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 いきなり入団しろと言われる場面に、もう去ろうとし、ナーべマルが道をふさぐようにして、立ちはだかるのを見て冷は、


「ナーべマルさん、無理に誘いをしても無駄だよ。俺は騎士団には興味がない。誰かに雇われて働くのが苦手なんだ。わかってくれ」


(おい、急に厳しい顔になっますよ。怒ったのかな)


「苦手なのはわかった。でも僕の立場もある。国王に冷は興味がないそうですと伝えに帰ったら、僕に国王はがっくりとする。国王は必ず君を入団させると思ってるから。つまりは手ブラでは帰れないわけ」


 このまま断われては帰れませんとのナーべマルの説明にミーコが、


「てことは、何があっても連れて帰り強制的に入団させるとも聞こえましたが……」


「俺も聞こえたよ。そう受け取っていいのかな?」


(可愛らしい子なのに、言うことは強気なのが気になる。まさか俺達とひとりで戦うつもりか?)


「ええ、受け取ってください。僕は力づくで君を連れて帰りますから……」


 ナーべマルの強い自信に溢れた言い方に、きき返すようにアリエルは、


「それってナーべマルと冷がこの場で戦うと……」


「そうなります」


 即答した。


「俺を無理矢理連れて帰れるかな」


(ずいぶんと自信あるな。俺が甜められ過ぎだろ)


 冷の顔は厳しい顔に変わりナーべマルを見ると、


「戦いましょうか、僕は女の子だけどラジッチよりは強いから!」


「君たちは俺から遠くに下がっててくれ。俺ひとりが戦う」


 自分だけで戦うと言い渡し、避難させてナーべマルに対して戦う意志をみせた。


(ゴーレムから狙われるわ、騎士団からは決闘を申し込まれ災難だな)


「わかったわ」


「非難します」


 アリエルが返事をするとリリスとミーコも距離をとって、戦いを見守ることに。

 そこは町の中であるが、スペースはあっても町の人もいるし、建物もある為、派手な魔法スキルは難しい。


「俺なら大丈夫だよ」


 よって冷は打撃中心の攻撃を考えた。

 

(女の子と戦うのはあまり得意じゃないけどな)


 先制はナーべマルであった。

 まだ準備に入っていない冷に接近して剣を振りかざした。


「僕の剣をどうぞ」


「……速い!」


 冷はとっさにナギナタを構えて受け身をとるも、素早いナーべマルに意表をつかれる。

 

((冷よ、この子は見た目は可愛らしい少女だが、中身はかなりの達人じゃ))


(今の一撃でわかったよ)


 バアちゃんからの忠告を聞いて、剣とナギナタのせめぎ合いが始まる。

 何度も繰り返し剣とナギナタがぶつかり合い、音が散った。

 お互いに譲らない形となって、攻撃をしたら直ぐに防御をとる。

 その戦いぶりを見たリリスは、


「あお、冷と互角に戦ってるのを見るのは初めてだ」


 驚くリリスにミーコも、


「あの女の子は口だけではない。有名なナーべマル。本物の高レベルな冒険者です。動きを見ても全く無駄がない」


 ミーコもナーべマルの素早い動きには自分と重ねて見ていた。

 

「まさか負けるんじゃないのかアイツは……」


「負けてもおかしくない相手でしょうナーべマルは。国王が送り込んできただけのことはありそう」


「国王も本気だぞ」


 リリスが不安に見ている時に冷も同じ意見であって、女の子とは思えない敏捷性を持っていて、剣術も文句はなかった。

 武器の激しいぶつかり合いの音が響き、周辺からは町の人々が集まり出してきて、


「おい、見ろよ、決闘が始まってるぜ!!」


「すげぇレベル! いったい誰だ! 少女だぜ!」


「あれは……ナーべマルだろ!」


「ナーべマル!」


「相手の青年は冷らしいぜ!」


「あの冷だって!!」


「これは大変な事態だぞ!」


 町の人々は次々と集まり観衆となって、物珍しく見つめる。


 観衆が集まり戦いににくくはなった冷は、ナーべマルに対して高評価し、見た目とは違い達人にも近い剣術に舌を巻いて、こともあろうか仲間にならないかなと思う。

 

(この子は相当鍛えてきたな。俺にはわかる。仲間に加えたいくらいだ)


 冷と同様に剣を交えてナーべマルも手応えを感じ、さすがな魔人を倒した相手であるだけに、判断ミスは命取りとなるのは覚悟の上での戦い、簡単には勝たせてもらえないとわかり、


「さすが魔人を倒した能力は大したもの。このままでは勝てそうにないんで、僕はスキルを使わせてもらうよ」


「スキル……」


(この子も、スキル使いか。こんな町のど真ん中で使う気か?)


 冷の心配は当たり、全くの無視する形で魔力は高まり、


「フラワースパーク!!」


 ナーべマルが得意の雷属性のスキルを唱えると、手から放たれたのはまばゆい電気であって、電気は一瞬で冷に向かうと、防御せずに逃げるのを選んだ。

 スキルな鷹の目を発動しておくと、視力アップさせて、さらにサーフェスマナも発動し、魔法攻撃からの防御力アップで、思ったよりも強力な魔力だと直感的に感じたからだ。

 

「上手く、逃げたね。僕のフラワースパークを」


「危ねえけど」


 ナーべマルは2度3度とフラワースパークを放つと、冷はその度に横に後方に逃げ切り、危険なスキルだなと実感する。


(このままでは当たるな……)


((私で防いでみなよ))


(えっ……バアちゃんでか)


((ほら、ドラゴンなんとかでやってみな))


(アイスドラゴンブレードか、それならば)


 スキルにはスキルで対抗すると決めて魔力をナギナタに。


「アイスドラゴンブレード!」


 ナギナタを構えて、アイスドラゴンブレードを発動すると水属性の魔力が覆い、今までは攻撃に使ってきたが、防御にも使えるかを試すことに。


「……水属性か。僕のフラワースパークを防げるかな」

 

 見て水属性と判断したあたりは経験からであって、ナーべマルはそれでも放つと、フラワースパークが迫ってくるのをナギナタで対応する。


「来てみろよ!」


 ナギナタとフラワースパークがぶつかり、雷の光とアイスドラゴンブレードの爆裂音が周囲に轟いて、冷は必死に手で防ぎにいく。

 結果は雷が弾かれて消えていった。


「……まさか、僕のフラワースパークが負けるとは……」


「……アイスドラゴンブレードは防御だけじゃないんだぜ!」


(防御力もあるんだな。雷属性も防げたわけだから)


「えっ……」


 フラワースパークが弾かれてショックを受けていたところに、冷は間髪入れずに攻撃に撃って出た。

 一瞬ではあるがナーべマルは気を許してしまい、アイスドラゴンブレードが猛烈に迫ってきていて、苦し紛れに剣を構えるのに、ナギナタを縦に振り切った。

 

「グッ……」


 ナーべマルはアイスドラゴンブレードを受け、剣はいとも簡単に吹き飛ばされてしまった。


「俺の勝ちだなナーべマル」


(まぁ俺が少し本気を出せばこんなもんだけど)


「……君、強いね。でもまだ僕の負けではないから」


「おい、まだやる気か?」


 冷はもう勝負がついたと思っていたから意外なひと言であった。


(えっ……まだやる気ですか。少女を傷つけちゃうのはマズイよな)

 

「まだまだだ、僕のフラワースパークはね……。フラワースパーク!!」


「…………。これは!」


「さっきのは、手加減してたんで、今度はもっと本気モードでいきますから」


「あれで手加減か。俺もナメられたものだな」


 フラワースパークは先ほどと比べて威力が増していて、光の光量も多くまぶしい。


(マジかよ)


 冷は防御出来るか不安になる。


(これは手加減ってのがわかるな……)


((アイスドラゴンブレードでも、わからんぞ!))


(ああ、やってみることは、やってみるけどよ)


((頼むぞ!))


 ナギナタに話しかけて、不安を解消しようしたが、不安はなくならなかったわけで、猛スピードで雷が放たれて、冷のナギナタに再度ぶつかる。

 

「うううう!」


 ナギナタは耐えられると思ったが、手が電気で痺れてしまい、感電したまらずナギナタを離してしまい、事前にサーフェスマナで魔法攻撃への防御力アップをしていたので、ダメージは最小限に食い止めていた。


(痛てててて。手が痺れてる……)


 冷が反撃されるのを見てアリエルが、


「冷が反撃されるなんて……」


 驚くしかなかった。


「ふふ、今のは僕の勝ちだな。さすがの冷も電気には弱いみたいだな」


「かなり強い電気だこと。びっくりしたぜナーべマル。俺を本気で連れて帰りたいってのが伝わってきた」


(感電て嫌な感じ)


「それは良かった。僕と一緒に王都に来てよ」


 再度、ナーべマルは誘いにくるも冷は、


「あいにくだけど、俺は騎士団はゴメンだ。それだけは言っておく。そして君のような強い冒険者が居るってのが知れて面白くなってきたから、感謝してる」


(この世界にはまだまだ強いのがいるんだな)


「感謝だって?」


 ナーべマルは冷の言ってる意味がわからないでいた。


「俺としては強い者と会えるのは面白いってことさ。魔人も含めてな!」


 冷は反撃されたのにも関わらず笑顔で言って、本心で言ったのであるがナーべマルには全くの理解できる内容ではなかった。

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