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リリスは冷が来たと嬉しくなると、しかし相手は魔人であるからして来ない方が良かったのかとも思う。
それでも冷に、
「お前、来るのが遅いぞ! コイツはゴーレム。魔人ゴーレムだ!」
名前を告げると冷は聞いたことのない名前であるが魔人となれば敵と判断して、
「魔人ゴーレムだって!! それなら問題は早いぜゴーレムさん。リリスを離さないと俺と戦うことになる」
(魔人か。またもって感じです)
「ほほう、この俺と戦うと? 人族のクセに。ガーゴイルを倒したそうだな。それで魔人が怖くないようだが、このゴーレムがキサマの実力をはかってやろう!」
「きゃあ!」
「リリス!!!」
ゴーレムはリリスを突き放して、地面に飛ばされてしまう。
ゴーレムと冷の一騎打ちにリリスは邪魔することのないよう、距離を取った。
そこへ遅れてアリエルとミーコも到着。
「リリス!」
「アリエルとミーコか。どうしたそんなに汗かいて……」
リリスは2人が必死になって探したのをまだわかっていなかったのである。
「リリスを探してたのよ!」
「そうですよリリス!」
説明をされてやっと納得して、
「あはは、それは悪かった、謝る」
「それよりもこの状況を説明して……」
リリスはゴーレムと冷が対決寸前なのを知らないアリエルとミーコに説明した。
話を聞かされて顔色は瞬時に悪くなる。
「ご、ご、ご、ゴーレム!!!」
「冷氏! リリスを確保して今すぐに逃げましょう!」
2人とも驚がくしたのはゴーレムの名は知っていたからだった。
必死に冷に逃げるように叫んだ。
知らないのは冷だけであった。
まるで怖がる様子もなく、
「さぁいくぜゴーレムさん!」
ナギナタを構えてみせる。
「なんだそれは……弱そうな武器だ。そんなちゃちい武器で俺の体を壊せるかな」
ナギナタをみるや馬鹿にした。
「やってみないと、わからないだろ!」
ゴーレムの挑発ともとれる発言に、立ち向かう。
ナギナタを構えた時に声が聞こえた。
バアちゃんからであった。
((冷よ、ゴーレムはとても不気味な体をしているぞ))
(バアちゃんか、その声は。先ずは俺から斬ってみるからよ)
((油断するな!))
(魔人だから油断はしないよ。こういう時は、正面から勝負するのが大事)
冷は真っ向からナギナタをゴーレムに叩き込む攻撃に出た。
ゴーレムとの距離を縮めて行くと、ゴーレムはニヤリと笑う。
冷の攻撃を避ける気はない。
ナギナタはゴーレムの胴体にぶち当たった。
過去に対戦した魔物や魔人なら、この一撃は致命傷となり得る攻撃のはずであるが、ゴーレムは痛がる素振りはない。
むしろ余裕さえあった。
「フフフ、これが自慢のナギナタかよ。本当にガーゴイルを倒したのか、俺には痛くも痒くもないぜ」
「……なんて硬い胴体してやがるんだ……」
冷の先制攻撃は、まるで効いていなかったのを知り、次の攻撃を悩むことに。
(参ったな、全く効いてない。硬くて防御力が高すぎる。こんなに硬い体してる相手は、初めてだな)
これが魔人ゴーレムの最大の武器である硬い防御を持つ体。
全身を鋼鉄で覆われていて、普通の攻撃は無効となる程に防御力があり、ナギナタの攻撃を受けても無傷である。
忠告したのが当たってバアちゃんは、
((だから言ったろ冷。闇雲に叩いてもアイツには効かない))
(じゃあどうするかな。そしたらバアちゃんを使わず、拳と蹴りでやってみるぜ)
((効けばいいが……))
(効かなかったら困る)
((その場で反撃を喰らうかもだぞ))
(反撃を覚悟で攻めるよ)
冷はバアちゃんを使わずに接近戦に持ち込み拳での攻撃に切り替えた。
凄まじい数の拳がゴーレムに当たる。
ゴーレムはさすがにこの数の拳には驚いてしまう。
「ムムッ! なんという速くて強い拳なんだ! こんな拳は受けたことがない。だが俺には効かないっ!!!!」
「なにっ!!!」
冷の無敵でもあり、最も得意の拳は当たったのだが、ダメージを与えるまではいかなかった。
炸裂しているのにダメージは与えられないのはショックていえる。
((ゴーレムは防御力が高い。厄介な相手だ、逃げるのもありだが))
バアちゃんは、あえて冷を心配して言った。
無理はしてはいけない。
相手は人間ではない。
今までの過去の栄光など役に立たたないと思って。
(アホ言うなバアちゃん。俺が簡単に逃げるかよ)
((戦い方を変える必要があるな))
(わかってるよ。俺の拳を受けても平気な奴がいるとはな。これはかなり面白くなってきたぜ)
冷の拳も当たったにも関わらず、余裕のあるゴーレムに見ていたアリエルは言葉が出なくて、
「……恐ろしいはね、やはり魔人クラスとなると」
「その様です。冷氏が1番感じてるでしょう。ここは撤退もありますよ、だって死んだら何にもならない」
ミーコは冷が死ねば全員死ぬと思った。
「逃げるのもある。でも冷だからな……。とても逃げるとは思えないのよね」
「やはり」
ミーコは冷の性格を知り逃げる確率が低いのはわかっていた。
ゴーレムもショックを受けていた。
あんなに速い拳を受けたことがなかった。
とても見切れない程の速さである。
甘くみれば負けるなと思い知らせた。
ガーゴイルが負けたのも納得させられ攻撃にでることに。
「それで終わりか、今度はこちらの攻撃を受けてみな……。グランドシェイカー!!!」
ゴーレムは両手を地につけてスキルを発動させた。
地面に魔力を伝えて攻撃するスキルでゴーレムの得意の土属性のスキルであった。
「……何をする気だ……」
冷はグランドシェイカーがどんなスキルなのか判明できないままでいた。
そもそも土属性のスキルを受けることがあまりない。
そこへ地面がグラグラと大きく揺れ始めると、立ってられないくらいの激しい揺れに。
「地震みたい!」
アリエルは足もとが揺れて怖くて絶叫しだして、ミーコも耐えられなくなり、しゃがんでしまった。
冷もこのような技には初めて遭遇していて、驚くしかない。
(まるで地震を起こしたかのようだ。これでは立ってられない)
冷はあまりの揺れに手を地につけてしまう。
しかもこれで終わりではなかった。
「フフフ、見動きが取れないだろう。これで終わりだと思うなよ。ライトブラスト!!!」
揺れに続きもうひとつスキルを発動させて、今度のは雷属性の魔法スキルであり、ゴーレムの全身から雷が発せられて冷に向け飛ばされてきた。
「……う、これじゃ防御も上手く出来ないし、避けるのも無理だぜ……」
危険を感じた。
ライトブラストの閃光が音を立てて冷に迫る。
受ける冷はスキルで対抗を選択。
「水の壁!!」
水の壁を発動させて防御することに。
冷の手前に水流が現れて壁が生まれる。
「壁を作れるのか?」
ゴーレムは冷が壁を作るとは思っていなかった。
ライトブラストと壁は衝突した。
冷は衝撃で躰が飛びそうになるが、足に力を蓄えて踏ん張る。
いつもよりも地面が揺れているので、防御力は落ちていたのだが、水の壁はライトブラストに抵抗して弾け飛ばしたのだった。
「へへ、見たかゴーレムよ!」
「俺のライトブラストを弾くとは……。魔人を倒せるだけの力はあるのは認めよう」
グランドシェイカーとライトブラストのダブルスキル発動にも関わらず、受けきった冷の能力を認めざるを得ないゴーレムであった。
そこで終わらない。
受けきった冷はスキル攻撃に、
「スキルなら負けないぜゴーレムさんよ、これはどうかな烈火拳!!!」
揺れている地面の上を走り抜けてゴーレムに接近し、烈火拳を出した。
(先程は防がれた拳。今度はどうかな?)
ゴーレムは防御から素早くスキル攻撃に出てきて対応が遅れてしまい、
「なに……これは、烈火拳では!!!!」
意表をつかれた形となり、気を許したのもあった。
烈火拳は冷の拳の術と重なりあい、数倍にも速度が増していた。
目にも見えない程の速さと数がゴーレムを襲いかかると、火属性のスキルが鋼鉄の体を叩く。
「うううっ!」
先ほどの殴りあいとは違い、烈火拳はゴーレムの体にダメージを与えた。
冷も感触を感じた。
「さすがに烈火拳は効いてるようだな」
ダメージを受けて後ろに吹き飛んだゴーレムはグランドシェイカーを止めざるほかない。
まさか鋼鉄のゴーレムと呼ばれた体にダメージを与えられるとはと冷の攻撃力に驚く。
だがもっと驚いたのはそのスキルにあって、烈火拳は仲間であるサイクロプスのユニークスキルであった。
それなのに冷は自分のスキルとして使いこなしていたから。
「こ、こ、こ、これは、サイクロプスのユニークスキル。なぜお前が使えるのだ!」
「知ってましたか。魔人の仲間ならわかるのかな」
(知ってたのね)
「当たり前だ。俺とサイクロプスは長年の仲。なぜかは知らないがこれが強さの秘密だろう。それだけでも知れたから、今日のところは許してやるか……」
「まだ俺の強さはこんなもんじゃねえよ」
(ん……逃げるのかな)
「フフフ、面白くなりそうだ……リリスはまたの日に会おう。今度こそは仲間になってもらう……」
冷の烈火拳を浴びて体力を減らしたゴーレムは、ここは撤退を選んだ。
冷の秘密にも触れ知ることができたのもあって、収穫となる。
リリスは残念ではあるが、出直すことにした。
「もう来なくていいぞ!」
リリスはゴーレムに向かって言ったが、その顔から相当嫌っててるのが現れていた。
次に来るぞと言われてゾクッとしていた。
なんで私を狙うのかと。
私に何の価値があるのかと。
淫魔とは言ってるけど、正直言って魔人に利用されるのは嫌だった。