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冷の乗せられた馬車は王都に向けて出発し、その後は順調に進んだ。
ナーべマルはゴーレムの手先であると察知し、いつゴーレムが来るかと心配していて、恐る恐るでありながら、馬車を走らせる。
そのゴーレムは騎士団を潰してこいと命令してから、戻ってきた配下の魔族を向かい入れた。
もちろん良い結果の報告を聞くために。
「で、騎士団は潰してきたか?」
単刀直入に問われたボーガは、
「はい、1つの騎士団は壊滅させました。恐らくはピルトの町を警備しにいかされたものと思われます。そこを我々でやりました」
「よし、よくやった。ピルトに向かっているなら俺の存在が王都に伝わったたいうことだろうな」
「はい、王都はきっとゴーレム様の動きにビクビクしているはず。なぜゴーレムが動いたのだと騒いでいることでしょう」
「俺が動かないと思ったら大間違いだぜ。昨日までは静かにしていたからといって、いつまでも静かにしているわけじゃない。魔人がここまでコケにされてるのだ。黙ってられるか。俺は黙ってられねえ。そうだろ?」
「はい、ゴーレム様の言う通りです。それとゴーレム様のお探しの者も発見しましたのです!」
ボーガが言うとゴーレムは声を高くして喜び、
「なんだと……。リリスか!!」
「リリスでした。我々が次に発見した騎士団がいました。戦闘中に突然リリスが参戦してきました。たぶん冷もいたはずですが、なぜか出てきませんでしたが」
そこの点はボーガは納得出来ないでいて、なぜ登場しなかったのだろうかと。
「冷は別行動なのか、それとも何らかの理由があって出てこなかったと考えていいな。別行動は、ふに落ちない。一度俺が襲っているわけだし、気をつけてともに行動していていい。騎士団と一緒にいたのも気にはなる」
「いかがしましょうか」
「リリスはてっきりピルトの町にいるのだと思っていた。なぜなら動くのは不利。俺の攻撃を受けるのだし、知らない場所はリスクを負うためだ」
「しかし間違いなくリリスでした。それに同じく仲間のアリエルとミーコも」
「わかった、襲うなら今がチャンスか。邪魔なのは冷だけだ。後は問題ない。俺が行くからお前たちも来るんだ」
「はいゴーレム様」
ボーガは深く頭をさげると出撃準備にかかって、ギャンとシールドも同じく行動に移した。
ゴーレムも一度はリリスを捕らえるのに失敗したが、まだ諦めてはいなかった。
むしろチャンスを伺っていて、今がチャンスだと思い、ゴーレムとその配下は立ち上がり、リリスがいる騎士団の一行に狙いを定めたのだった。
騎士団のほうはナーべマルが外を確認しつつ走っている。
そこでナニに尋ねた。
「リリスが淫魔だとしたら、王都はどう思ってるかな。僕は王都の考えが甘いような気がするんだ。事態は王都が考えてるよりも深刻なんじや」
いつもはのう天気なナーべマルも、今は微妙な表情になっている。
「淫魔が魔族と接触することの意味がどれほどなのか、私もわからないわ。王都にリリスを厳重に監禁させる気はないと思う」
「だいたい王都はいつも後手後手さ。魔人を倒す気はなくて、静かにさせたいって感じだから。僕はきっと国王は慌てると思うな」
「ナーべマルはこのまま無事に王都に着けると思うかい?」
「……僕は無理だと思ってるよ。魔人だよ相手は。王都まで距離があり過ぎる。それで僕は考えてみた、二手に別れるのはどうかな」
全滅するよりは別れたらどちらかが生き残るだろうという発想である。
「つまり君と私が別れると……」
「そうなるね、先ずは僕は先に出発する。そこにはリリスは乗せないで。そして後からナニがリリスを連れて出発する。これでゴーレムが僕の方へ来れば騙したことになって作戦成功。そのままナニは王都までリリスを頼む」
「それだとナーべマル、君が危ないよね」
「まぁ僕はゴーレムとは戦うしかないかもね。それでもリリスは王都に行ける可能性が高まる」
「ナーべマルが、その作戦で良いのなら私は構わない……」
ナーべマルを信頼して言った。
確かに全滅は免れる必要があるからだ。
「じゃあ決まり。次の町で実行しましょう」
ナーべマルの作戦はナーべマルがオトリになる作戦であった。
聞かされたナニは苦しい選択だと思ったが、ゴーレムから逃れるにはその方がいいと判断した。
馬車は町に着くと停車した。
冷は相変わらずたった独りで馬車に乗っていて退屈で困っていた。
(王都に着いたのかな、ちょっと外を見てみるかな)
外を見ると馬車は止まってはいるが王都には思えなかった。
そこで冷は騎士団に、
「ここが王都なのかい?」
(王都にしては田舎っぽいかな)
「いいえ、まだ途中です。冷さんは馬車にいてください」
「ミーコ達は一緒にいるよな」
(俺にはわからない)
「はい、一緒にいますから心配なさらずに」
「それなら合わせてくれ」
(顔を見ないことには信用できないよな)
「それは困ります」
「ナーべマルに会わせろ、話が通らないぜ」
冷はこれでは、らちが明かないとなりナーべマルを呼ばせようとした。
(ナーべマルなら通じるだろう)
「……それは」
とても騎士団の兵が困っていたら、タイミング良くナーべマルが現れて、
「冷、僕に何かしら」
「アリエル達はどうした、会わせてくれ」
「今日はこの町で一泊します。けども会わせるわけにはいかない。彼女達はこのまま僕が管理します。冷とは別の宿屋に泊まってもらう。冷は厳重に見張りをつけておくから、そのつもりで」
「ケチ臭いなナーべマル!」
(なんか俺に会わせようとしない気がする。気のせいかな)
「何とでも言ってくれ。僕は冷が静かにしていてくれればいい」
「会わせろってばよ! 怒るぜ俺もいい加減にしないとよ!」
(段々とイラついてくるよ)
「ダメなものはダメ!!」
「だったらここで暴れてやるぜ!」
(俺を馬鹿にしやがって!)
「わかった、わかった、暴れるのは待ってくれ。そしたら条件をつけよう。アリエル達の宿泊する宿屋に30分だけ会わせる時間を与える」
「少ねえ、1時間だ!!」
(30分じゃ短かすぎだろ)
「ダメです!」
「1時間にしろ! それが俺の限界だ!!」
冷は意地でも食い下がろうとしない。
ナーべマルもわがままな冷に困る。
(本当なら1時間でも少ねえけどよ)
「わかった、1時間だけ時間を与える。そしたら王都に来てもらう」
「決まりだな」
ナーべマルの指示でリリスとミーコとアリエルは同じ宿屋に宿泊した。
ナーべマルとナニも同じである。
夜中にゴーレムと魔族が襲来してくる可能性も考えてのこと。
いつでも守れるように近くに寝泊まりすると決めた。
またいつ来るかわからない以上、それは当然と言えた。
逆に冷は離れた場所にある宿屋に充てがわれた。
宿屋に居ても拘束されるのは変わらないでいて、行動に制限をかけて管理しやすくした。
もちろん冷が爆発しないのが大前提ではあるが。
ひとたひ冷が爆発すれば騎士団は崩壊しかねないだけに、ストレスの発散が必要がある。
あえて離れた場所にされたリリス達はナニから説明されて、
「リリス、アリエル、ミーコは今日はこの宿屋に宿泊してください」
「わかりました」
宿屋には文句はなかった。
特別狭くもないので。
「それと条件付きで冷が来ます。1時間だけ」
「冷が! そうですか、部屋で待っています」
アリエルは少々驚いていたが、部屋を案内されてリリスとミーコも同部屋となった。
「ねぇ、後で冷氏がくるみたいね」
「会いにくるくらいだから、起きてましょう」
「私は何かしら嫌な予感がするのたけどよ……」
「リリスは考え過ぎよ。冷はきっと私達が心配で会いにくるんだと思う」
「アイツのことだ、わからないぞ」
リリスだけはなぜか疑っていて、そこにドアがノックされた。
ノックしたのは噂されていた冷である。
さっそく来ていた。
「入るぞみんな」
冷が扉を開けて入る。
「どうぞ」
「おお、元気そうだな君たち!」
(会いたかったよ!)
「冷も元気そう!」
「俺は大丈夫だった。むしろ退屈だった」
「こっちは大変でしたが……色々と」
「色々ってなんだ?」
(俺が知らない時に、何かあったような言い方だ)
「色々と合ったのよ。あれ、しらなかったかな」
「ああ、知らねえ」
「知らされてなかったようね。あえて知らせなかったのかも」
「その言い方だと、かなりの問題な気がするが」
「うん、冷が思ってる通りヤバいかもね」
アリエルは厳しい口調になると、冷は話の内容をある程度は察した。
冷は移動中に知らなかった話しを彼女達から聞かされることに。




