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クエストを終えて素材の回収をし、モアナの町に帰る。
冷は来たばかりであるので町の人の反応はほとんどないに等しいとなり、歩いていてもピルトの町では目立っていて歩くのも大変であるのとは違った。
歩きながらアリエルが、
「この町を歩いていても誰も騒がないのは寂しい」
「アリエルのファンは結構多いからね。ここでもファンを作る気?」
「作る気はなくても勝手にできちゃうのよ。困ったもの。女神ってだけで人気でちゃう」
自慢げに言い出すとリリスが、
「少しうぬぼれもあるけど」
「女神だから当然」
アリエルはファンが少ないのに不満があるのだった。
その点ミーコは、
「女神よりも勇者の方が人気はあるでしょ。だって冒険者ならみんな勇者に憧れるのだし、成りたいと思うわよね。私の方が人気なら出ると思う」
アリエル超えを言い出す。
「いいえ、女神は人族の上に立つの。たとえ勇者だといっても人族には違いない。女神が人気でしょう」
負けじとアリエルはミーコに言うと、リリスは興味なく、
「ああ、どうでもいいだろ人気なんて。なぜ人気がいるんだよ?」
「あらリリスは興味なしですか。まぁ淫魔が人気でるのは困ったもの。人族の敵ですから」
ミーコが言ったのがリリスは気に入らないで、
「人気は興味ないのはいいとして、ミーコに言われるとなぜか腹立つな」
「腹立つようには言ってません」
ミーコも負けじと言うので冷は、
「人気は直ぐに出るだろう、なにせたっぷりと魔物を狩ってきたんだから。ギルドにつけば噂が広まるさ」
(性格が出るな。アリエルは何が何でも人気出ないと気が済まないし、ミーコはアリエルに対抗心あるようで、リリスはまるで興味なしか)
リリスは嫌がるようにして、
「人気出るとウザい」
そうしてギルドに到着し、受付けの女性が接客してくれる。
「いらっしゃい……冷さん、でしたね、もう帰って来たのですか?」
「もう帰って来ました。これが魔物を狩ってきた素材です」
全部の素材を見せると、受付けの女性は、
「え……これをこんな短時間で! どうやったのかわかりません。わかりませんが確かに素材はありますので報酬は払います……」
「ありがとうございます」
(報酬さえもらえればオッケーです)
「う、う、噂は本当だったのですね。モアナの町にも冷さんの噂は届きましたが、実は嘘ではないかとささやかれていました。だって誰だって嘘ではと思う。新人の冒険者が魔人を次々と倒しているなんて情報を信じる方が難しい」
「それは俺もわかる気がします。信じてもらえればいいっす」
疑われているのをとくに気にせず、気のいいところをみせた。
(誰でも嘘だと思うかもな)
「また来てください」
やはりと言うかユズハ店員と同じような反応になった。
驚くしかないので、冷は戸惑うことはない。
慣れてきたのもある。
冒険者ギルド店内にいた他の冒険者はもっと驚くことになった。
冷だと知らない者が見たら当然である。
何者なのだとたちまち噂が広まる。
突然に現れた謎の冒険者と。
しかし受付けからの情報で冷だとわかると、納得した。
納得しただけでなく、中には怯える冒険者も多かった。
魔人を倒せるくらいの実力があるのだから、近づけない程の存在となるのだった。
その風景をリリスが気づき、
「あれ見ろよ、うちらが噂されてるぜ」
「らしいね」
ミーコも感じてることであった。
「怖がっている風にも感じる」
「俺はどうしたらいい、あまり見ない方がいいかな」
(怖がっているなら視線は向けないようにします)
「うん、下を向いてたら」
「下をか」
「そのまま出口に行って」
報酬を得て冷達はギルドを出ると、宿屋に向かって一休みすることに。
平和な雰囲気のとてもいい田舎町。
ここに住んでもいいかなと思える程にのどかであった。
町を歩いていると冷はとても強い魔力を感じ、周囲に気を配った。
(なんだろうこの魔力は。俺の付近に何者かがいる……)
冷は付近に気をつけて歩いていると、向こうから女の子がひとりで居た。
なぜか冷を見ているような気がしたので、視線をそらしておく。
リリスが変に周りを見る冷に、
「どうした、キョロキョロと周りを見回して。さてはまた可愛い女の子を探してたのだろう?」
細かいところを見られていて困った。
「い、いや、違うって。俺は新しい町に来て観光を楽しんでいたのさ。旅っていいよな……」
(リリスが言うからあの女の子に気づかれてしまうよ)
「嘘を言うならもっと上手い嘘を言いな。お前の嘘はわかりやすい」
リリスにズバリ指摘されて冷は、
「本当に女の子なんて見てないんです!」
アリエルも疑いの目で、
「私もリリスと同じ、冷は怪しい!」
アリエルに続きミーコは、
「同感」
全員一致して疑われてしまった。
「あはは、俺ってそんなに信用ないか……」
(本当に違うのだけどな)
がっくりと肩を落とす冷にそっと近寄る者がいた。
スッと近寄ると冷が油断したのもあるが目の前にまで来ていて、
「君が冷……でしょ?」
現れたのは女の子。
騎士団であるナーべマルであった。
ナーべマルは偶然に冷に出会ってていて、遠目でも冷の潜在能力を感じ取り、その場で冷だと見抜いていた。
以前にサイクロプスの件で国王にあった際にも冷の顔は覚えていた。
「ああ、俺は冷だけど。マイッタな、もうこの町でも有名になってるなんて……」
(なんだろうこの子から魔力感じるけど)
女の子に名前を聞かれて照れくさそうにすると、すかさずアリエルに、
「やはり女の子を探していたのですか、女の子好きにも呆れる!」
「あきれます!」
ミーコも同じ意見となりリリスは、
「あきれてイラつくわ!」
「しょうがねえだろ、俺は人気があるのだから。えっと君はここの町の娘かな。魔物なら俺がガッチリ倒してくるからあんししてな」
決して浮気心などないという一心で言った。
(どうして女の子って疑うのだろうな)
ナーべマルはケンカしているのが理由がわからないでいて、なぜこの町に来ていたのかも知らないが、
「いいえ、今日ここに来たばかり。あなたを探してね。超ラッキー、偶然に冷を探し当てるなんて。ピルトまで行かずに済んだ」
ナーべマルが笑顔で冷の腕を捕まえた。
簡単に捕まった冷は不思議になり、
「ん? 君は誰だい、ただの女の子じゃないな?」
冷は腕を捕まれて初めて普通の女の子じゃないとわかった。
全くの戦闘経験のない少女には無理な行為で警戒をする。
(先ほど感じた魔力。この子か誰?)
疑われても別に慌てないナーべマルは、
「バレました? さすがは冷ってとこか。僕が誰か知りたい?」
僕口調で冷に質問する。
少女なのに僕と言うのはクセであった。
そこで初めて冷は記憶のどこかにこの少女を見て、
「あれ……君は確かどこかで見たことがあるな。どこか忘れたが……」
(言われてみるとどこかで会ったような)
冷がナーべマルの顔を思い出しているとリリスが思い出して、
「この女の子は覚えてる。王都で国王の前に現れたムカつく冒険者のひとりだろ!」
「冷氏を小馬鹿にした冒険者です。確かに馬鹿っぽいところは当たってますが」
「その情報言う必要があるかよ!」
(余計だろ)
ナーべマルは思い出してくれて嬉しくなり、
「覚えてくれて光栄です」
「なるほど、あの時の子か。そういえば見覚えがある」
(あの時の三人組か。嫌な奴と出会ったな。でもなぜここに? 俺を探している?)
冷が思い出すとナーべマルはニコリとして、
「覚えてくれていて、ありがとうございます冷」
ミーコも記憶から思い出して、
「確か、名前は、ナーべマルとか言っていた」
「はい、ナーべマルです。今日は冷さんに会いたくて来ました。ズバリ言いますが、冷さん、王都の騎士団に入団しませんか。国王からのお誘いなんですよ」
なぜかは省いていきなり本題に入った。
誘いにのるかわからないが、話を聞いてくれる風に思え、冷はというと話しの内容が掴めないようで、
「国王から……。なぜ俺が騎士団に、理由がわからないが……」
(理由もなく騎士団に入団しろと、意味がわからないよ)
理由がわからない冷にアリエルがわかったらしく、
「冷はスカウトされたってことよ」
「スカウトされて俺を騎士団にして魔人と戦わせると思っていいのかな?」
(スカウトって、よくプロスポーツ選手で使われる言葉だよな。俺をスカウトか。悪い気はしないな)
スカウトと言われて少し喜んでいる冷であるが、ナーべマルは冷の質問に、
「まぁそうなるかな。国王としては君があんまり派手に暴れるもんだから困っているの。自分勝手に魔人と戦ってしまうし、それまで魔人側とは接しないようにしてきたわけ。なぜなら更に強い魔人が動き出したら手がつけられないからで、それを恐れて国王はずっと魔人には手を出さない政治をしてきた。なのに君がなぜか魔人と遭遇してバトルしてしまい、コントロール出来ない状態なわけ。だから君を騎士団に入団させておけば、勝手には行動出来ないし、いざとなればとても強力な戦力となるので、入団させたいとのことだ。この話を聞いて入団する気になったかい?」
「う〜ん、どう考えてもならない」
冷はあっさりと断った。
簡単なことであって、冷は誰かに使われるのは嫌いだからという理由で、これは冷の良くない性格で、無職になったのもこの性格が影響していた。
(つまりは俺をバイトみたいにして雇ってやるてか。う〜んどうもイマイチかな)
「まぁそう言うだろうと思ってした。簡単には受けてくれない性格だろうし」
ナーべマルの騎士団への入団という予想もしない説明にリリスが、
「入ったらいいじゃんか。騎士団てカッコイイだろ」
「カッコイイとかの問題かよ、俺が騎士団入ったら君たちだって入団させるぞ!」
(俺は独りになるのは嫌だからな。君たちも一緒だよ)
冷が道づれをとなえるとリリスは、
「騎士団か、雇われて指示されるのは面倒くさいから私はパス」
「やはり面倒くさいか」
リリスが入らないとしてミーコは、
「騎士団なら給料がいいと聞いてるからオッケーかな」
「ミーコは金しだいか」
(金は良いとは思えないが。いくらもらえるか知らないが、高額ではないよな)
賛成したミーコにアリエルは、
「私が団長なら認めてもいい」
「100%無理だな。そういうことなんでナーべマルさん、俺は断るからこれでさよなら」
3人とも意見はバラバラであって冷も入る気はなかった。
(アリエルが団長って笑えるかもある意味)
「あなたが団長では壊滅します」
「ミーコ、それどう言う意味よ!」
ミーコが軽口で言ったらアリエルは納得できずに言い返す。
「女神に従えとか言いそうだし、みんな騎士団を辞めちゃう」
「なにそれっ! 女神が団長ならみんな嬉しいでしょ!」
アリエルには騎士団を幸せにさせる自信があったがリリスは全否定して、
「アホか」
「もういいから、リリスもアリエルも。俺は騎士団には入団しない。これで決まりってことでナーべマルさん、サヨウナラ」
(断わればわかってくれるだろう)
ちゃんと断わることで冷はナーべマルから去ろうとした時に、
「待ちな……。まだ話は終わってない……」
ナーべマルは冷達を引き止めると、その顔には笑顔は消えていた。
それまでとても優しい顔で可愛らしい少女ではなく、ちょっと怖い感じの威圧するような感じに。
ナーべマルとしては、始めは優しく誘うことにつとめていて、それでもワケの分からない会話が続き、結果は断わるとなればもうやり方を変えるしかない。