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 魔族を追い返して安心していた騎士団側とは逆に、リリスを狙うゴーレムはある考えを思いついていた。

 今のまま冷達を襲っても難しい戦いになるなと予測したからであり、一度戦ってみてわかった。

 アレは並みの冒険者などではない。

 楽に勝てるなんて考えはよしたほうがいいし、それにガーゴイル達の件もあるのであり、あなどると痛い目にあう。

 戦った相手のスキルを使えたのは、非常に厄介なものとして、そうなると自分のスキルのグランドシェイカー、ライトブラストも使える可能性もあり得ると知って、これでは不利な戦いになる。

 自分も魔族を多数加えても、数では勝ててもどうなるかはわからなく、そこでゴーレムはより勝てる方法を考える。

 ここは王都から南部に位置する地区であり、南部一帯を治めている貴族があって、治めるのはシャーロイ家である。

 シャーロイ家は有力な一族であり、権力もある。

 魔族のギャンに、


「ギャンよ、向かう所がある、シールドとボーガも呼べ」


「直ぐに呼びますが、どこへ」


「シャーロイ家に行く。場所を調べてくれ」


「シャーロイ家にですか? わかりました」


 何を言ってるのかわからないのでピンとこないギャンであるが、命令は絶対であり、直ぐに調べることにし、ちょっと調べれば分かるくらいに有名な場所であった。

 報告をするとゴーレムは魔族を引き連れてシャーロイ家にのある家に向かうことにし、目的は部下には伝えておらず、困惑していて戦うのだろうと予想した。

 

「シャーロイ家はここら南部では有名な一族です、大軍の騎士を持っておりますし、大量の貴金属もあるでしょう。それを奪いにいくのですねゴーレム様。シャーロイ家を滅ぼすと」


 するとゴーレムは首を振って、


「ボーガよ、滅ぼす為ではないんだ。シャーロイ家に俺は戦いを挑むのではない」


「それでは別の理由があって、シャーロイ家に行くと。わかりませんです、貴族ですから我々魔族は嫌いです。敵ですから行けば戦いになるのは避けられないのでは?」


「普通なら俺を見たら慌てて武器を持つだろう。人族だから当然だ。しかしある話を持ちかけてみようと思う」


 ある提案があって持ち込むのは面白いと考えて。


「ある話……」


 ボーガは何かなと思うが、全くわからないし、戦う以外に何かゴーレムの期待にこたえられるとは思えないのである。


「協力して冷を始末しないかとな」


「えっと、と、貴族の連中に協力をしろと。どうやってですか」


 想像もしてない考えに、ゴーレムが狂ったのではと。


「考えてみたのだが、シャーロイ家はもともとは王家にもなったことのある血筋。今は南部を支配してはいるが、本来なら国王にもなれる力はある。奴らは現在のハンマド国王を嫌ってるのだ。一緒に冷と騎士団などを始末すれば、冷は騎士団に入団してみろ、今よりもハンマド国王は強くなるだろ。そしたらシャーロイ家はますます国王の座が遠のく。つまり一緒に冷達を始末するのはシャーロイ家には特となる」


 シャーロイ家との共闘を提案する。


「さすがゴーレム様。シャーロイ家の戦力を利用して冷や騎士団を始末すると。考えることが素晴らしいです」


「しかし、俺の話を嫌い、帰れと言ってきたら、その時はシャーロイ家を潰してやる」


「はい、ゴーレム様」


 話が合わなければ戦うという意味と理解して、ボーガは薄く笑みを浮かべる。

 利用すると決まり即座に出発して、シャーロイ家の城のある地区まで来ると警備は厳しく、通行止めをして不審者を防いで、当然にゴーレム達も警備に止められた。


「ここから先に入るには許可が入ります」


 警備は見るからに敵と判断出来る外見に警戒感をあらわして。


「許可はない。俺はゴーレム。シャーロイ家に用事があってきたと伝えろ」


「ゴ、ゴ、ゴーレムっ!! 何しに来た!」


 ゴーレムと聞いて驚いて、なにしろ魔人だと誰でも知ってる名前であるし、このまま魔人を通すわけにはいかないとなり、剣を抜いた。


「キサマ! ゴーレム様に剣を向けるとは無礼な奴だ!」


 ギャンが警備に対してスピアを向けた。

 

「まぁ待てギャン下がれ」


「しかし……はい、下がります」


 ギャンはゴーレムに言われておとなしく下がる。


「実は戦いに来たのではなくて、話がある。シャーロイ家にとつて有益な話が。そう伝えてくれ」


「わかった……」


 警備はゴーレムの言うことを素直に受け止めていいものかお互いに顔を合わせて相談した結果、数人の警備、その一人が城に伝言をしにいった。

 その警備が戻ってくるまでの間はゴーレムはじっと待ってて、逆に魔人を前にして警備の方は怖くて震えが止まらないで、剣を持つ手はぶるぶると震えている。

 警備にあたっている衛兵は、魔人級な魔族など見ることはなく、それどころか戦闘経験すらあまりない、普通の雇われた衛兵に過ぎないので、怖がるのは無理もなかった。

 城ではシャーロイ家に伝言が伝わる。


「お伝えします!!!! 城の門に……ゴーレムが来ております!」


 伝言を伝える警備に、それを聞かされたシャーロイ家の軍将アイシムと騎士ジェムスは突然のことに驚いて。


「ば、ば、バカな。なぜゴーレムが城に! まさかこの城を奪いにきたとか?」


「なんでも、ゴーレムが言うにはシャーロイ家にとても有益な話があるそうです。本当でしょうかわかりません。もし嘘なら危険です」


「追い返すのも危険だろう。無理に追い返して反感を食らうこともあり得る。ここは伯爵に相談する必要があるな」


「はい」


 軍将アイシムはゴーレムの件を報告しにいき、報告するのはこの家の主である伯爵シャーロイ、ルーデンスと伯爵夫人シャーロイ、ミナミに。


「なに用ですかアイシム」


「と、と、とんでもない事態になりまして、報告にまいりました」


「詳しく話しなさい」


 話があり、アイシムの慌てようからして普通ではないと理解した。

 シャーロイ家は伯爵と伯爵夫人がいてその娘である3人の娘がおり、3人の女達が実質的に家業を継いでいた。


「そ、そ、それが、あのま、ま、魔人ゴーレムが城に来ました! そして話があるそうで、それもとてもシャーロイ家に有益な話だとか、いかがしましょうか」 


「ゴ、ゴーレム!!! あのあのあの魔人ゴーレムがか!! 直ぐに追い返せ……と言いたいが、話だけでも聞いておこうか。もちろん何が起こるかわからないんで、アイシムとジェムスも同席して。それと娘達も同席させる。あの魔人だ、我が城など潰せるだけの力はあるだろう」


「必ず私とジェムスでお守りしますからご安心を。ではゴーレムを城の中に招きます」


「十分に気をつけて!」


 ご安心をと言ったが、それはあくまで仮定の話であって、必ず守れる自信を持っているわけではなく、声は小さくなっていた。

 報告を終えて軍将アイシムはゴーレムの前にやって来て、初めて見る中級魔人を前に、


「お、お、お、お、お前が魔人ゴーレムかよ!!」


「そうだ。ヨロシク」


「な、な、中に入れ。話は聞こう。ただし、少しでも変な態度を取ったらその場で退出してもらうぞ! それと仲間はここに居てもらうが」


「了解した。シールド、ギャン、ボーガはここに居て俺の帰りを待て。俺を信用しな」


「はい、ゴーレム様」


「……さぁ入れ!!」


 軍将アイシムは魔人に信用しろと言われて混乱していて、こんな奴信用できるかよと内心は思うし、最も信用できない種族との対面で緊張感が高まるが、だけどもそれは相手にはとても言い出せないので、黙って城の中に入れた。

 軍法会議室では伯爵、伯爵夫人、騎士ジェムス、そして新たに呼ばれた第一位の長女シャーロイ、ルテリ、二位次女シャーロイ、ルクエ、三位3女シャーロイ、ルビカも席につき、軍将アイシムがゴーレムを連れてくると一気に雰囲気は暗くなる。


「……」


「おやおや皆さん、怖がらなくていいんですぜ。はじめましてゴーレムです」


 部屋に入ってゴーレムの方から挨拶すると、全員が余計な挨拶だろうと思うし、しかもタメグチかよと。

 

「ほ、本物のゴーレムのようだ。それで魔人が我が城に何の話があるって」


 伯爵ルーデンスが探る。

 コイツは何を考えてるの?


「ずいぶんと俺は嫌われてる見たい。じゃあ本題としようか。俺がここに来たのはあなた達シャーロイ家と一緒になって騎士団を皆殺しにしませんかって話です。あなた方と一緒に、どう?」


「はぁ!!!!」


 全員がア然となったのは無理もなく、何言い出してんのって感じで。


「バカも休み休み言え。我々は国王側の立場だ。騎士団を皆殺しなどするわけないだろう!」


 軍将アイシムがブチギレて言ったのは当然で、魔人てバカなのかという風な言い方をし、他の参加者も同じ意見であって、ゴーレムの言ってる意味がまるで理解できなく、バカなのかと思った。

 会議室にいる参加者全員がゴーレムに頭が悪いのかなと視線を送ると、中級魔人は脳味噌が足りてないという雰囲気に包まれる。

 ゴーレムはそれも予想の範囲内ではあって、むしろ自分がバカなのかと思われるのを楽しむ気持ちもあり、なぜなら利用するのはこっちでありシャーロイ家は利用される側にする計画なのよと隠しているから。

 会議室は、かつてない程の異様な空気が立ち込めていた。

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