まぁ男でも女でもどちらにしも、恐ろしい存在であることに変わりはない……」
三姉妹はこの時を待っていたのであり、国王側にダメージを与えるチャンスを得て、テンションが高まってくると、軍隊を招集して、いざ冷を抹殺しに立ち上がった。
「ルテリ様、どうか考えを直してみては?」
いざ軍隊を招集したのに邪魔をするのは、伯爵の側近であり、シャーロイ家の右腕でもある、軍将アイシムと騎士ジェムスが止に入るようにしてきた。
「もう決断しました。お父様とお母様は賛成しました」
「しかし……魔人と協力するなど、考えられない事態です」
「軍将アイシム、騎士ジェムス、このまま冷が国王側の戦力となっていったら、どうなるかを考えてみなさい」
「……」
「冷は急成長しているとのことで、潰すなら今しかない。国王側の騎士団に入団する前に、潰す。この考えに反対なら、アナタを転職させます。よろしいですか、軍将アイシム、騎士ジェムス?」
「ええっ! わ、わかりました、従います」
「私も、従います」
軍将アイシム、騎士ジェムスは、ルテリにキツく言われて、思わずビビってしまい、考えを変えてしまった。




