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追補2: 総文字数が一万六千文字の短編と連載、および前回の再考

 前回の追補1「総文字数が一万文字の短編と連載、どちらが良いか?」では、「一万文字の短編」と「全体で一万文字だが複数話に分割した連載」を比較してみました。

 しかし対象とした範囲は「10,000±1,000文字」だけで、他は違う可能性もあります。


 そこで今回は「16,000±1,000文字」を例に挙げます。

 なお一万六千文字を対象としたのは、統計的な理由はありません。とある方より感想で自作の事例を挙げていただいたので、ちょうど良いと対象にしたのみです。

 本来であれば「12,000±1,000文字」「14,000±1,000文字」と進めるべきかもしれませんが、上記の理由で今回は総文字数が一万六千文字および前後を対象範囲としました。


 また以下では、今回の調査で得た結果を元に前回の対象も合わせて再考しています。

 先に記しますと、75%タイルを表に加えました。これはサンプル数が少ない話数について、有効性を再検証するためです。




1.一万六千文字の場合について


・調査目的


 「一万六千文字の短編」と「全体で一万六千文字だが複数話に分割した連載」のどちらが支持を得られたかの可視化と、それによる前回調査(総文字数が一万文字の場合)の再検証。



・調査対象


 「16,000±1,000文字」を条件とし全ての「短編」と「完結済み連載」を収集。

 対象ジャンルは前回と同様に「恋愛」「ファンタジー」「文芸」「SF」の四つ。以下では前回と同様に「四大ジャンル」と仮称。



・調査結果


表9: 「四大ジャンル」の「16,000±1,000文字」のポイントの傾向

挿絵(By みてみん)


 表9の数字は「作品数」の項目以外、対象となる作品群のポイントの統計値です。見たままですが、値が大きいほど高ポイントです。

 形式は「75%タイル」以外、前回の表8と同じですので説明を割愛します。



・短編か連載か?


 前回の表8『「四大ジャンル」の「10,000±1,000文字」のポイントの傾向』と同様に、短編小説としてそのまま投稿した場合も一定の支持は得ています。

 ただし95%タイルから75%タイル、それに中央値(=50%タイル)では、短編より2話に分割した場合が有意に高い値を示しています。そして3話から4話に分割した場合、95%タイルと90%タイルは短編と同程度のようです。

 また短編の場合、75%タイルは連載の半数より低い値となっています。


 つまり一万六千文字および前後では、以下のA~Cが言えると思います。


A.全体の一割に入る上位作品では、短編より2話連載が高ポイント。3話連載も少し高い。

B.全体の上位1/4で考えると、連載が明らかに高ポイント。

C.ただし最高ポイントを得たのは短編。


 AとBからすると「一万六千文字なら連載にしておくべき」となりそうです。ただし、短編には連載全体の最高である14,311ポイントを上回る作品があります。


 表では読み取れませんが、短編最高の24,009ポイントの他にも2つ14,311ポイントを超えたものがありました。それに14,311ポイントも9話分割の場合であり、話数による一般的な傾向には当て嵌まっていません。

 そこまでの高ポイントではなくとも、2話分割の最高4,857ポイントを上回るものが、短編には10作品あります。

 したがって、飛びぬけた良作と自負するのであれば、短編のままでも良さそうです。


 とはいえ、そこまで達するのは短編全体の2%もありません。ですから「特別に高い支持を得られる」ほどでなければ、連載を選ぶのが無難そうです。



・連載なら、どのくらいに分割すべき?


 表9からすると2話から4話、更に加えても5話までが良さそうです(薄桃色の背景の箇所)。更に限定するなら2話か3話が挙げられます。


 一見すると8話から10話(薄紫の背景の箇所)、更に13話(水色の背景の箇所)も良さそうですが、これらにはそれぞれ問題があります。

 まず8話から10話ですが、90%タイルまでは良い値です。しかし75%タイルや中央値では随分と見劣りします。


 顕著なのは13話の場合です。

 ここは該当する作品が15作品のみで上位10%に入った作品は二つのみです。しかも一位が6,161ポイントで二位が2000ポイント強、三位は大きく下がり150ポイントを切ります。

 つまり一位と二位の影響が強く、統計的な意味を求めるのは困難です。


 これは他の範囲にも多少は言えます。8話から10話は約50作品で、90%タイルは5作品程度に相当します。この分量でも一定の意味はありますが、95%タイルとなると上位二作ですので更に議論が難しくなります。

 もっとも2話から7話も約60~100作品が母集団であり、結果を鵜呑みにできないところはあります。


 ただし、前回でも2話~4話の連載は良好な結果であり、それについては一定の裏付けが得られたと思います。



・75%タイルの意義は?


 集団の要素が十数個、あるいは五十を大きく下回る場合、95%タイルや90%タイルで論ずるのは難しそうです。また要素が五十個前後であっても、75%タイルなども合わせて考えるべきかもしれません。

 そこで次項では、一万文字の場合を再検証します。




2.一万文字の場合について(再検証)


表10: 「四大ジャンル」の「10,000±1,000文字」のポイントの傾向(75%タイルを追加)

挿絵(By みてみん)


 上記から読み取れるのは、前回「二つ目の山」とした7話から8話が「75%タイルでは前後の5~6話や9~10話と変わらない」ということです。

 7話から8話の90%タイルは、続く9話や10話に比べ三倍近く高い値ですから意味がありそうでした。しかし75%タイルまで来ると「話数に応じて妥当な曲線で下降しているだけ」とも言えそうです。


 7話分割は72作品、8話分割は50作品ですから、サンプルとして扱うこと自体は可能だと思います。しかしこれらの95%タイルの数値は、該当作品が非常な良作であった結果かもしれません。

 したがって、この範囲に関しては「7話か8話(1400文字~1250文字程度)で上位5%に狙って入れる」という特別な能力を備えた方以外には、あまり参考にならない数値だとも言えそうです。




3.上位20%相当のグラフ


 以下に、表9と表10の短編および連載の2話分割から10話分割について、上位二割のポイントの変化をグラフで示します。


図26: 「四大ジャンル」の「10,000±1,000文字」、短編および2話連載~4話連載

挿絵(By みてみん)

短編小説:1,891作品

2話連載:135作品

3話連載:170作品

4話連載:132作品


図27: 「四大ジャンル」の「10,000±1,000文字」、連載全体および5話連載~7話連載

挿絵(By みてみん)

連載全体:926作品

5話連載:110作品

6話連載:87作品

7話連載:72作品


図28: 「四大ジャンル」の「10,000±1,000文字」、連載全体および8話連載~10話連載

挿絵(By みてみん)

連載全体:926作品

8話連載:50作品

9話連載:43作品

10話連載:22作品


図29: 「四大ジャンル」の「16,000±1,000文字」、短編および2話連載~4話連載

挿絵(By みてみん)

短編小説:514作品

2話連載:61作品

3話連載:97作品

4話連載:102作品


図30: 「四大ジャンル」の「16,000±1,000文字」、連載全体および5話連載~7話連載

挿絵(By みてみん)

連載全体:783作品

5話連載:99作品

6話連載:66作品

7話連載:59作品


図31: 「四大ジャンル」の「16,000±1,000文字」、連載全体および8話連載~10話連載

挿絵(By みてみん)

連載全体:783作品

8話連載:49作品

9話連載:49作品

10話連載:49作品


 グラフの下には、データの精度を考える上での参考情報として、それぞれの線に該当する母集団の全作品数を記しました。グラフには、その母集団の上位二割が描かれています


 上記からは、比較的サンプル数が多いものであっても完全に自然な曲線ではない、と読み取れます。

 つまり「10,000±1,000文字」の2話~4話など作品数が多いものでも、上位5%や上位10%だと「何%タイルだから」と単純に判断するのは危険ということです。

 しかし極小区間だけでの判断は避けるべきですが、全体としての傾向は充分に理解できます。


 もっとも更にサンプル数が少なくなると、かなり状況が変わります。

 たとえば図28の「10,000±1,000文字」の「8話連載」ですが、一見すると特別に上位の伸びが良いように感じます。しかし、これは一位と二位の作品が突出しているだけです。

 「10,000±1,000文字」の「8話連載」は50作品ですので、上位5%以上は一位と二位の作品のみです。つまり、この集団の95%タイルの扱いは要注意、となります。また図表では読み取れませんが、同集団の総ポイントの95%を上位二作が占めています。


 同じように「10,000±1,000文字」の7話連載や、「16,000±1,000文字」の6話連載、9話連載も注意が必要です。


 下記に参考として「16,000±1,000文字」の13話連載を添付しますが、先に触れたように上位10%以上は一位と二位の作品だけで、90%タイルですら微妙なものとなります。

 該当範囲に15作品しかないからで、同じく20作品以下の範囲を含め気をつけるべきでしょう。



図32: 「四大ジャンル」の「16,000±1,000文字」、連載全体および13話連載(参考)

挿絵(By みてみん)

連載全体:783作品

13話連載:15作品




4.まとめ


 一万文字前後と一万六千文字前後の二つを調べることで、以下が理解できました。


A.一万文字であれば短編でも良いが、2話~3話の連載でも良い。

B.一万六千文字の場合、短編よりも2~4話程度に分割した方が良い。

C.一万六千文字の短編は上位25%程度になると連載よりもポイントが低い。

D.一万文字と一万六千文字の双方で、一話が1500文字以下の作品は上位5%以内のポイントが良い。

E.ただしDに関しては該当作品数が少ないため、判断は注意を要する。

F.連載で1話のみは例が少なく、ポイントも極めて低い。

G.Fを除けば一万文字と一万六千文字の双方で、同一%タイルなら話数が増えるとポイントが減ずる傾向。


 調査した範囲は一万文字前後と一万六千文字前後の二つだけですが、データの傾向には充分な類似がありました。そのため一万文字から一万数千文字、あるいは二万文字程度までなら同傾向と考えて良さそうです。

 そして作品の方向性やジャンルの特性を考えず全体として見た場合、「一万文字程度であれば短編か2~3話の連載、更に何割か長いなら2~4話の連載」が無難だと言えそうです。



 次項では、構成(話の分け方)の視点で掘り下げます。


2017年2月11日追記:

 次話追加に伴い、末尾を「後日調査の予定あり」から「次項紹介」に変更。


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