107
107
受付けの女性に名前を聞かれたので困ってしまう冷に、アリエルが仕方ないといった感じで、
「……隠してもバレてしまうようね。言うしかないわよ」
アリエルにも念を押されたので、冷は覚悟を決めて言うことに、
「登録した名は、冷です」
(登録が伝わってるのかな)
「冷さんですね、今確認しますのでお待ちを……」
女性は登録した名前を確認すると言って、間もなくすると血相を変えて現れたら、
「れ、れ、れ、れ、冷さんて、あの冷さんでしょうか?」
「あの冷でしょう」
(やはり知ってたか)
「まさか、魔人ガーゴイルやサイクロプスを倒したていうのは本当に本当ですか?」
「本当だと思います、俺が倒したから」
(隠しても無駄だな)
「……失礼しました。あまりの衝撃で少々取り乱してしまいました。こんな町に魔人を倒した冒険者が来ることはないのでして、それでクエストの紹介でしたね、履歴ではランク6となってします。またランク6にしますか」
女性は大きく取り乱しはしたが、直ぐに落ち着いて受付けの紹介をする。
そこはプロの受付けを感じさせて紹介はランク6となり、冷も6が妥当と思う。
「ランク6をお願いします。具体的な魔物を知りたい」
(まぁ今回もランク6にしておこう。無理する必要はないし。それにしても受付けの女性はみんな美人なのは不思議だが)
「はい、魔物の名はマグナムフォックスといいます。スキルは雷属性のスキルを使用しますから、感電死するケースが後をたちません。お気をつけて……といいましても冷さんなら心配いりませんよね」
余計なことをいってしまったようにした女性に冷は、
「雷属性は気をつけます。俺は電気は苦手だから、要注意しますよ」
(感電死だけは勘弁して欲しい)
ありがたく受付けを済まして、ギルドを出るとクエストに向けて出発。
新しい町に来て、遊ぶわけでもなくクエストに励むことに。
ミーコは積極的な冷にいつになくやる気を感じ、
「昼の冷氏はとても勇敢で凄い人物なのに、なぜ夜になるとダメなのでしょう」
「おいおい、昼も夜も俺は俺さ。何も変わってなんかない。それよりもミーコのスキルを早速見てみたいから楽しみさ」
覚えたスキルの披露を頼む。
(俺の楽しみであるから)
「スキルの件なら、試したい気持ちいいです、いつゴーレムが来てもいいように」
「ゴーレムは強いな。ガーゴイルやサイクロプスと比べても強いのはわかった。前回戦った時にはゴーレムは去っていったが、あのまま戦ったら結果はわからなかっただろう」
冷はそれだけゴーレムを危険視していて、防御力の強さを認める。
(対策を考えておかないとな)
「お前がわからないと言うなら確かだろう。また来るかどうか。来るならいつ来るかだ」
リリスはゴーレムがまたも自分を誘いに来るのを予感していて、絶対に誘いにはのらないと決めていた。
「リリスは俺が守るさ」
冷がリリスを守るというとミーコが、
「私も守もって欲しいのに……」
「ミーコはムーンスライドで残像すれば俺の助けはなしで」
「ええっ!」
「ミーコ、ガンバれ!」
リリスはミーコを応援したが、ミーコはスネてしまった。
アリエルと違い、ミーコは冷に守られたいようであり、表に出してしまう。
そうしているとクエストのポイント付近に到着していて、魔物が多く集まる地点であった。
今回の敵はマグナムフォックス。
岩陰の多い地点であり、どこに隠れているかが、わかりにくいのでミーコは迷い、
「マグナムフォックスは、ここらへんに隠れているかもですね。気配は感じますか?」
「いいや、俺もわからない。きっと隠れて攻撃するのが得意だとわかる。前回と同じように、みんなが先に戦ってみてくれ、俺は観戦しているから、気をつけてくれ」
前回と同様に観戦モードでいくことにしたのは危険をはらむが、わずかに楽しみが優ったのもある。
(それでは拝見します)
「はい、それではこのミーコが先手で行きます!」
ミーコがリリスとアリエルと顔を合わせていうとアリエルは、
「訓練通りに支援にする。リリスは様子をみて攻撃に出て!」
「わかったわ」
先ずはミーコが向かう。
顔には気合が入ってるのがわかるほど、鋭さがある。
マグナムフォックスの気配を見逃さないようにし前進する。
ミーコは前進していくと足を止める。
何かを察知したのか顔を左右に向かせていて、どこから来てもいいいように短剣は握っていた。
アリエルとリリスは音を立てないようにして見守る。
ミーコが再び歩き出した時に周囲に動きがあって、ミーコは素早く身構えると、魔物が現れたのだった。
「マグナムフォックス!」
ミーコの前に現れたのは、マグナムフォックスであった。
見た目もキツネに似ているので、間違いなくマグナムフォックスとミーコは確信する。
その場で睨み合ったが、即座に敵は動きがあった。
ミーコが動く前に横に素早く移動したのだった。
ミーコは視線を横に送り、マグナムフォックスを見失わないように。
しかしマグナムフォックスはとても速くミーコの予想を超える。
ミーコの側面に回り込み攻撃を仕掛けてきたので、ミーコは短剣ヴェルファイアで防御をした。
「……」
ミーコはかろうじて防御してマグナムフォックスの前足の爪を防いだのだが、ミーコの素早さだから防げたといえよう。
一瞬でも遅かったら爪で顔を切り裂かれていたに違いない。
ミーコもこの時ばかりはホットしていて、しかし直ぐに防御から攻撃に切り替える。
短剣ヴェルファイアを敵の腹に斬りつけたからであった。
「……ダメか」
マグナムフォックスは一瞬速くヴェルファイアの剣先から逃げていてかすり傷で終わった。
マグナムフォックスはかすり傷を負って牙を剥き出しした。
ミーコに殺気を全開させた。
ミーコもそれが伝わる。
マグナムフォックスは再び飛びかかってきて爪と牙を向けてくると短剣と激突して、両者は反対側に吹き飛んだ。
お互いに大きな怪我はなく、ここまでは互角と言えた。
休む間もなくマグナムフォックスは攻撃に移る。
ミーコはまだ攻撃の段階に入っていなかったので、劣勢にまわることになり、防御すると思われた。
アリエルとリリスは思わず、
「危ない!!」
ミーコに向かって叫んだ。
その時にミーコは危ないのは知っていて、あえて攻撃させたのだった。
それは新スキルを試す絶好のチャンスとみたからで、
「ムーンスライド!」
爪がミーコの体に触れる寸前にまで近づけてから発動し、ミーコの体は2つに分裂したかのようになる。
マグナムフォックスの攻撃は残像のミーコに対してのものとなり、すり抜けてしまった。
残像はその瞬間に消えていった。
「残念でした……私はコッチよ!」
もうひとりのミーコがマグナムフォックスに斬りかかり剣を振り切った。
マグナムフォックスは叫び声をあげて転げ回る。
ミーコは弱ったマグナムフォックスに接近してとどめを刺しにいく。
そこでミーコは勝ったと思ったのだが、マグナムフォックスにはまだ奥の手があって、スキルを持っていた。
マグナムフォックスは突然に体が光で発行した。
「!!」
ミーコは何か異変を感じたが、殺るならここしかないと決めて、刺しにいく。
スキルは雷光の牙。
雷属性であり雷属性の攻撃力が2倍になる。
マグナムフォックスは鋭い牙を雷属性の攻撃としてミーコに反撃。
「!!」
短剣ヴェルファイアと牙がぶつかり合うが、雷光の牙でパワーアップした牙は大幅に攻撃力を増していた。
ミーコは体を牙で切り裂かられた。
「……うう」
それを見たアリエルは、
「ミーコ……逃げて!」
「……大丈夫だからアリエル……こんなところで負けてなるものですか」
ミーコは大怪我を負ってもまだ戦う気は消えていない。
再び攻撃体勢に戻す。
アリエルとリリスは、助けに行こうとしたところを冷が、
「待て君たち、ここはミーコに一任するんだ。あの子の力を信じるんだ」
(まだミーコだけでも戦える)
「……死んだら!」
「信じるしかない」
(俺の直感だけど)
冷がそれでも言うとアリエルは、
「……わかったわ、ミーコを信じる」
アリエルとリリスは助けたい気持ちを押さえてミーコが勝つのを信じることにした。
確かに冷の言うとおりではあるが、わかっていても助けられないのは我慢がいる。
武器を握りしめて我慢した。
思ったのは、相手の魔物マグナムフォックスが強敵であると。