表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/351

111

111



 笑顔で言う冷にナーべマルは変に思ったが、まだ戦いあうという意味だろうと感じ、雷属性のスキルは冷に通じているのかわからないし、あまり効いてない可能性もあり、作戦を変更することに。

 力づくで入団させるのは止めて、慌てないナーべマルには秘策があって、冷に出会ったのは偶然ではあったのだが、いつでも会っていいようにしておいたのだった。


「冷、君は強いのはわかったよ。このまま戦っていても難しいだろう。なので作戦変更します。僕はあまり好きなやり方ではなかったけど」


「何を言ってんだか、俺にはわからない。やり方とは」


(……何する気だ)


「さぁ皆さん、出番です!」


 ナーべマルが出番と言うと、周りにいた人達がいっせいに彼女達の周りに取り掛かっていった。

 

「なんだ、町の人達がおかしいな……」


 冷が気づいた時にはミーコ、アリエルとリリスは囲まれて捕まえられてしまっていて、アリエルも気づくのが遅くて捕まってしまって、


「冷!!」


「みんな!!」


(ちくしょう、町の人達かと思っていたが、どうやら違うようだな)


「この人達は騎士団員さ。いつでも君と戦い合う可能性があるので準備してあった」


「汚えな、ナーべマル」


(始めからか……。俺としたことが不覚だな)


「おっと、勘違いしないでくれ、僕の考えじゃないからこれは」


「じゃあ誰の考えなんだ!」


(他にも誰か居るのか)


 卑怯な手に怒る冷に声をかける女の子が、


「私が言ったのナーべマルに。こんなこともあろうかと思って、ずっと騎士団を町の人達の中にまぎれさせていたのよ」


「誰ですか君は?」


 現れた女の子は騎士団のようだとは冷はわかると、卑怯な相手だとなるがナーべマルと同じくらいに可愛い女の子なのでみつめてしまう。


(この女の子は騎士団か?)


「申し遅れた。私騎士団のナニ。仲間を捕まえてる騎士団は私の部下よ。あなたを騎士団に入れるためにわざわざ来てあげたの。だからおとなしく入団して」


 冷を騎士団に入団させる為には、どんな卑怯な策も使うし、どう思われても構わない。


「嫌だね。それよりも早くミーコらを開放してくれないか。君の部下なんだろ」


(彼女達を人質にしても俺を入団させるのは難しいけどよ)


「入団するのかしないのか、どっち、それ次第かな」


「しねえよ」


(人質を取って入団しろか。可愛い女の子なのにやる事はエゲツないだろ)


「ナーべマルとの戦いはみさせてもらいました。噂に聞く能力です。魔人を倒したのは本当のようだ。でも私とナーべマルを両方を相手にしては分が悪いでしょう」


 横にいるナーべマルが、


「言っておくけどナニは騎士団の中でも上位に位置する。甘くみないことね。もちろん僕も強いよ」


「上位だが知らねえが、いい加減にしろ」


(2人でも3人でも相手になってやるよ)


 怒る冷にミーコが、


「私達に構わずに倒して!」


 ミーコが邪魔をするのでナニは黙らせたくて魔力を放って、


「うるさいわよミーコさん、エアーシュート!」


 ナニはミーコにめがけてスキルを放つ。


「うっ!」


 スキルはエアーシュート。

 風属性のスキルで、指から弾丸のような塊を放ち、ミーコの足もとの地面に落下し、驚いてミーコは立ち尽くしてとしまう。

 冷は今の一撃でナニがハンパな気持ちではなく、本気できているとわかり、


「やめろ、ナニ、それ以上は……」


(今のは、空気の弾丸のようだな)


「それじゃあ私の部下になってもらいますよ、良いですよね?」


「わかった、わかった、なればいいのだろう」


 冷は諦めてナニの部下になると認めたのはこれ以上争っても無駄だと思えたからだし、スキルを彼女達に向けられたら、残念だが逆らうのはやめることにした。

 

(女の子2人に俺が言いくるめられるとは情けないが)


 諦める冷にアリエルは声をかけて、


「冷……」


「俺なら大丈夫さ」


(自分の本心とは違うが、今は従うことにしよう)


 ナニはあきらめた冷に満足したけども、納得のいかない点もあり、


「私としては冷を確保出来て満足なのだけど、ふに落ちない点がある。それはなぜあなた達はこのモアナの町に居たのか。我々はピルトの町を目指す途中であって、ここが通り道であったの。偶然なのよ出会ったのは」


「俺は運が悪かったのかな。どっちにしろピルトにいても君達は俺を狙うだろうから、同じことか。なぜここに来たのかの理由が知りたいなら、教えてやる。別に隠す必要がない理由だし。ここにいるリリスは知ってるよな、俺を狙うくらいだからそれくらいは調べがついてるだろう」


(偶然に出会ったか。魔人とも出会うが騎士団とも出会うらしいな俺は)


「調べてある。国王から命じられて来たのです。それくらいの情報は持ってます。何と言ってもあの淫魔の一族の血を引くとか。情報の信頼度は完全ではなく、疑いがあります」


 ナニがリリスの情報を疑うとリリスはここぞとばかりに文句を言い出して、


「待て待て。ナニとか言ったな。私はれつきとした淫魔の一族だ。疑うのは失礼だぞ!」


「証明できますか?」


「証明か……。難しいかな」


 いざ証明しろと言われても困ってしまうリリス。  

 なぜなら証明などしたことないからである。


「それなら疑われても仕方ありません。それでこのリリスとあなた達がここに来たのと何の繋がりがあるの。繋がりが全く見えないのよ」


 ナニにはリリスが淫魔だとして、どう繋がりがあるのか察しがつかない。


「そうだろうな。俺達はここに来る前にある魔人に狙われた。そいつはゴーレムていう魔人だった。それでどうしてもリリスが欲しいって言い出して、リリスを狙い連れていくつもりだった」


 冷が会話の中でゴーレム、魔人というフレーズを出した途端に、ナーべマルとナニの顔は真っ青に変わった。


(まぁ騎士団の偉いひとなのだろうからゴーレムの名前は知ってるだろうな)


「……今、ゴーレムと言ったの。まさかゴーレムまで動き出したと……。その情報は騎士団には入ってきてないわ」


「そのうちいくだろう。もうピルトのギルドには伝えてあるし」


 移動中だった為にナーべマル達には情報が伝わっていなかった。


(まだ伝わってなかったんだな)


「ゴーレムがリリスを。なぜ?」


「リリスを淫魔だと知ってた。それで連れて帰り、仲間にしてえみたいだ。だけど俺が寸前のところで防いだってわけよ。かなり強かったけどな」


(本当は死にそうだったけど俺)


「ゴーレムと戦ったの!!! よく生きてられた。王都でもゴーレムは危険魔人のひとりとして有名。まさかゴーレムまでも動き出したなんて。やはり国王様が冷を放っておくのは極めて危険だとしたのは正解です。あなたが動くと魔人が動き出す。それまでは魔人は動きはなかった。比較的静かであった。それを冷がめちゃくちゃにしだしたのよ」


 魔人、それも中級クラスの危険な魔人が動いたのを全て冷の責任にして、自由にさせるのは危険だと確信した。


「それはヒデェ言われようだな。俺はむしろ感謝してくれてると思ったぜ」


(これだけ活躍してるのに、もっと評価して欲しいよな)


 評価どころか悪評になりつつあった。


「確かにオークを倒したまでは良かった。オークは評判の悪い魔人でしたから。でもその後にサイクロプス、そしてガーゴイルまでも関わるとは思ってもみなかった。このままだと魔人との間で全面戦争に繋がると判断されたのよ。もし全面的な戦争になったら終わりよ」


「そうは言ってもゴーレムは向こうから来たんだだぜ。俺から関わった訳じゃない。ゴーレムはまたリリスを捕まえに来ると言って消えていった。だから俺たちはピルトを離れておこうとしたんだ。モアナの町に来たのはそれが理由だ。まさかこんな面倒くさいことになるとは思わなかったが」


(運がいいのか悪いのか)


「ゴーレムがリリスを。そこまでして欲しいとは……。本当に淫魔の一族だと思ってるてこと。だとしたら話はとんでもない事態。今頃は王都も緊急会議を出してるはず。淫魔と言えば大昔から存在していて全ての魔族を従えていたとされる伝説の一族よ。もちろん魔人だけでなく魔王までも従えていたと。しかしもう滅んでいて現存はないというのが王都の情報。ゴーレムは本当にリリスが淫魔だと知って何を企んでいるのかしら。恐ろしいことになりそうな気もします」


 ナニはリリスをみて淫魔の可能性を信じ始めていて、もちろん今の聞いた話が本当ならの話だが、とても不吉な予感がしてならなくなる。

 問題視されつつあるリリス本人は、


「心配はしてない。なにせお前が私を守ってくれるだろうからな」


 冷に問いかけると胸を張って、


「任せておけ。俺は絶対にリリスをゴーレムなどに奪われることなどしないさ!」


(リリスは俺の大事な仲間だからな。奪うなら命がけで守ってみせるさ)


「……」


 ナニとナーべマルはそこで沈黙し、このまま冷と関わったらゴーレムと関わることになるとわかって沈黙してしまい、恐怖感が押し寄せてきていた。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ