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死の瀬戸際にも近い戦いになったこの一戦は、ミーコの独力を知る機会となった。
冷はミーコの能力がまだ上限ではないと思ったから。
マグナムフォックスの追撃が来ると、ミーコはムーンスライドを発動し、残像を作り出す。
攻撃はまたも空振りに終わり、失敗かと思われたが、マグナムフォックスはそれを見越して、消えていない方の本体に襲いかかる。
本体は防御が間に合わない為に、ミーコは立ち尽くしていた。
マグナムフォックスの攻撃。
「!!!」
アリエルは声にならない叫び声を。
もうダメだと思った時に、ミーコはダメージなく立っているので、なぜなのかと疑問に思う。
それはミーコが連続でムーンスライドを作り出したからで、またも残像を攻撃し空振りとなっていた。
連続でムーンスライドをしても、疲れはなくマグナムフォックスに一撃を喰らわした。
ついにマグナムフォックスは動きは無くなり、ミーコの勝ちとなった。
「やったわ!」
喜ぶミーコにアリエルとリリスが、
「もうダメだと思った!」
「やるな!」
「これくらいは勇者の血を引くので余裕ですよ」
聖剣ヴェルファイアを担ぎ、決めポーズをとるとリリスから、
「嘘つけ、かなり危ないだろ。でもムーンスライドは訓練では見てなかったから知らなかったけど、実践でも使えるな」
「リリスのいない時に訓練したの。どうです?」
「敵には見えないのかな」
「たぶん区別出来ないのだと思う」
ミーコのもとに集まり励ましたところで冷もやって来て、
「素晴らしいミーコ。今のスキルを使うタイミングも相手にはわかってなかったのだろう。もっと訓練したら精度をあげられるよ」
期待通りに活躍したミーコを絶賛した。
(ここは褒めるべきだろうな)
「そう言っておけばまた訓練をすることが出来るでしょ?」
「違う、違うよ、俺は本当にミーコのスキルを褒めてるのであって、何にも下心などないんだ」
「冷氏から下心て言われると、笑ってしまいますが」
「変に受け取るな。俺は真剣だよ。それよりもまだマグナムフォックスはいるが」
冷が向いている方向には数多くのマグナムフォックスが出現していて、仲間が殺されて腹を立てていた。
(下心ってなんだよ!)
それを見てアリエルは怯えるようにして、
「ねぇ、どうもたくさん仲間がいたようよ」
「またムーンスライドで倒してやる」
「ミーコは傷ついているだろう、アリエルに治してもらえよ」
(その傷では戦うのにキツイだろう)
リリスがミーコは休憩が必要といいアリエルが、
「聖なる治癒で治します」
「そしたら俺とリリスが戦闘ってことでいくぞ!」
冷がリリスに声をかけるとリリスは、
「はいよっ!」
リリスとともにマグナムフォックスの群れに向かう。
ミーコはマグナムフォックスの爪と牙にやられた傷は深く、治療に徹することに。
ミーコとしては戦いたかったが、これでは無理と納得した。
マグナムフォックスはたった二人で向かって来るのを待ち構える。
そして射程距離に入ったところで、冷とリリスを仕留めに出た。
冷にはマグナムフォックスとの戦いに際して、ある考えがあってそれは新しいスキルを試したいとの考えであった。
(この相手になら新しいスキルがつかえるかもな)
新しくスキルストレージに覚えてあるのはゴーレム戦で覚えた2つ。
グランドシェイカーとライトブラストであって、ゴーレムを倒していなくても戦った相手から覚えられるのを知った。
グランドシェイカーは地面を激しく揺らす土属性のスキルで、このタイプのスキルは初めてと言えた。
直接的に敵にダメージを与えるというよりも、間接的に不利にさせることが可能。
それだけに敵が大勢いる場合には効果が高いのが特徴だ。
(先ずはグランドシェイカーで群れに先制攻撃をしてやろうかな)
そこで冷はリリスに新しいスキルについて語り、
「新しいスキルをしてみたい」
「また覚えたのか。使えるスキルも多くなると使いこなすのが苦労だ。やってみなよ」
リリスの了解を得て冷は襲ってくるマグナムフォックスの群れに怯えることなくスキルを発動。
「グランドシェイカー!」
冷は手を地面に着けてグランドシェイカーを使用してみる。
使用方法はゴーレムがしていたやり方をパクった形であるが、やってみると魔力が地面に伝わるのがわかった。
(地面に伝わったから、揺らせそうだ)
その直後に冷の周りから地面は波打つように揺れ始め、マグナムフォックスのいる付近にまで及んだ。
波が襲ってきてマグナムフォックスは何かはわからないでいて、揺れが来た時には、走れない程に足がグラついていた。
走ることが出来なくなってしまったのを見てリリスは、
「揺れの力でマグナムフォックスが動けなくなってるぞ!」
「相手は今、動けないのだろう。だったら今がチャンスだリリス。俺がこうしてグランドシェイカーをしている間に近づいて魔剣をぶった斬るんだ!」
(相手の動きを止める作用はのは経験済みだ)
冷は相手が動けないのをチャンスと考えたのだったが、そう話は上手く行かながった。
リリスは冷の指示を受けて、
「無理な指示だ。それは出来ない」
「なぜだ?」
(何かしらの不都合かな)
「わからないのかよ。マグナムフォックスは動けない状態なのはわかるだろう、それと同じように私も歩けない。特にお前に近いとハンパなく揺れるんだよ!」
冷の近いと揺れは実際に大きかったので、リリスはぐらぐら揺れていた。
「しまった。そういうことか。俺も予想していやかった結果だ」
(なるほどな。俺が甘かったかな)
「予想出来るだろ」
「それならリリスはここで見ていてくれ。俺が奴らを全部まとめて相手してやる」
冷は照れくさい仕草でリリスに言う。
リリスからはアホかといった顔で見られていて、
「それはいいが、お前は両手を地面に着けたままだろ。どうやって攻撃する気だ。無理じゃないか」
リリスの言う通り冷の現在の状態は両手を地面につけていて、自由に動かせることは不可能である。
そこは冷もわかっていた。
その上で攻撃しようと思っていた。
(もう一つの新しいスキルを使えるかもな。はたして出来るか……)
もう一つのスキルとはゴーレムから習得したライトブラストであって、これは雷属性の攻撃スキル。
そこで先ずは片手を地面から離してみることに。
これでまだグランドシェイカーが放てるかを知りたかったのだ。
揺れの大きさは片手になった分、小さくなっていて大地震とまではいかなくなる。
(使えることは使えるな。やはり揺れは小さくなってるけど……)
思っていたように小さくなった揺れでも、マグナムフォックスは完全には走れないかった。
そこで自由になった手を使い、
「ライトブラスト!!」
雷属性の魔法スキルを唱えた。
片手から眩い閃光が発せられて、雷が周囲に飛んでいった。
足を揺れで取られていたマグナムフォックスは、油断していて逃げるのには間に合わない。
雷光をまともに受ける。
群れの集団は雷光を受けた衝撃で全身が感電して1発で地面に倒れていった。
それをみたリリスは、
「一撃で全滅した……。私の出番はなしか」
「俺もここまで破壊力があるとは思わなかったんだ。悪いな出番がなくて」
(すげぇなこれ。俺は受けた時よく死ななかったよな)
「今のは雷なのか?」
「ああ、雷属性の魔法スキルさ。相手は触れると感電するようだ。2つともゴーレムから習得したんだけど」
「やはりゴーレムのか。今度ゴーレムと会ったら披露してやれよ、きっと驚くだろう」
「そのつもりさ」
マグナムフォックスは新たなスキルによって全滅に成功した。
あまりのあっけなさにリリスはため息をついていた。
柳生 冷
性別 男
種族 人族
ユニークスキル スキルストレージ
職業 無職狂戦士バーサーカー
レベル5101←400アップ
体力 27609←1500アップ
攻撃力 27609←1500アップ
防御力 27609←1500アップ
魔力 27609←1500アップ
精神力 27609←1500アップ
素早さ 27609←1500アップ
剣術レベル2639←400アップ
柔術レベル2639←400アップ
槍術レベル2639←400アップ
弓術レベル2639←400アップ
斧術レベル2639←400アップ
戦闘はまたたく間に終わりを告げて、辺りは静かになり、遠くから見ていたアリエルは、
「また覚えたようで、忙しいわね冷も」
「まあな、新たなスキルを習得するのは嬉しいけど使いこなすのが大変になるのがわかってきた。今のところは把握できてるけど、増えすぎていくと、頭が混乱するかもな」
(今の段階で幾つのスキル持ちなんだろう。もう数えてないし)
冷が困ってみせるとミーコが、
「スキルはいくつまで待てるのです? 上限があるなら話は変わってきますよね、だって覚えられる数が決まってたら不要なスキルが邪魔になってくる」
「それは考えてなかった。そもそも上限があるなかさえ俺もわからない。まぁ上限があるなら覚えられるまで覚えてやろう」
自分のスキルストレージの上限など知るわけなかった。
詳細な説明書があるわけではないし、本人も確認のしようがない。
(限界まで覚えてやろうかな)
「なんともいい加減」
ミーコは体の治療が済んでいて、動けるようになっていて、冷のいい加減さにまいっていた。
雷光の牙を覚えました。
無事に戦闘を終えて新たなスキルの獲得がわかった。
マグナムフォックスの持つスキルであって、雷属性のスキル。
雷属性の攻撃が2倍になるのを覚えていた。
「あれ、またスキル覚えたみたいだ俺」
(ライトブラストと同じ雷属性みたいだな)
「えっっ、また!!」
次々に強くなる冷に彼女らはたまらず言ったのだった。